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163 träningsläger-Slutligen ikväll
地下では、ユイを除く3人が楽器を鳴らしていた
地上にいるユイにも熱と震動がドカドカ伝わるほど、激しい楽曲を演奏しているよう
耳を欹てると、演奏し慣れたバンドのレパートリーの一つが聴こえてくる
各メロによってビートが変わるその楽曲は、アタルが幾つかの曲を一つに纏めたハードロック色の濃いナンバー
ドラムは終始乱れ撃ち
ギターとベースのユニゾンが何度も入り混ざり、ソロではドリルのように突き抜ける16分刻みのベースとトレモロピッキングが疾走していく
かと思えば哀愁漂うセクションもあり、緩急のバランス配分が絶妙かつ大胆にハマっている
最後の夜に“総攻撃”をぶちかます、お気に入りのバンドのレパートリーナンバー
ユイの口内に、キツめの炭酸水のような味がぶわ、と広がった
「───ね!カップ麺食べよ!!」
熱気で溢れる地下室に、ユイの陽気な声が響いた
「あー‥‥‥そういやまだ、食べてなかった、もんね‥‥」
「はー‥‥ああ、食いに、行くか。折角、買ったしな」
3人は、息も絶え絶え
膝をついたり天井を仰いだり、額からは汗が滴る
言葉を繋ぐのも精一杯で、昂りが治まるのを暫し待った
逆に、3人の熱の余韻を浴びたユイの鼓動は加速していった
作詞は無事に終えたが、“この場”に居られなかったことを心底口惜しく思った
カップラーメン用の湯が沸くまで、四人は拓真の提案で記念写真を一枚撮ることにした
リビングのソファにユイが座し、後ろに菱和とアタルが並ぶ
「この辺が良いかな」
「あっちゃん、ちょい背縮めて。上手く入らない」
「んなもん無理に決まってんだろ!屈めば入るか?」
「あー、良いね。じゃ、撮るよー」
拓真はデジカメをカウンターにセットすると、急いでユイの横に座った
シャッター音が鳴ると、わくわくしながら出来を確認する
ユイは顔の横でピース
拓真は親指を立ててグーサイン
菱和は特にポーズはとらずベロを出しているのみ
アタルは菱和の肩に腕を回してメロイックサイン
菱和がバンドに加入してから初めて撮影された集合写真
ユイは暫しデジカメに写る写真を眺め、慶びの笑みを浮かべていた
時刻は深夜1:00を回った
普段は使わない頭を酷使したユイと、楽器を弾き倒した後の3人はすっかり小腹が空いていた
ガッツリいきたいわけではないが、何か腹に入れたい気分───深夜のカップラーメンは手軽でいて、どこか背徳的な魅力が満載だ
買い出しの際に拓真と菱和が購入したラインナップはオーソドックスな味が二つと激辛、そして“シークレット”
パッケージの時点で誰もシークレットには食い付かず、拓真は阿弥陀籤を作った
誰がどの味を食すかは、神のみぞ知る───犠牲になったのは、アタルだった
「誰だよこんなもん選んだのは!!!」
「‥俺です。安かったんで」
「てめえぇ‥‥」
「すいません」
「うひひ、伸びちゃうから早く食べよ!うわ、拓真の超辛そう!真っ赤っか!」
「すげぇ色だな」
「明日の朝が怖いなぁ‥‥辛いのは好きだけど。んじゃ、頂きまーす」
「くそおぉ‥‥‥そっちのが何倍もマシだぜ‥‥何だよチョコって‥不味そう‥‥」
“シークレット”は、バレンタイン時期に発売されたチョコレート味の焼きそばだった
激辛が当たった拓真は、額に汗を滲ませながら食す
文字通り“激辛”で、氷水をお供にしていても舌がバカになりそうな刺激
オーソドックスな味のユイと菱和は、悠々と麺を啜る
深夜のカップラーメンを大いに楽しんでいる3人を尻目に、一人意気消沈しているアタルもチョコレート味の焼きそばを漸く口に運んだ
咀嚼していくうちに、顔色が変わっていく
「───‥いや待て、これ意外と美味いかも」
「っマジかよ!そんなこと云われたらどんなか気になる!ちょっとちょーだい!」
ユイが焼きそばを摘まみ出すと、興味を引かれた拓真と菱和も一口
「‥ほんとだ、想像してた味と全然違う!意外とイケるかもね!」
「だろー!?」
「あー、俺舌麻痺してるから全然味わかんないや。ひっしー、どぉ?」
「‥ごめ。無理」
「あらら‥‥駄目だった?」
「選んだ本人がそんなこと云ってたら本末転倒じゃねぇか、くそぉ」
「アズに当たらなくてちょうど良かったね!」
籤運に助けられた菱和は、“シークレット”が当たらずに済み、心底安堵した
小腹が満たされた四人は名残惜しげに最後の夜を堪能し、就寝の準備を始めた
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