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164 träningsläger-söt night
深夜2:00過ぎ、寝室にて
ベッドのヘッドボードに凭れ、ケータイをポチポチするユイ
その横に、菱和が頬杖をついて寝そべっている
───落ち着かねぇ足だな
ご機嫌な様子で指をわきわきさせているユイの足を、菱和はぼーっと眺めていた
スウェットから、踝と細い足首、脹ら脛が3分の1ほど覗いている
視点を上へとずらしていくと、少し隆起した鎖骨、そしてふわふわの髪が流れる項が目に入る
衣服を纏っていない方が唆られるのだろうか
何度か共にした入浴時にはさほど気にも留めていなかった血色の良い肌が、ある“欲”を掻き立てる
「───やっぱお前美味そう」
「うん?」
ケータイ弄りに夢中になっていたユイは菱和の言葉を上手く聞き取れず、きょとん顔で視線を落とした
菱和は腕の力で身体を引き摺らせてユイに近付き、その腰をホールドした
「‥‥‥ちょっとだけ、噛んでもい?」
そう云いながら、気だるげにユイを見上げる
“食いたい”
夕べの一言が、脳内に反響する
ずくん、と疼く心臓
物欲しそうな眼
油断していると、また吸い込まれてしまうかもしれない
「───‥、や、だ」
「‥‥ん」
ユイが顔を真っ赤にし小さく拒絶すると、菱和は大人しく引き下がり、ユイの太股にこてん、と頭を落とした
そのまま瞳を閉じ、ほんのりと口角を上げる
夕べの一幕が蘇る
鼓動は加速し、治まらない
沈黙が耐えられなくなってきたユイは、ぽつりと菱和に尋ねた
「‥‥酔って、る?」
「んーん。“サンセット”以外飲んでねぇし」
「じゃ、何で‥‥」
「‥云ったろ。“美味そう”なんだって」
低い声でそう呟いた菱和の手はわざと鎖骨に指を這わせ、首をなぞり、ユイの頬へ辿り着いた
「食っちまいたいくらいめんこいの、お前」
もう片方の手は細い腰をホールドしたまま
力が込められ、掌の温みが伝わる
「‥‥‥‥アズって、食人鬼だった、の」
「‥‥人間デス」
目を泳がすユイは思い付いたことをそのまま口に出し、その言葉に菱和は少し苦笑いした
我慢させているかもしれない
我慢なんて、しなくても良いのに
だけど、俺がキョドるから仕方なく、遠慮してるのかもしれない
昨日の今日でまた頭がゴチャゴチャしてきた
“食べたいくらい可愛い”って、どういうこと?
俺にはまだよくわかんない
わかんないけど、アズが俺に何かしたいと思ってくれてるのはわかる
それはめちゃくちゃ嬉しいし、受け入れたいと思う自分もいる
“互いに同じ気持ちになった時”と、約束を交わした
ひょっとしたら、“今”が───
「───‥どこ食べたい、の」
変わらず赤面し、目は泳いだまま
それでも要求を受け入れる覚悟が出来たのか、ユイはケータイを置いて尋ねる
菱和はゆっくりとユイを見上げ、こくんと首を傾げた
「‥全部」
「っそれは駄目!どっか一箇所だけ!!」
ユイが喚くと菱和はく、と笑い、のそりと起き上がった
「‥‥駄目なトコある?」
「‥‥‥、こことか、‥‥ここ以外、なら」
「んなとこ噛まねぇよ、“まだ”」
くすくす笑うと、菱和は目を瞬くユイの項をつ、と見下ろした後、襟刳りを少しずらし、覗いた肩に軽く噛みついた
本当は豪快にかぶり付いてやりたい───そんな衝動を抑え、許可を与えられた“一箇所”を至極優しく愛撫した
滑らかな肌に、歯の当たる感覚
ぬるりと這う舌と、暖かい唇の感触
きゅ、と吸い付く音
ユイは咄嗟に、去年の学祭でキスマークを付けられた時のことを思い出した
あの時は、負傷していたこともあり、ちくりと痛みが走った
今も、痛みがある
だが、今感じている痛みは心地良い気がしてならない
あの時と今、菱和がしている行為に大きな違いはない
一体、あの時と何が違うというのだろう
「───っ‥、‥‥‥っ‥‥」
ユイは目を瞑り、菱和の肩にぎゅ、としがみついた
その行為すら、菱和を煽っているということも知らずに───
痛くないようにはしてる筈だけど
苦しいのか、切ないのか、恥ずかしいのか
それとも、“イイ”のか
何れにしても、必死なんだ
ああ、この辺で止めておかなければ
歯止めが利かなくなるかもしれない
これ以上のことをするつもりはない
でも、
応えてくれたいじらしさが堪らなく愛おしい
もっと慈しみたい
深く味わいたい
心も身体も、思い切り愛したい
もっと、もっと──────
歯止めが利かなくなることを危惧した菱和は、自分が付けた“跡”がくっきりと残る肩を一瞥し、衝動が去るのを静かに待ち堪えた
「───‥‥“唯くん”」
低く嗄れた声が呼ぶ
そろりと目を開けると、菱和の情欲塗れの瞳がこちらを見ている
ユイの心臓が、また跳ね上がった
「‥‥‥‥何ですか、“梓くん”」
ユイが困り顔でぽつりと呟くと、菱和の瞳から情欲の色が消え、和んだ心が自然と笑いを促す
一頻り笑うと、戸惑うユイに額を合わせた
「‥ユイ」
「な、に」
「‥‥やっぱ、“こっち”の方が良いな。本名で呼びたい気持ちも、あんだけど」
「別に‥‥‥名前なんて、好きに、呼んで、‥‥ください」
「何で敬語になるんだよ」
「わかんな、い」
「ふふ。‥‥‥っつーか、何でいきなり許可降りたの?“おんなじ気持ちになったら”って約束したじゃん」
「今が、その“時”かもしれないって、思ったか、ら」
「‥‥おんなじ気持ち、だったかも?」
「たぶ、ん」
「そっか。‥嬉しい」
“それ以上のこと”も、出来たかもしれない
しかし、菱和はそれ以降はいつものように抱き寄せたり髪を梳いたりする以外はユイに何もしなかった
互いに心が高まったことを喜ばしく思い、ユイへの慈愛を益々募らせた
ユイもまた、“おんなじ気持ち”になれたことを気恥ずかしくも嬉しく思い、甘い愛撫の感触を反芻しながら眠りに就いた
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