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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/02/18:56

Overture-信号機

土曜日
俺とトキとイナは、美術館に足を運んだ
今、俺の好きな画家の絵が展示されてるんだ
2人を誘うと、喜んで『行く』と言ってくれた
美術館に似つかわしくない、端から見れば“不良”な相貌の3人組が連れだって館内を闊歩するその姿に、周りのお客さんは引いてたっぽい
てか、確実に引いてた
美術館で週末を過ごすなんて、ただの頭イカれたバカ高校生だと思われてるんだろうな
事実バカっぽい見た目だから仕方ないか‥‥俺は別にフツーだと思うけど、テラテラしたライダースジャケット羽織ってるピアス男子と腰から工具ぶら下げてる茶色い頭のヤサ男なんて、ほんと場違いもいいとこだ
明らか教養なさそうでしょ?そんなの俺らが一番自覚してます、はい
この中の誰が美術なんかに興味があるだろうかって?それは俺です、イエーイ
こんなんでも、芸術に親しみ持ってんだぜっ
 
 
 
「あー、これ良いなぁ」
 
「わ、すげ」
 
トキとイナは、ばかでかいカンバスを見上げて頻りに感心した
絵のタイトルは、“Little Wing”
小さな天使が沢山飛んでる中、片方だけ翼がない天使が一人地上に取り残されてる絵だった
切なくて、痛々しくて、見る人によっては涙を流すと言われているものだ───って、パンフレットに書いてあった
今回の展示の目玉作品ではないんだけど、人目を引くものではあった
 
トキとイナも、美的センスはある方だと思う
トキは写真を撮ってるから元々そういう感覚はあるんだろう
でもイナは、何でかよくわかんない
友達になってもう4年経つけど、ほんとよくわかんない
 
 
 
『間も無く、閉館の御時間で御座います。御帰りの際は、御忘れものの無いよう御注意願います』
 
館内アナウンスが聴こえる
時計を見たら、16:50だった
 
「‥‥もうそんな時間か」
 
「何だっけ‥“何とか”くん、来れなかったのかな」
 
「ん‥‥」
 
そう、露木くん───アオをずっと待ってたけど、彼は一向に現れなかった
やっぱ、間に合わなかったのかな‥‥
 
「俺、ギリギリまで待ってるわ」
 
ちょっと肩を落としてしまったけど、アオを待つ序でに最後にもう一周だけしてこようと思った
トキとイナは外で待つと言ったから、俺一人で再び館内へと歩みを進めた
 
 
 
“Little Wing”の前に、パンフレットを持って佇んでる人がいた
ベロアっぽい黒のジャケットを着てダメージ加工されてるジーンズ穿いてて、靴は履きこなされたスニーカーだった
背はすらりとしてて服はきちんと着こなしてるんだけど、最早セットしてんのかしてないのかもわかんない髪がボッサボサ
とにかく、前髪がひたすらうざそう
 
 
 
あの人、見たことあるような気がする───てか、あれアオだ
 
気付けば俺は、一目散にアオに駆け寄ってた
 
 
 
「‥、この絵、すごく良い。全部見て回ったわけじゃないけど、これめっちゃ気に入った」
 
息急ききってる俺に気付いたアオは、穏やかに笑った
なんか知んないけど、ほっとした
 
「‥‥来れたんだ‥」
 
「殆ど滑り込みだったけど。もう帰っちゃったかと思ってた」
 
「ううん。待ってた」
 
「そっか。‥‥ありがとね」
 
アオは、また笑った
 
 
 
何だろう、不思議な気持ちがする
目は、前髪に隠れてて見えないんだけど
雰囲気、かな
何とも言えないんだけど、柔らかくて、ふわふわしてる感じ
アオは、笑うとめっちゃ雰囲気が変わる
 
 
 
トキとイナが出口で待ってた
2人を見て、アオは俺に尋ねてきた
 
「‥お友達?」
 
「うん。トキと、イナ。中学からの付き合いなんだ」
 
俺たちに気付いた2人は、アオに気さくに話し掛けた
 
「3組の、露木くん‥だっけ。5組の印南 京平でーす」
 
イナは、アオのこと知ってるっぽかった
何で?クラス違うのに?
てかイナは、アオに限らず、俺らの知らない何組の誰それの話をよくする
ほんと、イナはよくわかんない奴
どこで情報収集してんだろ、てか誰得情報なんだろ
 
「俺、7組の常磐 響。宜しくー」
 
「“トキ”と、“イナ”」
 
「ん!」
 
アオは2人を交互に見て、名前と渾名と顔をインプットしてるっぽかった
渾名を確認された2人はニコニコ笑って返事をした
アオも、笑って自己紹介した
 
「‥‥露木 蒼衣です。初めまして」
 
わー、アオってば紳士
こんなバカっぽい、事実バカ丸出しな同級生に対しても丁寧に挨拶してくれてるし
 
「露木くんのことは、なんて呼んだら良い?」
 
「親しい人は、“アオ”って呼ぶけど」
 
「じゃあ、俺らも“アオ”って呼んで良い?」
 
「うん」
 
元コミュ障ぼっちの俺と違って対人スキル及びバイタリティーが抜群のトキとイナは、いとも簡単にアオを渾名呼びする
 
「俺らこれから飯食いに行くけど、アオも行ける?」
 
「寧ろ、お邪魔しちゃって大丈夫?」
 
「アカから話聞いてたし、最初からそのつもりだったよん」
 
「じゃあ、ご一緒します」
 
初対面の同級生との初ゴハンに、一切物怖じしないアオ
俺なら絶対何回か遊んでからにする、と思う
トキとイナはもう慣れちゃったから何とも思わないけど、やっぱ最初はどこか一線引いちゃうんだよな俺は
 
とか言いつつ、アオをゴハンに誘ったの俺だった
 
何でかな、初めてなのに、アオとゴハン食べるのは抵抗ないような気がしたんだ
だから誘えたんだよ、多分
これって、トキとイナの影響?
それとも、アオのお陰?
アオも、人当たり良い方なのかな
どっちかってと、俺と同じ匂いがするんだけどな‥‥や、もしそうじゃなかったらめっちゃ失礼だよな
このことは黙ってよう、うん
 
 
 
何を食うか特に相談もしてなかった俺らは、トキとイナが並んだその少し後ろをアオと俺がついてく感じで繁華街方面に向かってだらだら歩き始めた
 
「おお。俺、今すごいこと発見しちゃった」
 
トキが、何か閃いたようだ
 
「え、何よ突然」
 
「2人って、信号機じゃん!」
 
そう言って、くるっと振り返ってアオと俺を見遣る
 
「───は???」
 
アオも俺も、イナも、トキが何言ってんのかさっぱりわかんなかった
 
「だって、“アカ”と“アオ”でしょ。赤と青といえば、信号機の色っしょ!」
 
正確には、“朱”と“蒼”なんだけどね
どっちも、信号機の色にするにはちょっと変だ
でも、トキは腕を組んでドヤ顔してた
 
「ああ、なるほどねー」
 
イナは、こくこく頷いた
 
「世紀の大発見。すごくね?」
 
「そこまですごい発見ではないと思うけど。大袈裟すぎだよ」
 
「えーーー?何だよ、もう。腹減ったからヤケ食いしてやるっ!」
 
「いつものことでしょ」
 
「うっせい!早く行くぞ!」
 
トキとイナの話を聞いて、アオはくすくす笑ってた
俺の横を歩くアオは、心なしか楽しそうだった
 
「アオは、何食いたい?」
 
「何でも良いよ。俺も腹減ってるから」
 
「バイト帰りなんだっけ?一仕事した後なら、腹減ってて当然だよなー」
 
「体力付きそうなもんにすっか」
 
「焼肉、とか?」
 
「そんな金ねぇ」
 
「じゃあ、何にする?」
 
「‥‥‥‥‥‥牛丼?」
 
「つゆだくで!」
 
「ギョク乗っけてな!」
 
「特盛り!味噌汁付き!」
 
「ああ良いな!でも豚汁も捨てがたい!」
 
「紅生姜のっさりー!」
 
「俺、紅生姜嫌い」
 
ここはテンション上げるとこだったのに、トキは『紅生姜嫌い』のたった一言で一瞬にしてその空気をブチ壊した

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