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Overture-ちゅーがくせいにっき①
小さい頃から、絵を描くのが好きだった
買い物に行きゃ母親にペンとらくがき帳を強請って、何かってーと描きまくってた
らくがき帳が尽きればチラシの裏に
チラシが埋まれば壁や床に
母親にはこっぴどく叱られたけどね、当たり前だけど
中学校に入って、“マブダチ”が2人出来た
トキとイナ───2人は小学校から一緒で、バカコンビで有名だったらしい
中2で同じクラスになって、休み時間に席から立たず黙々とノートにらくがきをしてた俺に2人が声を掛けてきたのが始まりだった
「ねーねー。何描いてんの?」
無遠慮に覗き込んでくるトキ
「わ、めっちゃ上手い!これ、自分の手?」
その後ろから、イナが驚嘆する
トキは黒髪でツンツン、イナはフツーの髪型だけどめっちゃ茶色に染めてた
2人の第一印象は、“チャラい”感じ
後から知ったんだけど、中学に入ってちょっと“やんちゃ”になったみたい
小学校から持ち上がった友達が少なくて、2人のことは全然知らなかった
ってか、小学校から基本ぼっちだったから友達自体少ないんだけど
自虐です、事実です、俺はぼっちのコミュ障です
ただ、2人が“やんちゃ”だってのは噂で聞いてて、わざわざ自分から近付こうとなんて無謀なことは頼まれても絶対お断り案件な人種ってことだけは間違いないと思ってた
平々凡々に生きてきた俺はたじろぐしかなくて、ひたすら目を泳がせた
「‥‥あ‥」
「てかさ、いっつもなんか描いてるよね。このノート、全部そんな感じなの?良かったら、見して」
トキはにこっと笑って手を差し出してきた
あとから因縁つけられたりしたら確実にHPもMPも無くなりそうで嫌だなと思って、大人しくノートを手渡した
「‥ぅお!!すげぇ!!何これ!」
「わー、細かく書き込んでるなぁ」
トキもイナも、めっちゃノートに釘付けになった
ノートに描いてたのは、鉛筆とか文房具とか、身近にあるもののデッサンばっか
やんちゃな2人が、そんなもんを興味深そうに見てる
なんか、変な感じがした
「どーもありがと。目の保養になった」
「あ‥うん‥‥」
不良(?)がぼっちにノートを返してきた
やっぱり俺は、眼が泳いでた
完全に縮こまった俺を見て、トキは噴き出した
「そんなにビビるなよー。俺ら見た目こんなだけど、全然怖くないよ?」
「そーそー。オシャレしてるだけ。ね?」
「なー。‥‥タカムラだっけ?俺、常磐 響。“トキ”で良いよ」
びっくりした
俺の名前、知ってた
トキが自己紹介すると、イナもそれに倣う
「俺は、印南 京平」
「いん、なみ‥‥?」
「うん。あんま居ないでしょ。ちょっとレア苗字」
うん、インナミなんて聞いたことない
そういう苗字もあるんだなって、ちょっと感心してしまった
おっとりした笑顔で、イナは続けて言った
「“イナ”って呼んでね。宜しく」
「う、うん‥‥」
「もぉ、まだビビってんの!?別に俺ら、カツアゲしたりする気とかないから!ただ、高村が何描いてんのかずーっと気になってたの。ほんと、そんだけだから」
トキが軽く肩を叩いてきた
それだけでも、ちょっとビビった
この2人は“かなりやんちゃ”だって聞いてたのにな、何なんだこの爽やか笑顔
しかも、ぼっちの俺に興味持つなんて
なんか、噂と全然違うぞ
「高村くんさ、下の名前なんて読むの?確か、朱色の“朱”に、中央の“央”だよね」
「あ‥‥、“アケオ”」
「そうか、訓読みだったんだ。ずっと“シュオウ”だと思ってた」
「ふは、もし“シュオウ”だったら『なまらかっけー!』って話してたんだよね」
「“タカムラ シュオウ”。習字とか生け花とかの偉い師範みたいだよね。めっちゃ厳か」
俺の名前でそんなに盛り上がってたのか、全然知らなかった
や、知る由もなかったんだけど
てか、俺のフルネーム知ってたんだ
そっちの方が意外だった
だって、こういうやんちゃな人達とは住む世界が違うと思ってたから
俺に興味を抱くなんて青天の霹靂だから、マジで
「‥‥、“シュオウ”じゃなくて、ごめん‥」
気付けば、そんな言葉が口を衝いてた
「───ぶっははは!!何それ!!」
「高村くんて面白いね。くひひ‥」
2人は大爆笑だった
素で出た言葉だったけど、受けたらしい
その日から、トキとイナと俺は3人でつるむようになった
俺が2人から苗字で呼ばれたのはこの日だけで、あとはずっと“アカ”って呼ばれるようになった
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