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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/17/17:56

133 MARRIAGE

三箇日が過ぎ、少しずつ正月気分が抜け始めてきた
「冬休み中にPANACHEへ行こうか」「バンドの練習はいつにするか」
ユイは冬休みの残りの日にちを指折り数えては、休みを満喫出来るよう様々な予定を考え出した
そんな折、間もなく仕事始めを迎える尊が地方へと帰らなければならない日がやって来た

尊を空港へと送り届けるべく、辰司は車を出した
助手席には尊が、後部座席には共に見送りにと馳せ参じたアタルがユイと並んで座す

空港はUターンラッシュのピークを迎え、普段以上にごった返していた
軽く昼食を済ませると、尊の搭乗の時間まで観光客に紛れ銘菓や特産物の試食に興じ、巨大な窓のある展望デッキから飛び立つ飛行機を何度も見送った
一頻り観光客気分を味わい、ごたついている搭乗口から尊を見送ると、3人は駐車場へと戻った

 

帰路の途中、アタルは後部座席から身を乗り出して辰司に声を掛けた

「親父さん、帰りユイ借りてっても良いすか」

「うん?構わないよ」

辰司はにこにことし返事をした
急遽“借りられる”ことになったユイは、首を傾げる

「何?なんかあんの?」

「ああ。ちょっと大事な話あんだ。ひっしーも呼んである」

「え‥そうなの」

「おう。たーもバイト終わったら来るから」

辰司は嬉しそうにハンドルを握っていた

「その面子ってことは、バンドの話かい?」

「ふひひ。そうっす」

「じゃあ、真っ直ぐアタルくんち向かうね。父さんは晩ご飯作って待ってるから」

「うん、有難う!」

新年早々、バンドメンバーが集まる機会が度々訪れている
ユイは、わくわくしながら一ノ瀬宅到着を待ち侘びた

 

***

 

「ユイちゃん!明けましておめでとう!」

「亜実ちゃん!久し振りー!」

アタルの自宅には、アタルの父母と、姉の亜実がいた

「もー相変わらずめんこい!元気してた?」

「いらっしゃい。寒かったでしょ」

「ユイくん、ちょっと背伸びたかい」

一ノ瀬家全員が歓迎ムードの中、アタルだけはユイに憐れみの視線を向ける

「親父、やめとけって。何の慰めにもなってねぇ」

「『慰め』って何だよ!ちょっとくらい伸びてるかもしんないじゃん!」

「あんたが“おがり”過ぎなんだよ。何でこんな無駄に成長したかね。頭赤いし、マッチ棒みたい」

アタルの母の放ったその言葉で、ユイと亜実はゲラゲラ笑い出した

「マッチ、棒‥‥‥ぶはっ!!」

「やだ母さん、その表現適格!」

「息子の成長を『無駄』とか云ってんじゃねぇよ!!俺だって好きでこんな背伸びたんじゃねぇっつの!!」

 

アタルのがなり声を裂くように、チャイムが鳴った

「あ。たっくん来たんじゃない?」

亜実はいそいそと玄関に向かった

「ちわー」

来客は、案の定拓真だった

「たっくん!いらっしゃい‥───」

笑顔で出迎えた亜実は、拓真の後ろに突っ立っている長身の男にビビり、絶句した
呆然としている亜実の後ろから、ユイとアタルがひょこっと顔を覗かせる

「おー、一緒だったのか。ちょうど良かったな」

「拓真、おかえり!いらっしゃいアズ!」

「たまたまそこで会ったんだ。亜実ちゃん、たけにいの代わりにベース弾いてくれてる菱和くん。ひっしー、あっちゃんのお姉さんの亜実さん」

「‥こんにちは」

「───っそ!!!ヤバいマジイケメン!!!」


亜実は、軽く会釈する菱和をガン見した後唐突に叫び声を上げた

「‥ぶはっ!ははは!亜実ちゃん、ひっしー引いちゃってるよ!」

「おま‥何だよそれ。ボキャブラリー0じゃねぇか」

「亜実ちゃん、面白ーい!」

語彙力が崩壊した亜実の言葉に、ユイと拓真とアタルは爆笑
菱和はきょとんとし、全てを静観している

「は‥‥ご、ごめんなさい‥一ノ瀬 亜実です」

「‥ビビらしてすいません。初めまして、菱和です」

我に返り赤面した亜実は軽く頭を下げ、菱和も再度頭を下げた

 

***

 

一ノ瀬家に集ったHazeのメンバーは、アタルの部屋に招かれた
先程車内でアタルが云っていた通り、この面子で集まるということはバンド絡みの話題であるということ

「お待たせー」

亜実がマグを5つ盆に乗せ、アタルの部屋に入ってきた

「これ、なに?めっちゃいい匂い!」

「“オルヅォ”っていって、これはチョコレート味の麦茶なの。最近のお気に入りなんだー。牛乳出しだから、ホットチョコレートみたいな味するよ」

亜実は早速マグに口をつけた
“チョコ”と聞き、ユイもマグに手を伸ばし、オルヅォを口に含んだ
予め温められていたようで、ほんのりと香る香ばしさとチョコレートがじんわりと胃に落ちていく

「ほんとだ!チョコの味!甘い!」

「ね、美味しいでしょ?」

ユイと亜実が顔を見合わせオルヅォに舌鼓を打っていると、拓真も菱和にマグを手渡し、自らも携えた

「あっちゃん。今日はバンドの話なんだよね?」

「おう。やっぱ、こいつが居るから不自然か?」

「いや、うん、そうだね」

亜実が飲み物を持ってきてくれただけではなく、そのまま部屋に居座っていることに違和感を覚えた拓真は軽く頭を掻く
そう云われてみれば、と、ユイも首を傾げた

「まぁ、そうだよな。でも、今回の話のメインはこいつなんだ。おい、お前から話せよ」

アタルに促され、皆に注目された亜実は気恥ずかしそうにぽつりと話し出した

「‥‥あのね、実は‥‥‥‥私、今年結婚することになったの」

「え、マジで!!?」

ユイと拓真は身を乗り出した

「ねぇ、いつするの!?」

「5月には式をやろうか、って話してるんだけど」

「わー、すげぇ!亜実ちゃん、おめでとう!」

「‥おめでとうございます」

「やー、ほんとめでたいなー」

「ふふ、有難う!‥それでね、みんなに余興をお願いしたいなーと思って」

「よきょう?」

聞き慣れない言葉に、ユイはきょとんとした

「出し物的なやつ。バンドで何曲か演奏して欲しいな、って」

「ふえぇ、マジか!そんなオファーくるなんて思っても見なかった」

これで、ミーティングのメインが亜実だということに合点がいったメンバー

「この話、受けて良いか?」

「俺は良いよ」

「俺も!」

「問題ないっす」

「ほんと!?有難う!嬉しい!!」

ユイも拓真も菱和も頷き、亜実は嬉しさのあまり満面の笑みを零した

「でもさ、うちのバンド、ウェディングソング無いよ。作るの?」

「まさか。そんな時間ねぇよ。今演ってんのか、なんかカバーするかだな」

「そっか。何が良いかなぁ」

「どかーんと盛り上がるやつ宜しくね!みんなお酒入ってるから、きっと盛り上がると思う!」

「そーそー。しゃしゃって前出てくる奴絶対いるからよ、多少ぐだっても大丈夫」

アタルはニヤニヤしながら煙草に火を点け、灰皿を菱和の近くに置いた
菱和も、軽く頭を下げた後煙草に火を点け始めた

「うははー、楽しみだね!」

「てか、旦那さんはバンドとか大丈夫な人?俺らの曲結構うるさいからさ‥‥」

「全然平気!っていうかね、『余興やってもらえないか』って云い出したの、彼からなの。『弟がバンドやってる』って話したらノリノリでね。音源も聴いてるんだよ!だから、絶対喜ぶ!あーもう何だか待ちきれない!私、電話してくる!」

そう云って、亜実は浮き浮きと部屋から出ていった

「ふふ、亜実ちゃんほんと嬉しそうだね」

「まぁなぁ‥‥もう落ち着いても良い年ではあるしな」

「旦那さんて、どんな人?会ったことあるの?」

「すげぇ温厚な感じ」

「その人、“お義兄さん”になるんだよね?大丈夫なの?」

「俺がっていうより、向こうがだいじょぶかって感じすっけどな。やっぱ最初はビビられたよ」

「え、その髪で会ったの?」

「んなわけねぇだろ。向こうの家族と顔合わせだったし黒くしてったけど、次に会ったときにゃ元に戻してるからなまらビビってたっけ」

「ははは!やっぱりね!その顔でその髪だったら絶対ビビるよー!」

「うっせぇ、アホチビ」

「あーでも、親戚の前で演んの緊張するなぁ」

「そっか、拓真の親戚でもあるもんね」

「てか、スーツ買った方が良いかな?」

「はぁ?制服あんだろ」

「えー‥‥制服じゃ全然カッコつかないじゃん‥亜実ちゃんだってドレス着るんじゃん。俺もお洒落したい」

「‥‥お姉さんがメインだからな」

「や、そうだけどさ‥‥」

「っつーか、お前がお洒落したところで誰も見てねぇよ」

「うるさいなぁ、こんな機会滅多にないからお洒落したいんだよ!結婚式なんてそうそう行けるもんじゃないし!てか、みんなでお揃いにしよ!」

「ぷっ‥コミックバンドみたいになりそ」

「くっ‥はは!意外とアリかもしんねぇな!」

「でしょでしょ!?じゃあやっぱスーツ買わなきゃ!」

「つーか、お前の場合特注じゃね」

「何で?」

「チビ過ぎてサイズ無さそう」

「それは云えてるかも」

「もぉ、またそうやって!身長いじるのやめろよ!」

「‥‥ついてってやろうか、スーツ買うの」

「え‥良いの?」

「ん」

「そうだね。ひっしーに選んでもらったら?」

「うん‥‥じゃあそうする。ありがと、アズ」

「ん」

「裾上げ、“キッチリ”宜しくな」

「うぃす」

「何でそこだけ強調すんだよ!!」

「だから、チビ過ぎんだって。お前は」

「そこへいったら、あっちゃんはスーツ映えるよなぁ。ひっしーも、制服よりスーツの方がキマりそうだね」

「‥大して変わんなくね?シャツとタイとブレザーだろ、制服と大差ねぇよ」

「お前は持ってんのか、スーツ」

「一応」

「そっか‥‥じゃあ、たーもスーツ用意すれば完璧じゃんか」

「え、コミックバンドでいくの?」

「良いんじゃね?楽しそうじゃん」

「統一感あるしな」

「じゃあ、みんなスーツで!」

亜実の結婚話からはやや遠ざかっているが、久々のミーティングは話題に事欠くことなく、いつまでもスーツやら曲目についての話題に花が咲いた

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