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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/03/01:05

158 Bacon&Tuna Spaghetti… 'n' Japanese Fried chicken

午後二時、遅めの昼食
菱和は、ユイの合宿中のリクエストであるパスタを振る舞った
程好い固さに茹でたスパゲティーと共にベーコン、ツナ、薄切りにした玉葱を炒め、塩胡椒と醤油で味付けされた極シンプルなものだった

「簡単なやつだけど、どうぞ」

粉チーズとタバスコを添え、菱和は皆が待ち侘びるダイニングテーブルへと着席した

「ふわ、うーんまそう!」

「頂きまーす」

手を合わせ、各々パスタを頬張り始めた

「うまぁ!美味い美味い!」

「すげぇシンプルだけど、美味しいね。粉チーズかけた方が美味しい?」

「俺はかけた方が好き」

「作った本人が云うなら間違いないね、俺もかけよっと」

「俺も俺もー!」

「俺もー」

そう云って、全員が粉チーズを贅沢に振りかけた
菱和とアタルは更にタバスコを振りかけて、味を調整した

「素朴だけど、良いね」

「うん、美味ーーい!」

「これは、オリジナル?」

「んーん。母親がよく作るやつ」

「なるほど。だから“それっぽい”のか」

「“っぽい”って?」

「何となく、時短テクと有り合わせの材料を駆使した感じっぽいなーって。あと、初めて食うのに慣れ親しんだ味。‥って、俺が勝手に慣れ親しんでるだけだけど‥‥」

「親しんでもらえたんなら、満足だわ」

「っつーか、よくそこまで推察したな。普通に『美味ぇ』としか思わなかった」

「‥それも、嬉しいっす」

「パスタはカルボナーラ、ペペロンチーノ‥‥そういやナポリタンも作ってもらったっけね」

拓真は、今まで菱和に作ってもらったパスタのラインナップを指折り数えた

「有名どころは大体網羅してんじゃん、俺ペペロンチーノしか食ってねぇけど‥‥‥そだ、今度ボロネーゼ食いてぇな。ボンゴレも」

「ビアンコ?ロッソ?」

「んー‥‥‥‥‥どっちも?」

「ははっ!だよねー」

「じゃあ、なんかの機会に作ります」

「頼むぜ」

「うぃす」

「やった!俺、アズのパスタだぁーーーい好き!!」

「‥そ。ありがと」

「っつーかよ、この合宿マジで至福だな。食事の美味さにはガチで何も云うことねぇ」

「ほんとねー。ひっしー、ありがとね。大変満足です」

「いえいえ。これくらいは、合宿じゃなくても、いつでも。夜は、佐伯の“唐揚げ”にするわ」

「ほんとに?楽しみにしてるわ」

 

『母親がよく作るやつ』

菱和の母・真吏子の顔を思い浮かべたユイは、このパスタも菱和にとっては所謂“お袋の味”なのだと思い、食事を頬張る頬が自然に綻んだ

 

***

 

昼食後から夕方まで、ユイを除く3人は昨日同様菱和が作ってきた曲のアレンジを進めた
ユイは一人作詞に勤しみ、3人が奏でる音を階下に聴いては時折地下に赴いた
ユイが地下に顔を出す頻度が増えてきた頃、アタルは呆れ顔をした

「何だよ、また来たのかお前は」

「だってさー‥‥‥全然思い浮かばないんだもん‥‥」

ユイは溜め息を吐き、入り口辺りにしゃがみ込んだ

「作詞なんて、滅多にやらないもんね。あんま出来なさそうならあっちゃんにやってもらえば?」

「んー‥‥でもそれもなぁ‥‥‥‥」

「‥やっぱ自分でやりたい感じ?」

「‥‥うん」

頬を膨らませるユイは、珍しく辟易している
普段は使わない頭をフル回転させているのだ、3人は“無理もない話だ”と思った
見兼ねたアタルは、ユイにヒントを与えることにした

「───良いこと教えてやろっか」

「‥何?」

「“作詞に使っちゃいけない言葉は一つもない”」

ユイはきょとん、と目を丸くし、拓真はスティックをくるくる回しながらアタルに問う

「何それ?あっちゃんの持論?」

「俺が尊敬するシンガーソングライターのインタビュー記事で読んだんだよ。この言葉聞いてから、俺も超参考にしてる」

さも持論を展開したのかと思えば違ったようだが、それでもアタルはドヤ顔をしていた

「“使っちゃいけない言葉は一つもない”って‥‥‥‥下品な言葉も使っちゃって良いっての?」

「そりゃ場合によるだろ。あとは、あれだなぁ‥‥‥例えば『ある単語を使いたい』と思ってもしっくりいかないようなら、別な言い回しを使う」

「あー、うんうん」

疑問符が浮かぶユイを他所に、拓真はアタルの言葉に納得したようで頻りに頷いた

「‥‥“ギターを弾く”って言葉を、“音を紡ぐ”とか“奏でる”とか、違う言葉に変えてみるってこと。‥‥で、合ってる?」

更に、菱和が一つ例え話をすると、アタルは軽く笑んで頷く

「‥ま、この辺は国語の知識になっちまうけどな」

「引き出し多けりゃ、他の言い回しの選択肢も広がるしね」

「むー‥‥、でも俺、ボキャブラリーないもんなぁ‥‥」

理解は出来たものの、ユイは自分の語彙力の無さに途方に暮れてしまう

 

「───明日、ひっしーとドライブでも行ってこいよ」

「‥ドライブ?」

「こっから15分くらい行ったとこに海あんだよ。崖っぷちだから下にゃ下りらんねぇけど、夕焼けが綺麗なんだよ。結構沁みるぜー?」

「へー‥‥そんなとこあるんだ‥」

「‥‥って、二人で行ってきて良いの?」

唐突な提案に、ユイは目を瞬いた

「ああ。良い気分転換になんじゃねぇの」

「案外、なんか閃くかもしんないしね」

ゴチャゴチャになった頭のリフレッシュと同時に、菱和と二人きりになれる機会───嬉しさはあるものの、何となく申し訳なく思ったユイは躊躇いがちに菱和の顔を見上げた

「‥‥アズ、良い?」

「うん。じゃあ、今日はあんま酒飲めねぇな」

「あ、そっか‥‥ごめん」

「ううん。明日に残んねぇ程度に飲むから」

「よっしゃ。じゃ、今夜はそこそこに飲むか!お前、一回作詞やめてこっち来いよ。ギター弾きてぇだろ?」

「そうだね、ちょっと四人でなんか演ろっか」

「‥うん!!」

声が掛かると、ユイはパッと笑顔を弾けさせ、いそいそとギターの準備を始めた

 

***

 

「だいぶ形になってきた、な」

「うん。結構出来てきたよね。あとは歌、か」

「ん、頑張る!頑張って、良い詞書く!」

「その調子その調子。‥さて、ぼちぼち夕飯にすっか」

昼間同様、汗だくになった地下室の四人
夕方には演奏を切り上げ、夕食の準備へと取り掛かる
菱和は一足先にキッチンへ向かい、拓真のリクエストである唐揚げの下拵えをし始めた

「今日はあっちゃんが先風呂入ってくれば?」

「おう。軽く汗かいてくらぁ。お先ー」

地下室の片付けを済ますと、アタルはバスルームに向かった
ユイと拓真は菱和の手伝いをし、アタルの入浴が終わるのを待った

アタルが入浴を済ませて出てくると、香ばしい香りが鼻を擽った
真っ直ぐキッチンへ寄り道をし、バスタオルで髪を拭く傍ら唐揚げを摘まみ食いする
まだ着替えも済んでいないというのに、冷蔵庫から缶ビールを2本取り出して飲み始めた

「っかーーー‥美味ぇー‥‥」

「あ、あっちゃんずるい!俺らもまだ食べてないのに!」

「お行儀悪いですねぇ。上半身裸だし」

「そうだそうだ!この裸族!」

「うっせぇ。誰が裸族だ」

ユイと拓真の野次にも全く聞く耳持たずアタルはビールを煽り、残りのもう一本を菱和に手渡した

「ほれ。お疲れ」

「‥お疲れ様です」

菱和はビールを受け取ると、乾杯を促してきたアタルと缶を合わせた

「俺らにもなんか作ってよー!」

「あーもううるせぇなぁ、これ飲んだらな!」

唐揚げは、全部で三種類
菱和もビールを飲みながら、各々の味を説明する

「こっちが塩。こっちがちょっとスパイシー。こっちはにんにく醤油」

「俺、にんにく味食いたい!!」

「ほら」

菱和が、摘まんだ唐揚げをユイの口に放る

「‥‥ん、美味い!!めっちゃ美味い!!」

「忠実にリクエストに応えてくれて‥‥ありがたやありがたや」

手を合わせながら、拓真も摘まみ食いを始めた

「これが、明日には丼になってるのね」

「一応、その予定」

「“どん”??」

「卵で閉じるんだってさ」

「わ、それめっちゃ美味そう!」

「じゃあ、明日まで楽しみにしてますか。でも、あんま食い過ぎないようにしないとな」

「まだまだ沢山あるから大丈夫だよ。めいっぱい食って」

「よっしゃーっ!!」

「酒が進むぜぇ」

そのまま、流れるように夕食の時を迎えた

 

「いつか、リサんちの味付け真似たいんだけどさ。超美味かったから」

「あー。あれ絶妙だよな、ほんと」

「うん!俺、めっちゃ好き!リサの母さんのもにんにく利いてて、結構スパイシーだよね!」

「おー、それも酒が進みそうだな」

「帰ったら、レシピ聞いてみようか?」

「そうだね!」

「‥‥あ、レモンかけっか?まだ余ってんぞ」

「かけよかけよ!」

アタルはレモンを切る傍ら、オレンジ・パイナップル・グレープフルーツジュースにグレナデンシロップを混ぜた“プッシーキャット”を作り、ユイに渡した
ユイを除く3人は取り敢えずビールを飲むことにし、カクテルは夕食後に堪能することにした

暫し夕食に舌鼓を打ち、その後はユイ、拓真、菱和の順で入浴を済ませた

『今日一日その髪で過ごせ』というアタルの言葉通りにしていた菱和
当然、洗髪の際にその髪型は崩す他なく、さっと一本に纏められた菱和の髪を見て、アタルは堪く残念そうな顔をした

「あーあ、俺の最高傑作が‥‥‥‥‥」

「髪型?」

「ほんと、似合ってたよね!」

「お前、明日も髪いじっかんな」

「‥‥ああ‥うん、はい」

アタルが用意していた風呂上がりの一杯であるハイボールを差し出された菱和は、ニヤニヤしている3人を一瞥すると口を“へ”の字に曲げ、頭を垂れた

 

「───そういやよ、お前何であのバンドに居たんだ?もっと良いバンドあったろうによ」

まったりとしていたところ、アタルが菱和に問う

以前菱和がいたバンドについては菱和以外のメンバーにとっても碌な思い出がなく、“あの”事件以来何となくタブー視の傾向にあると思われた
だが、アタルの疑問は誰もが一様に気になっていたところ───菱和は特に気にしている様子もなく、ぽつりぽつりと語り始めた

「‥‥そんな特別な理由はないんすけど‥‥‥あいつらたまたま“climb-out”観に来てたみてぇで、終わって暫くしてから誘われて。その頃、我妻に『どうせ楽器やってるならバンドやればも少し楽しくなんじゃねぇか』って云われてて、あいつらもちょうどベース捜してたみてぇで、『別に良いかな』って。‥‥でも俺コミュ障だし、和気藹々とやんのはまだ早えぇかなと思ってたから、取り敢えずサポートって形で弾くことんなって‥‥‥‥」

「くく‥‥よく云うわ、“コミュ障”とか。なまら行動力あるくせによ」

「‥母親にもそう云われたけど、全然ピンとこねぇすわ」

そう云って、菱和は軽く頭を掻いた

「ユイが誘ったときは、どう思った?」

「嬉しかったよ、フツーに。最初は『何事か』と思ったけど。前のバンドは演奏面は二の次三の次だったから俺も辞め時図ってたし、良いタイミングだったんかもしんねぇ」

「うは、俺ファインプレーじゃあん!」

ユイは、満面の笑みを零す

「今だから云うけど、たーはお前に声掛けんのめっちゃビビってたんだよ。『殴られたくねぇ』とかぼやいてたっけな?」

アタルがニヤけ顔で暴露すると、拓真はバツの悪そうな顔をした

「あーもう、今更そういうこと云うの止めてよ‥‥‥でも俺、あんときまだひっしーは完全に不良だと思ってたから‥‥ごめん」

「んーん。それがフツーの反応だよ。‥殴る気とかは端から全然無かったけど」

「はは!このチビがフツーじゃなかったってこったな!」

「何だよ!最初にアズを誘えって云ったのはあっちゃんだろ!」

「そこんとこは、お前に感謝だな。『見掛けによらずクソ度胸だ』と思わなかったか?」

「まぁ‥‥よく“こんなの”に話し掛けてきたなと思いましたね」

約一年前───ユイが初めて菱和に話し掛けた日は、菱和をHazeに誘った日でもある
紆余曲折あったが、結果的に菱和がベーシストとしてバンドに在籍していることは3人にとって感慨無量と云う他ない
菱和も、それは同じように感じていた

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