NEW ENTRY
[PR]
140 喫煙所にて
「ね、アズサちゃん」
「‥‥んだよ」
「今日、ユイくんと『デート』って云ってたよね?」
「ああ」
「それってさ、どういう意味合いのもの?」
「‥何が」
「だから、恋人同士がするような、ほんとに“デート”って呼べるものなのか、それともただ単に友達同士で遊び歩くだけのものなのか、どっちなのかなって」
「‥‥‥‥、‥前者」
「‥‥てことは、ユイくんとは“そういう関係”ってこと?」
「‥‥‥‥ん」
「‥あ、そう!そうなの!へぇー‥ふーん‥‥」
「‥‥何だよ」
「別に。仲睦まじいなーと思っただけ。そっかそっか‥‥うんうん」
「‥‥‥、引いたり、しねぇの」
「何で?男同士だから?」
「‥‥‥‥」
「‥‥今更何も驚かないよ。『いつか“そう”なるんじゃないかな』って思ってたから」
「‥は?」
「ほら、いつだったか君ら喧嘩してたときあったでしょ。あのとき、ユイくんがアズサちゃんに対する気持ちを沢山話してくれたんだ。『ああ、これ“恋っぽい”なー』って感じしたの。もしそうだったとしたら『上手くいけば良いな』って、密かに思っちゃったよね。ユイくんはイイ子だし、アズサちゃんもイイ男だもん」
「‥‥‥‥」
「‥‥中には引く人もいるかもしれないけど、俺は引いたりなんてしないよ。アズサちゃんが誰を好きになろうと、俺アズサちゃんのこと大好きだからね。‥あ、勿論“like”の方だよ」
「たりめーだろ、バカ野郎」
「んふふ。‥‥2人がお互いに納得してそういう関係にあるんなら、それはもうとても素敵なことじゃない。大事な“友達”が幸せなら、俺はすごく嬉しい。ただそれだけのことだよ」
「‥‥‥‥」
「‥‥、一つ訊いて良い?」
「‥何」
「何でほんとのこと話してくれたの?幾らでも誤魔化せた筈だよね?」
「‥‥逆に、誤魔化して何の意味があんだよ」
「まぁ、そりゃそうだけど」
「‥‥‥‥‥、相手がお前だから、としか云いようがねぇ」
「おやまぁ。それは嬉しいねぇ」
「‥‥‥‥正直なとこ、“そう”なったことで“ここ”に来づらくなんのだけは避けたいと思ってた。‥‥今思えば杞憂だけど」
「なーに云ってんだか。ほんとに杞憂だね。俺、絶ーーーっ対そんな風にさせない自信、あるよ?」
「‥‥なーに云ってんだか」
「あら、人の台詞パクんないでよ。‥‥でも、“ここ”をそういう風に思ってくれてるんだね」
「‥‥、俺がっていうより、あいつが来られなくなるのが嫌なだけだ。あいつ、“ここ”もお前のことも気に入ってるし。バンドとしても“ここ”使えなくなったら不便だし」
「またまた。アズサちゃんもそうでしょー?」
「‥‥暇潰しと一服と、タダでコーヒー飲める場所」
「もぉ‥‥素直じゃないんだから。『バンドとしても』ってことは、アズサちゃん自身も入ってるでしょ。だから、絶対『来づらい』思いなんてさせない。ってか、そんなこと考えないでよ。アズサちゃんと俺の仲でしょ」
「‥どんな仲だよ」
「アズサちゃんは俺の愛弟子でしょー!?ほんと可愛くないんだからー!も少し可愛げ持った方が良いよアズサちゃんは!」
「るせ」
「‥‥‥、話してくれて、有難うね」
「‥別に。‥‥っつーか、野次馬根性丸出しだな」
「まぁ‥‥正直なとこはね」
「‥‥やっぱ性格悪りぃ」
「‥嘘嘘!今の嘘!」
「云ってろ」
「‥‥‥‥これからも、気兼ねなく来てよ。バンドとしても、個人的にも‥デートの途中でも。いつでも待ってるから」
「‥‥ん」
- トラックバックURLはこちら