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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/17/16:47

134 INVITATION

アタルの自宅から帰宅したユイ
辰司が用意していた夕食を食べ、暫し父との談笑を楽しむと、入浴を済ませて自室へ戻った
部屋に入るや否や、ベッドへとダイブした
枕に顔を埋め、溜め息を吐く

「‥はー‥‥‥亜実ちゃんが、結婚かぁ‥‥」

亜実は、ユイにとって姉のような存在だった
拓真の姉である葉子もまた、同じような存在だ
拓真ともアタルとも、幼い頃から家族ぐるみで付き合いがあり、皆一緒に過ごしてきた
実兄の尊のみならず、アタルや亜実、葉子にも可愛がって貰った記憶がある
亜実や葉子も、家族のように大切な存在だ

幼い頃の思い出を幾つも反芻すると、亜実が嫁ぐという事実に、嬉しさも、幾許かの淋しさも感じつつ
心底幸せそうな亜実の顔を思い出し、ユイはふ、と笑んだ

 

ふと思い立ち、ベッドから起き上がる
携帯を手に取り、誰かに電話を掛け始めた

電話の相手は、菱和だ

『‥‥もしもし』

「あ、アズ。こんばんは」

『ふふふ‥こんばんは』

「‥な、何で笑うんだよ」

『別に』

「‥‥‥‥今、話せる?あの‥‥特に用事はないんだけ、ど‥‥はは」

『ふふ‥‥うん。良いよ』

電話の向こうで、くすくす笑う声が聞こえた

 

『スーツ、いつ見に行こうか』

「あ、うん。まだ大丈夫かな‥」

『式は5月っつってたよな。それまでに買えば良いと思う。でも、スーツの他にもYシャツとネクタイも買わなきゃなんねぇから、あんま迷うようなら早めの方が良いのかしんねぇけど』

「そー‥‥だね‥俺、優柔不断だからなぁ‥‥」

『まぁ、冠婚葬祭っていつあるかわかんねぇしな。学生のうちは制服あるけど、今のうちに一着くらい持ってても良いと思うよ。‥近いうち、どっか見に行っか』

「うん、宜しく!色々教えて!」

『うん。‥‥っつーか、まだ休みあるしどっか行かね?』

「うん!行こ!PANACHEもまだ行ってないし‥あ、たこ焼も!いつ行く?」

『ああ、いつでも良いよ』

「じゃあ、明日‥‥って、急過ぎるか」

『良いよ、全然。‥‥‥‥したら明日、デートすっか』

「‥‥でー、と‥?」

『うん。初デート、だな』

 

“デート”

その響きを聴いた途端に、顔が熱くなる
そういえば、まだデートと呼べる行為をしたことがない
第一、菱和とデートをする場面を全く想像できない
剰え、デートに“たこ焼き”という取り合わせ───

 

───色気もへったくれもないな‥‥

ユイは俯き、黙りこくってしまった

 

『‥‥ん、なした?』

「や、何でも、ない」

『そ。‥‥迎えに行く?それともどっかで待ち合わせする?デートらしく』

「う‥、‥‥‥‥じゃあ、待ち合わせした、い」

『何時が良い?』

「俺は、何時でも‥‥」

『‥‥んー‥‥‥じゃ、11:00に‥‥駅前集合で』

「わかっ、た」

『‥‥そういや、たこ焼って昼飯に出来そう?』

「う、うん。結構大きいから、一パック食えばお腹一杯になると思う」

『そっか。‥‥じゃあ明日、どこ行きたいか考えといて』

「えーと、うん‥‥‥」

『‥‥あれ。ひょっとして、今からもうキンチョーしてる?』

「や‥そ、なことな‥‥くはない‥‥かな」

『ふふ。そっか』

「あ、アズは、緊張しな、い‥?」

『‥俺?‥‥緊張っていうより、楽しみ。かな』

「そっ‥‥か‥。あんね、俺、ほんとそういうの経験なくて‥」

『何云ってやがる、俺だって初めてだよ』

「‥‥、そ‥」

『嘘じゃねぇって』

「は、はぃ‥‥てか、ほんと、なんかやらかしたらごめん。今のうちに謝っと、く」

『何だそりゃ。‥まぁ、お互い初めてなんだし、肩の力抜いてこ』

「ぅ‥‥うん‥‥‥‥」

『ダイジョブダイジョブ。へーきへーき』

「‥何でそんな余裕なの‥‥」

『さぁ。何でかな』

「‥‥‥、ドキドキしたり、しないの?」

『“ドキドキ”?‥‥してるよ』

「へ‥」

『‥‥‥さ、明日の予定も決まったことだし、早めに寝るべ』

「う、うん。じゃあ‥‥おやすみなさい」

『ん。おやすみ』

 

「───‥‥‥‥‥“デート”‥‥」

通話が終わると、強烈に印象に残ったワードが思わず口に出た

デートらしいことなど、今までしたことがない

自分が思いつく限りのデートの風景
食事をしたり
映画を観たり
手を繋ぎながら肩を寄せ合って街を歩き
水族館や遊園地などの、所謂“デートスポット”と呼ばれるような場所へ出掛け───

「───ぅわわわ‥」

大好きな人とのデートだ、きっと楽しいだろう
だが、一先ず照れが先行してしまう
現に、菱和と手を繋ぎながら何ともベタなデートをしている様子を想像した途端、ユイは赤面してベッドに突っ伏してしまった
徐に顔を上げ、溜め息を吐く

「‥‥‥こんなんで、大丈夫かなぁ‥‥っていうか、集合時間しか決めてない‥‥‥‥」

かといって、壮大なデートプランなど思い浮かびやしない

デートの相手は菱和
長身ですらりとした菱和と、“ちんちくりん”な自分
並んで歩いていても、周囲から“恋人同士”だとは到底思われないだろう
恐らく菱和は気にはしないだろうが、“ちんちくりん”と一緒に街を歩かせるのが申し訳なく思えてしまう
果たして『菱和が自分とのデートを楽しんでくれるかどうか』と、一抹の不安を抱く

取り敢えず───

───何着てこうかな‥‥

ユイは徐にクローゼットを開け、衣装ケースを漁り出した

 

***

 

『お晩ですーアズサちゃあん!あけおめー、ことよろー!』

「‥‥‥ああ」

『何でそんなテンション低いのさー?ことよろだよ、こ・と・よ・ろ!』

「るせぇな。酔ってんのかよ」

「うーん、そうねー。お屠蘇の残り飲んでるーあはははー。アズサちゃんが『ことよろ』って云うまで電話切らないからね」

「はいはい。ことよろ。ほんとしつけぇな。‥で、なんか用かよ」

『あのさぁ、明日うちの店来てくんない?会わせたい人がいるんだよねー』

「‥は?」

『どうせ暇でしょー?』

「暇じゃねぇよ。勝手に暇人認定すんな」

『え、どっか出掛けるの?』

「ユイと“デート”」

「あらま!そうなの!そっか、じゃあユイくんも一緒につれておいでよー!」

「‥‥‥、明日じゃねぇと駄目なのかよ」

『うん。明日じゃないと駄目ー。店は休みにしたから、いつでもおいでねー!』

 

携帯から規則的な電子音が流れる

「‥‥このボケナス」

我妻への憎まれ口を呟くと、菱和は携帯をソファへと放った

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