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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/03/12:05

150 合宿に行こう③

学期末試験も恙無く終わり、Hazeの高校生3人組は無事三学年に進級の運びとなりそうだった
元より、拓真と菱和は何の問題もないのだが───ユイも、2人のお陰で何とかギリギリセーフといったところだ

アタルも無事大学を卒業し、大手を振って卒業証書を見せて寄越した
但し、在学中から就職活動は一切行っておらず、当面はフリーター確定だ
まだ暫く厄介になると家族の承諾を得、引き続き実家に置いてもらい、新年度からはバーの他にもバイトを始める予定でいた

 

アタルには“プロのギタリストになる”という夢があり、中学生の頃から周囲に豪語していた

「何がプロだ」
「甘い」
「考え直せ」
「現実見ろ」
家族はそのような類いの言葉を云うことは一切無く、細やかながらアタルの夢を応援し続けている
一年留年はしたものの、大学卒業まで面倒を見、己の可能性を信じてくれる家族へ只管感謝した

当然、ユイと拓真もアタルの夢を知っている
アタルがプロになるということは“いずれバンドから居なくなってしまう”ということ
その事実をしっかりと腹に据え、共にバンドが出来なくなる日を侘しく思うよりも、アタルの夢が成就するときを待ち侘びている

しかし、幾ら願っていても芽が出なければそれまでの話
才能、運、実力、タイミング───夢を夢で終わらせるかどうかは、アタル次第だ

 

アタルの頭の片隅には、『出来ることならばバンド丸ごとプロになれれば』という願いもあった

3人には未だ打ち明けていない、壮大な夢

春に先駆け、アタルの心にはマグマのような闘志が燃え盛っていた

 

***

 

春休みまで残り5日
修了式を控えている
春休みを迎えるその日から、一同は三泊四日の合宿へと臨むことになっている

とある週末
日程や献立の確認、そして買い出しの為、Hazeのメンバーは菱和のアパートに集った
アタルが指折り挙げたものを、菱和はメモに走り書きしていく

「レモン、ライム、ガムシロ、ヨーグルト」

「‥‥、‥‥うん」

「えーと‥‥マンゴージュース、パイナップルジュース、グレープフルーツジュース」

「‥‥、‥‥うん」

「ジンジャーエール、炭酸、グレナデンシロップ」

「‥ごめん、最後のもっかい云って」

「グレナデン、シロップ」

「ぐれな、でん‥‥しろっ、ぷ」

「そんくれぇで良いかな」

「‥‥ん」

「して、献立な。俺、鍋食いてぇなぁ」

「お、良いねぇ!」

「まだ寒いしねー」

「何鍋?」

「キムチ。で、良いか?」

「おっけー!」

「さんせーい」

「‥りょーかい」

「俺、パスタ!味はお任せで!」

「ん。‥‥パ、ス、タ」

「俺はねー、えーと‥‥唐揚げ」

「か、ら、あ、げ‥‥‥‥ん、おっけー」

「よっしゃ。じゃ、行くか」

「応!!」

アタルの運転で、何でも揃う大型のスーパーへと繰り出す
ユイとアタルはドリンクとリカーコーナーへ、拓真と菱和は食料品コーナーへ
二手に分かれ、それぞれ買い出しを始めた

 

***

 

ユイ・アタル組

 

「あっちゃあん、パイナップルジュースなんてないよぉ」

「あ?よく捜せよ」

「だって、ないんだも‥‥‥と思ったら、あった!ねぇ、これで良い?」

「ああ」

「あと、マンゴーね。‥‥てか、トロピカーナばっかだ」

「別にメーカーなんてどこのでも構やしねぇよ」

「何でこんなジュース沢山要るの?」

「そりゃ殆どお前用だよ。お前の為のノンアル」

「え、そうなの?」

「まず、シャーリーテンプルだろ」

「それ、好きなやつ!」

「知ってるっつの。あと、ノンアルのモスコ、シンデレラ、プッシーキャット、ざくろグレフル、ラッシー、かな。そんくれぇありゃ満足だろ」

「そんなに沢山作れちゃうの?この材料で?」

「ああ。卵ありゃミルクセーキも作れるぞ」

「え。ミルクセーキって、カクテルなの?」

「ミルクセーキもミックスジュースもカクテルみてぇなもんだ。‥‥よっしゃ。次、酒」

「何買うの?」

「ビール、グレナデンシロップ、ペシェ、カルーア、カンパリ、カシス‥‥」

「待って待って!頭が追い付かない!横文字多過ぎ!」

「あっそ。じゃあカゴ持ってろ。えーと、これ、これ、‥これ」

「う‥重‥‥!」

「何だよ、だらしねぇなぁ」

「瓶ばっかだから急激に、重くなっ、た」

「ちょっと待ってろ。あと、これも‥‥」

「あっちゃ‥これ、あっちゃんちにも同じやつあるよ、ね。この、ブルーベリーみたいなの」

「カシスな」

「そ、れ。しかも、これより大きい瓶、だったよね。自分ちにあるやつじゃ、ダメなの‥‥!?」

「全部口空いてるもんよ。残り少ねぇし」

「そんなの、拓真も、アズも、気にしないと、思うけど‥‥てかマジで重い‥!」

「んだよ。ったく‥‥ほら、代われ」

「あー‥‥指千切れるかと思った」

「ま、こんくれぇにしとくか。余しても勿体無ぇし。財布出してくんねぇ?」

「どこ?」

「ケツポケット」

「はいはーい。てかさ、これだけの材料で何種類くらい作れるの?」

「んー、結構作れるぞ。カシスは万能だし、カンパリとカルーアは全部のジュースと合うし‥‥」

「かるーあ?って、これだよね」

「そ。コーヒー味のリキュール」

「‥コーヒー!?コーヒーと、パイナップルジュース!!?なんか、全然味が想像出来ない‥‥」

「ばっかお前、めちゃめちゃ美味ぇんだぞ?」

「‥‥ふーん‥‥‥」

「何だよその目。二十歳になったらしこたま飲ましてやっから、それまで楽しみに待っとけ。‥ま、二十歳になったって弱いもんは弱いままだろうけどな!」

「‥うっさいな!!二十歳になったら覚えてろよ!!」

「はは!云ってろ、チビ!」

 

***

 

拓真・菱和組

 

「白菜、えのき、しめじ、マロニー、肉‥‥‥鍋の中身は、大体こんなもんで良い?」

「ん。もやしとか韮とか、すぐ傷みそうなのは前日に買っとく。あとは上手く余らして、どうにか残りの飯に活かすわ」

「なんか主婦みたいだなー、その感覚。ほんと、男でいるのが勿体無いと思えてくる」

「‥‥こんな女、居たら堪んなくね?」

「え、それは見た目の話?性格の話?」

「どっちも」

「もぉ、謙遜しちゃってさ。全然そんなことないってば。‥‥あ。ユイのパスタ、どうする?」

「‥‥それがさ。正直、迷ってて。んーーー‥‥‥‥あ、ツナ欲しいかも。あと、ベーコン。ピザ用チーズも」

「ほいほーい」

「角食と生クリームと、牛乳‥‥‥あと、合宿所って調味料あんのかな」

「ああ、確かあった筈。“さしすせそ”は大体揃ってる。何だかんだ人の出入りはあるみたいだから、あの別荘」

「そっか‥‥じゃあ、ちょい不安なもんは自宅から持ってく」

「おっけー」

「唐揚げは、何味が良い?葱ダレか、にんにく醤油か。カレー粉とかチーズ塗しても良いし、竜田っぽくも出来るけど」

「うわぁー‥‥どれも魅力的‥」

「‥したら、多目に作って何種類かやってみるわ。残ったら、卵で閉じる。っつうか、米も買わなきゃなんねぇか‥‥」

「おおお、それ美味そう!親子丼みたいな感じになるのかな?」

「近いと思う。母親がよくやってて」

「うーん、そっかぁ‥‥ひっしーの“主婦っぽい感じ”は、そこからきてるのかなぁ」

「‥ん?」

「ユイが云ってた。お母さんも料理上手なんだってね。『お店で食べたみたいだ』ーって、めっちゃ絶賛してた。あと、お母さん自体も好きっぽい。家庭的で、優しくて、綺麗な人だって。ひっしーは、『間違いなくお母さんの血引いてる』、って」

「‥‥そうなんかな。よくわかんねぇけど」

「ふふ。家族に似てるかどうかって、客観的にしかわかんないよね」

「‥‥ん‥‥‥」

「‥‥、俺もさ、今度、行っても良い?ひっしーの実家」

「勿論、そりゃ。飯くらい、いつでもどうぞ」

「‥マジー!?うっひゃあ、楽しみ!じゃ、そろそろレジ行こっかー」

「‥‥‥‥待った。佐伯」

「うん?」

「‥‥、いちばん大事なもん買うの忘れてた」

「え!なになに‥!?」

「‥‥‥‥カップラーメン」

「‥ふっははは!!何だー、びっくりしたー!真剣な顔して『いちばん大事』なんて云うから‥‥あははは!もうユイに聞いた?」

「『変な時間に食う』って。結構重要なアイテムだろ」

「そうなのさ、実はね。ふふふ‥‥何個か変な味のやつ買っとこうか。激辛とか」

「だな。‥‥じゃあ、“これ”も」

「ぶふっ‥一体誰が犠牲になるのやら。いやー、思いの外ひっしーがノリノリで安心したぁ」

「‥‥‥、中学んときに戻ったみてぇで。結構、楽しい」

「元々“そういうノリ”だったのね‥‥‥楽しいと思ってくれてるんなら良かった。でも合宿中はもっともっとアホだから覚悟しといてね」

「‥上等だ」

 

その後、4人は合流し、菱和のアパートに戻った
飲み物類はアタルが持ち帰るとしても、菱和のアパートの冷蔵庫は食材でぎっしり埋まった

「うへー、すごい量‥‥」

「うちの冷蔵庫、小せぇからな。足らないもんは、前日までに用意しとくから」

「じゃ、精算しようぜ。前日の買い物分の金は置いてくから宜しく頼むよ」

「うぃす」

「ユイー、レシートー。俺の財布から取ってくれー。序でに煙草もー」

「はいはーい」

ユイと拓真がリビングで談笑中、菱和とアタルはキッチンの換気扇の下で煙草に火を点ける

「‥なぁ。“アレ”、どーなった?」

ユイたちに聞こえないよう、アタルが耳打ちしてきた
菱和はぼんやりと答える

「んー‥‥‥‥ぼちぼち、かな」

「そっか‥‥悪りぃな、あれこれ考えたら面倒臭せぇ感じになっちまってよ」

「いや、全然。逆に、やり甲斐あって楽しいす」

「ほう。そんじゃ、こっちも楽しみにしてんぜ」

「‥‥、そんなに期待しない方が良いと思います」

「なーに云ってんだ。自信持てよ。お前の意見、アレンジんときめっちゃ助かってんだぞ?もっとそういうとこ活かさなきゃ損だと思うぞ」

「‥‥恐縮です」

「お前は抜群にセンスあるよ。俺、結構気に入ってんだかんな」

───それは俺の台詞です

そう云おうとした口を噤み、菱和は軽く頭を下げた

 

「ねー。折角車あるんだから、どっか連れてってよー」

2人が煙草を喫い終える前に、ユイがリビングから声を掛けてきた

「あ?“どっか”って、どこ行くんだよ?」

「どこでも良い!ドライブドライブー!」

「お、良いねー。行く宛のないドライブ。CD、何かけようか?」

「アズー、なんか持ってって良いー?」

「ああ」

菱和が生返事をすると、ユイと拓真はいそいそと楽器が置いてある部屋に向かい、CDを漁り始めた
2人の中で、ドライブは既に決定事項になったようだ
まだ『行く』とすら云っていないアタルは、盛大に溜め息を吐いた

「はー‥‥何であんな元気なんかなあいつら‥‥‥」

「‥‥俺が運転しますか」

「いや、良いよ‥‥そん代わし、合宿んときはちっと頼むかもしんねぇ。片道3、4時間はあるからよ」

「勿論です」

菱和はふ、と笑み、煙草の火を消してジャケットを羽織った
アタルも最後の一口を喫い、溜め息と共に煙を吐き出すと、少し重い腰を上げた

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