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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/02/22:57

152 träningsläger①

合宿当日、8:00頃

 

ユイ、拓真、菱和は、支度を済ませてアタルの自宅に集った
自宅の前には8人乗りの白いワンボックスカーが停まっており、アタルが荷物を積み込んでいた
大の男が4人、しかも大量の食材に加えて楽器や機材と荷物が嵩張る為、合宿にはレンタカーを手配するのが恒例となっていた
3人も荷物の運搬と搬入に加わり、賑やかな声が朝の住宅街に響く

「あれ‥‥‥アズ、手ぶら?」

ユイが指摘したのは、菱和の手荷物
ユイはデイパック、拓真はメッセンジャーとトート、アタルはボストンと、それぞれ大きめのバッグに着替えや私物を詰め込んでいた
それに引き替え、菱和は極端に荷物が少なかった
腰にシザーバッグを提げているものの、他の手荷物が見当たらない

「‥‥ああ、だいじょぶ。ちゃんとある。着替えとかはもう積んだ」

「そうだよね‥‥びっくりした」

「おいおい、脅かすなよ。まさかとは思ったけど」

「『汗だくんなる』って聞いてたから、ちゃんと持ってきたよ」

「だって、何も背負ってないし持ってないから‥‥」

「『ひっしー、着替え持ってきてない!』って?」

「『3日間同じパンツ!?』ってか?流石にいただけねぇよな」

アタルの言葉に、皆がけらけら笑った

普段の菱和ならば、シザーバッグ一つで事足りてしまう
例え今回のような連泊であっても、拓真やアタルのように整髪料を常用しているわけでもなければ衣類にも拘りがなく、コーディネートに関しては着回しが利くものを選び、ボトムは精々予備に一本程度
いずれにしても、荷物は少ない方なのだ

「てか、元々持ち物少ないもんねひっしーは。財布と携帯と煙草くらい?」

「うん、いっつもそんなもん」

「シンプルで良いこった。‥‥じゃ、出るか」

「よっしゃー!」

「乗ろう乗ろう」

トランクと最後部座席は、ぎっしりと埋まっている
アタルはトランクを閉め、運転席に乗り込んだ
気軽に喫煙出来るよう、菱和は助手席に
ユイと拓真は後部座席に仲良く並んで座する
幸い、天候は良好だ
全員シートベルトを締め、いざ合宿所へ

 

合宿所であるアタルの親戚の別荘へは一般道を通っていく予定で、片道3~4時間程のところにある
道の駅で休憩をとりつつの長距離ドライブ、車内はあーでもないこーでもないと常時会話が飛び交い、尽きることはなかった
尊が居たときからずっと“こんな感じ”だったのだろうなと、菱和は3人の会話をゆったりと聞いていた

道の駅での休憩後、アタルは菱和にハンドルを任せることにした
運転を代わった菱和は、煙草を咥えながらのんびりとハンドルを握る
運転に費やしていた集中力を必要としなくなったアタルは運転中よりも音量を上げて喋り、車内は先程にも増してより賑やかになった

コンビニで再度休憩をとる一同
賑やかな車内で、菱和の運転を気にしていた様子であった拓真が話し掛ける

「ひっしー、運転上手だね」

「‥‥そうか?」

「うん。すっごい安心して乗れたよ。免許取って何年目?」

「2年目、かな。初心者マークは去年とれた」

「‥‥あのさ、免許証見ても良い?」

「ん。どーぞ」

菱和は財布から免許証を取り出し、拓真に手渡した

「おおおー、これが運転免許証ですか。良いなあぁ‥‥学生証以外の身分証明書持ってるなんて、やっぱ羨ましい」

「ふふ。アズ若い!」

羨望の眼差しで免許証を見つめる拓真の後ろから、ユイが覗き込んできた

「髪短けぇからそう見えるだけだろ」

「でも、ほんと若く見える。なーんか、新鮮だね」

「‥‥、そんな変わんねぇよ」

「お。何よ、免許証?」

ユイと拓真が菱和の免許証の写真で盛り上がっている声が聞こえたのか、アタルが会話に加わってきた

「ねー、アズ若く見えるよね?」

「あぁ‥‥確かに、なー‥‥。‥そっか、目だ。目がはっきり見えるから余計そう見えんだな」

そう云って、菱和と免許証の写真を交互に見遣る
事実、現在より若い時の写真であることは明確だが、それを差し引いても皆が云うほど実物と免許証の写真に大きな違いは無いと、菱和は思っていた
ただ一つ、髪の長さのみを除いて───

「‥お前、前髪上げたら?」

「いっそオールバックにしちゃうとか。似合うと思うなぁ」

「‥あ!ねぇ、拓真もあっちゃんもワックス持ってたよね?アレでアズの髪弄ろうよ!」

「何だそれ、めっちゃ楽しそうじゃん」

「やっちゃう?イメチェンしちゃう?」

「やろうやろう!ね、アズ!」

「‥‥‥‥‥‥」

───‥‥ガチで弄られそうだ

半分は冗談、半分は本気なのだろう
ニヤニヤしている3人を一瞥し、菱和は軽く頭を掻いた

「あっちゃんは?免許取ってどんくらい?」

「俺?5年、6年目、かな‥‥」

アタルは手に持った煙草を口に咥え、財布から免許証を取り出し、菱和に寄越す

「‥ゴールドだ」

「ほぼペーパーだからな。俺そんな車乗んねぇもんよ」

「でも凄いよね、ゴールド免許!」

「うーまらーやしー。俺も早く免許取りたい」

「俺もー!そしたら、皆で運転代わって色んなとこ行けるもんね!」

何時かそんな時が来るのだと思うと、気持ちは逸る
ユイと拓真は年齢の壁を疎ましく感じると共に、年上である菱和とアタルをちょっぴり羨ましく思った

 

車は再び、地理感のあるアタルの運転で動き出した
別荘の持ち主であるアタルの親戚からは、鍵は解錠してあるとの連絡を受けている
ここから先は合宿所までノンストップ

景色は次第に移り変わっていき、すれ違う車もほぼいなくなってくる
白樺の木が生い茂る山道を通っていくと、別荘地らしきエリアに入った
北欧調の建物を3、4軒見送った後15分程を道なりに進んでいくと、漸く目的地に到着した
そこには、白樺林に映える総煉瓦の家屋が建っていた

「ふいー、着いた」

アタルは車を降りて、伸びをした

「あっちゃん、お疲れー!」

「おう。俺ここで一本喫ってっから、先に荷物運んどいてくれ」

「ういー。うお、これ重てぇー‥‥」

「持つよ」

「あ、有難う‥‥ユイ、俺のスネア宜しく」

「はいはーい」

3人は早速、荷降ろしを始めた

 

食材、飲料、機材
3往復程で全てを運び出し、合宿所内へ入る
外観は煉瓦だが、屋内は木目調だった
久方振りに暖房を点けたような、若干焦げ臭い匂いがする
食材と飲料は冷蔵庫に仕舞い、機材は地下に運び込む
地下への階段を軋ませながら降りると、冷気が漂ってきた
開け放った扉の向こうは10帖程の防音室になっており、アンプやドラムセット、LPの再生機器等が置かれていた

「‥‥すげぇな、地下室まであるなんて」

「親戚のおじさんさ、退職金叩いてここ買ったんだって。元持ち主が音楽好きだったみたいで、ここは最初から防音室だったんだって」

「へぇー‥‥」

「こうやって使わしてもらえて、有難いよね!」

「まぁ、来るのは大変だけどタダだもんな。‥‥‥、あっちは何?」

防音室の更に奥に、もう一つ扉が見える

「ワインセラーっぽい。全然使ってないみたいだけど。部屋、案内するよ」

拓真に促され、菱和は興味深そうに辺りを見回しながら地上へと向かう
ユイも、その後をついていった

 

キッチン、リビング、トイレ、洗面所、浴室
拓真が一階にある主要施設を粗方説明して回った後、3人は2階へと上がっていく

「上は4つ部屋があるんだ。どこでも好きなとこ使って。‥‥とはいっても、大体いっつも一個の部屋しか使わないんだけどさ」

「そーそー!誰々の部屋ーとか決めても、絶対1箇所に集まるんだよね!」

「で、結局雑魚寝してんのね。‥までも、ほんと好きに使って。こっちはトイレ」

一つ一つの部屋のドアを開けながら、軽く部屋を覗き混む
どの部屋も6~8帖程あり、セミダブルベッド二組とローテーブル、そしてソファが完備されてあった

「なんか、すげぇな。‥‥ちょっと、フツーに生活してみたい」

「ふふ。今度、合宿じゃなくても遊びに来よっか」

「それも楽しそうだね!プチ旅行にはいい距離だもん!」

地上2階建ての6LDK、地下には防音室とワインセラー
煉瓦も、室内に使われている木材も、決して安価なものではない
菱和は、実家の規模と比較しつつ様々な考察をした
土地面積も上物も実家の方が上回っているのだが、この別荘地も相当な額が掛かっているということだけは間違いないだろうと確信する
繁々と見渡しながら、再び建物内を散策し始めた
その後ろであーだこーだと談笑しながら、ユイと拓真がついて回る

「おーい、なんか飲もうぜー」

ちょうど2階を回っていたところで、階下からアタルの声がした
早速、カクテルを振る舞うつもりでいるのだろうか

3人は、駆け足で階段を降りていった

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