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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/02/12:42

Overture-ちゅーがくせいにっき②

2人と話すようになって、つるむようになって、まともに友達がいなかった俺は毎日新鮮に生きてた
トキとイナはいっつも俺のらくがきノートを見て、頻りに感心してた
 
「アカさー、こんな絵上手いんだから、美術部入れば?」
 
「部活は高校入ってからにしようかなって」
 
「何で?」
 
「今は、拘束されるより自由に描きたいな‥って」
 
「なるほど。そのスタイルの方がアカに合ってるかもね」
 
「自由にのびのびーって感じ?部活だと強制感あるもんなぁ」
 
「‥‥2人は部活、やらないの?」
 
「高校行って写真部あるなら入部するかもー」
 
「トキ、写真好きなんだ?」
 
「うん」
 
「アカがスケッチしてる間に、結構撮ってるよ」
 
「え、そうなの?知らなかった。見せてよ」
 
「んんー?ケータイのカメラだし、大したもんねぇよ」
 
そう言って、トキはケータイを見せてきた
海とか川とか森とか、風景の画像が沢山
トキは謙遜してたけど、結構良く撮れてた
 
「‥‥これ、好き」
 
中でも俺が気に入ったのは、夕日に佇むブランコの写真
哀愁を帯びたブランコっていう題材も良いけど、光の加減が何とも言えず良かった
 
「お、マジ?俺もそれ気に入ってんだよね」
 
トキはにこっと笑った
 
「イナは、なんか部活とか考えてんの?」
 
「俺は帰宅部で良い」
 
そう言って、イナは漫画を読み始めた
 
放課後よくスケッチしにいく場所があるんだけど、2人はよくついてきて、俺がスケッチ終わるのをケータイゲームしたり漫画読んだりしてずっと待ってた
出来上がったら感想をくれて、褒めてくれて
帰りが遅くなったら、ラーメン屋とかマックとか行って‥‥なんか、楽しかった
 
3人で居ると、何でか落ち着いた
急かしたり茶化したりしないで、絵が仕上がるのを待っててくれる2人の空気が居心地良かった
 
 
 
ぼっちじゃなくなったのは良いんだけど、トキとイナはやっぱり“やんちゃ”だった
 
それがわかったのは、2人とつるむようになって2ヶ月後くらいのことだった
 
 
 
 
 
いつも行く河川敷で、のんびりスケッチしてた放課後
俺達は、カツアゲされそうになった
 
「ねーねー。そこの中坊クンたち。お金持ってる?オニーサンら喉乾いて死にそーなんだけど、今金無くてさー。ちょっくら恵んでくんない?」
 
確か、何とか高校ってとこの制服着て、ニヤニヤしてるガラ悪い高校生が4人
あっという間に囲まれて、俺はひたすらビビった
 
「えと、あの‥‥」
 
「なーにー?オニーサン達ビンボーなの?カーイソー。‥‥でも、生憎俺らも金持ってないから恵んでやれないんですわ。すんませんね」
 
ビビる俺を他所に、トキはオニーサン達を無視してケータイをポチポチし始めた
イナも、漫画から目を離そうとしない
何なのこの2人、俺ら今カツアゲさてれんだよ?しかも高校生に
何でこんな平然としてられるの?
 
「お前ら、葵中だろ?あんまナメてっとこの辺歩けないようにしちゃうよ?」
 
因みに、うちらの制服、ブレザー
しかも、胸ポケに校章付き
せめて学ランだったら学校までバレないで済んだかもしんないのに
この制服デザインしたやつ、爆発しろ
いやそれより、今すぐのび太くんちの机ん中入ってタイムマシン乗ってデザインする前に戻って考え直してくれ
『凝ったブレザーじゃなくて、ありふれた学ランにしよう』って───
 
「おい、聞いてんのか?このガキ」
 
高校生が一人、苛ついてトキのケータイを取り上げた
トキはゆっくり高校生を見上げた
 
「これ、新刊じゃん。これ買えるくらいなら金持ってんだろ?」
 
イナも漫画を取り上げられた
高校生が鋭い着眼点で指摘する
その能力、カツアゲじゃなくてもっと別な方向に生かしとけよ
 
「で、そこのボクちゃんは何描いてんの?」
 
当然、俺もノートを取り上げられた
あー、まだ描きかけなのに
 
「何だよこいつ、川の絵なんか描いて何が楽しいのかね?」
 
はい、此処は河川敷です
川と橋以外は特に描くものがございません
貴方方には理解出来ないかもしれませんがとっっっても楽しいです、はい
 
「つーか、根暗」
 
「オタク?完全陰キャでしょ」
 
「おい、裸婦画ねぇのかよ?」
 
「無いなー、全部風景ばっか」
 
「何だよ、くそつまんねー」
 
ノートをぱらぱら捲ってはケラケラ笑う高校生達
裸婦画があったら楽しいのですか、そうですか
中坊のらくがきノート見るよりコンビニのエロ本読んでる方がよっぽど有意義な時間過ごせると思いますね
 
「あー、面白くねぇなぁ」
 
裸婦画がなかった腹いせかなんか知らないけど、高校生は俺のノートをビリビリと破き出した
 
「あ、ごめんねぇ?手が滑っちゃった」
 
何てへぺろしてんだ、ふざけんな
誰がどう見ても確信犯だろうが
あと5ページくらいで全部埋まったのに、何てことしてくれんだよ
裸婦なら今度描いてやるから、やめてくれよ
や、でもモデルが何処にも居ない
トキとイナ、裸婦画のモデルになってくれるかな‥‥あ、裸婦だから女じゃないと駄目だ
 
「あーすっきりした。なんか白けちまった」
 
「お前、そんなことでストレス発散すんなよ。ボクちゃん泣きそうになってるぞ」
 
うるせぇな、泣きたくもなるさ
あんたらにはわかんないかもしんないけど、一生懸命描いたんだぞ
たかが一冊の大学ノートを全部埋めるのに、こっちは人生懸けてんだよ‥‥ああ、今のは言い過ぎだったかも
とにかく、何時間、何日掛けたかわかんない
折角あと5ページで全部埋まったのに
 
 
 
「───返せ。そのノートも、俺のケータイも漫画も」
 
涙目になってる俺の横で、トキが立ち上がった
済ました顔してるけど、声は怒ってるっぽかった
 
「は?何?今なんか言った?」
 
高校生達はおちょくるように、またノートを破いた
俺が描いた絵がバラバラに千切れて地面に落ちてった
 
「‥拾えよ」
 
「はぁ?」
 
「全部拾って、テープ貼って元に戻せ」
 
何言ってんの、トキ
そんなこと言ったら、オニーサンたちに───
 
トキは、殴られた
 
ほら、言わんこっちゃない‥‥って、一言も口には出してないけどさ
 
「トキ、大丈夫‥!?」
 
よろけたトキを、咄嗟に支えた
トキの口の端が、血で滲んでた
 
「バカじゃねーの。お前がやれば。ほら、拾えよ」
 
また、ノートの切れ端が地面にひらひら落ちた
トキは俺の腕をそっとどかして、にこっと笑った
口を拭って、イナに目配せする
 
「───アカはどいてな。止めんなよ、イナ」
 
その言葉を皮切りに、喧嘩が始まった
 
トキとイナは、俺を守るようにして高校生4人にかかっていった
河川敷で4対2の乱闘騒ぎ、何処の青春ムービーですか
 
「聞こえなかったのかよ!?『ノート拾って元に戻せ』ってんだよっっ!!!」
 
トキはノートをビリビリ破いてた高校生を殴る殴る
イナは、それを止めようと群がる残りの高校生達を蹴散らした
 
「折角アカが一所懸命描いたのに、さっ!!」
 
ドカッ とか、バキッ とか、人が人を殴るリアルな音が聴こえた
っていうか、ノートなんてもう良いよ
あんだけビリビリなんだからもう使い物にならないし
そんなこと思っても、喧嘩が止む筈なかった
トキのケータイも、イナの漫画も、もみくちゃに踏まれてた
 
「ね、ノートなんてどうでも良いから‥‥」
 
「アカに謝れ!!」
 
「何が『喉乾いて死にそう』だよ。死ぬ前にノート一冊買ってこいよ」
 
俺の声は、2人には届いてなかった
前言撤回するよ、ほんとノートなんてもうどうでも良いから
また買って、また描けば良いんだから
でも、もう手遅れみたいだ───
 
 
 
全てが終わった頃、河川敷に立っていたのは俺達3人だけだった
2人とも、倍の人数いた高校生をすっかり伸してしまった
てか、中学生に負けるなんてめちゃめちゃ弱いじゃんこのオニーサン達
 
「‥‥あー、ごめん。アカ、ノート」
 
トキは溜め息を吐いて俺に頭を下げてきた
まぁ、当然のことながら俺のノートも踏まれて更に無惨な姿になってたんだよね
でも
 
「‥‥もう、良いよ。‥‥‥‥有難う」
 
2人が俺の為に、俺のノートなんかの為に喧嘩してくれた
それだけで、目頭が熱くなった
 
2人は何も言わずに、ノートを切れ端を拾い始めた
破れて小さくなった端っこまで、丁寧に拾った
全部拾い終えたら、辛うじて原型を留めてる部分に切れ端を全部挟み込んで、トキの鞄に仕舞われた
 
「‥‥コンビニ、行こうか」
 
イナは軽く制服を払って、漸くトキのケータイと自分の漫画を救出した
 
「おう。ノートとジュース買いに行こうぜ」
 
2人はにこっと笑って、俺に肩組みしてきた
 
 
 
トキとイナは、コンビニで一リットルの紙パックに入ったコーラスウォーターと大学ノート一冊を割り勘で買った
店員さんからストローを一本だけ貰ってコンビニの前に座り込んで、3人でジュースを回し飲みした
 
「‥2人とも、怪我大丈夫‥‥?」
 
伸したは伸したんだけど、高校生から何発か浴びてたから、2人の顔には幾つか傷があった
 
「おう。全然平気」
 
「俺もー」
 
2人とも、ケロっとしてる
余裕綽々だ
 
「喧嘩、強かったんだね。知らなかった」
 
「ん?そうなのか?喧嘩なんて初めてやったよ、な」
 
「そうそう。今回が初めて」
 
「え?」
 
「え??」
 
マジかよ、デビュー戦?
全然そんな風に見えなかったけど
 
「俺ら、喧嘩強かったんだな」
 
「ふふ、いがーい」
 
2人はハイタッチして、なんか知らんけど喜んでた
そして、照れ臭そうにして真っさらな大学ノートを俺にくれた
 
「金、要らねぇから。当たり前だけど」
 
「また一杯描いて、俺らに見せてね」
 
2人とも、怪我してるのにイイ顔してた
さぁ、何を描こうか‥‥2人があっと驚くようなものを、喜んでくれそうな力作を、沢山描こうと思った
 
この日を境に、トキとイナは不定期に喧嘩をするようになった
それに俺も加わることになるなんて、この時は想像もしてなかったけど───でも、それはまた、別の話

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