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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/17/17:33

131 「Tack.」

 


 

リサの気遣いに後押しされ、ユイは自室に向かった
ドアを開けると、リサの云う通り菱和がいた

「‥アズ」

菱和は椅子に座って机に頬杖をつき、転た寝をしていた
メッシュ混じりの長い前髪が、さらりと流れている

───夕べからずっと寝てないし、疲れてるんだろうなぁ‥‥

夜食や年越し用の蕎麦を拵え、元旦になってからも眠ることはなく、早朝から雑煮を作ってくれていた
現在の時刻は間もなく正午頃───限界を迎えていてもおかしくはない
至れり尽くせり状態であったことに、申し訳なさと感謝の想いが込み上げてくる

静かに寝息が聴こえる
寝顔を見ていると、何だかよくわからないが胸の辺りがそわそわし始める

今は、二人きり───そう意識した途端、心臓が鳴る

連泊していたときに抱いたものと同様の感情に支配されたユイは、そっと菱和に近付いた

その唇目掛け、菱和との距離を詰めていく

 

「──────‥‥まーたお前はそうやって。人が寝てるときに」

目の前から低く嗄れた声が聴こえた
眠っているであろうと思われた菱和の目がぱっちりと開き、ユイはたじろいだ

「───ぅあ!!ご、ごめ‥!」

慌てて身を離そうとしたが間に合わず
逆に菱和から一気に距離を取られ、唇を奪われた
新年初のキスも、不意打ちだった
ユイは項を捕らえられ身動きがとれず、されるがまま立ち尽くした
何度か口付けを交わすと、菱和はユイの顔を覗き込んだ

「‥‥いつしようかと思ってた。ずっと」

機会を窺っていたらしい菱和は意地悪そうに口角を上げた
ユイは赤面し、目を瞬かせる

「あんま人いると迂闊にこういうこと出来ねぇから、二人になれてちょっと嬉しい」

「‥ん‥‥‥‥‥正直云うと、‥‥俺も、したかっ、た‥んだ‥‥」

目を泳がせつつ、心境を吐露したユイ
徐に伸びてきた大きな掌が、紅潮した頬を包んだ

「‥何それ。めんこい」

いじらしくて堪らなくなった菱和はふ、と笑み、再びユイに口付けした
今までのもどかしさを晴らすべく、ユイも夢中で菱和の唇の感触を確かめる

一頻り堪能すると、菱和はユイを膝の上に跨がらせた
不意にぐらつくユイの身体を支えるようにその腰に抱き付き、胸の辺りに顔を埋め、長い溜め息を吐いた
二人の重みで、椅子がぎ、と軋む

いつもよりも、菱和の頭が自分よりも低い位置にある
見慣れない景色ではあるものの、感触や温もりは変わらない
菱和の首に絡み付くように腕を回し、ユイは身を預けた

「‥‥なに、してたの。ここで」

「ちょっと部屋見てた。あんまじっくり見てなかったなーと思って」

「う‥‥もっとちゃんと片付けとけば良かっ‥た」

「ふふ‥‥気にしてねぇよ。‥‥‥‥は‥‥眠みぃ‥‥‥」

「ベッド、使いなよ」

「いや。今横んなったらガチで寝ちまう。‥‥っつうか、今すげぇあったけぇからこのままでも寝れそ」

「それじゃ休まらないじゃん‥‥。てか、全然寝てないし疲れてるでしょ。ほんと、ベッドで寝てよ」

「‥‥一緒に寝てくれる?」

「‥‥‥‥、‥う、うん‥良い、けど‥‥」

「‥‥よくよく考えてみりゃ、今ここに居んのって散々お前の寝顔見てきた人たちばっかだな。俺以外は」

「そ、そうだ‥ね」

「‥‥‥風呂も普通に入ってんだよな」

「そう、だね」

「何だよそれ‥‥すげぇ羨ましい」

「な、んで?」

「だって、お前の寝顔見たり一緒に風呂入ったりするようになったのつい最近だし。やっぱ家族と幼馴染みにゃ太刀打ち出来ねぇな。‥どうしても超えられない壁」

「な、何云ってんだよ‥家族とか幼馴染みとは“好き”の種類が全然違うんだから仕様がないでしょっ」

「‥‥‥‥‥、どう違うんだよ?」

「や、だから‥‥‥‥“寝顔とか裸とか見られるのが恥ずかしい的”な‥好き、だよ」

「‥‥ちょっと何云ってるかわかんねぇ」

「も‥だから、ドキドキしちゃうんだってば!!」

「‥‥自分で云っといてなに照れてんだよ」

「照れるよ!!悪い!?」

「‥‥別に」

「‥笑うなよ!」

「だって‥‥『照れるよ』って、威張って云うから‥‥ふふ‥」

「だっ‥!だから、悪い!?」

「別に。‥めんこい」

「何だよもう‥‥!」

もう、これで何度目だろう
今年も、こんなやり取りを繰り広げてしまうのだろうか
先行きが不安でならないユイに対し、菱和は愉しげにくすくす笑っている
照れまくり狼狽える姿は、やはり“めんこい”───

「‥ユイ。好き」

不意に伝えられた想いに完全に面食らい、ユイは少し間の抜けた顔になる
その頬にキスを落とすと、「もっとしたい」という衝動に駆られる
悪戯にわざとらしく唇を鳴らしながら、菱和はユイの首筋や耳にもキスを落としていった

「‥ぅ‥?‥ちょ‥‥っ」

「‥‥‥うん?」

「ア、ズ‥待っ‥‥」

「‥‥何?」

こんなキスは、知らない
“擽ったい”という感覚は認識できるものの、単にそれだけではない
情欲に塗れた甘美な声と吐息に呑まれそうになる───刺激的で官能的な感覚と音に戸惑い、ユイは身をよじらせた

「‥や‥も‥‥やぁだ、ってば‥っ」

明確に拒否の声を上げると、その刺激はピタリと止んだ

「‥‥‥‥悪い。‥‥あんま可愛くて、つい」

「‥ふうぅ‥‥‥アズの意地悪」

「そんな反応されりゃ、意地悪したくもなるよ」

「む‥‥俺を困らせてそんな楽しいの‥」

「‥好きだからしたいんだ、沢山」

初心な反応が愛おしく、再三照れるユイを意地悪ながらも優しく見遣る菱和
漆黒の瞳に捕らえられると、早鐘が鳴り止まなくなる
菱和の愛情を独り占めしていることがこの上なく“幸せ”と感じる

「‥‥‥俺も好きだ、よ。アズ」

流れる黒髪を梳いてみると、菱和の瞳から意地悪さが消え失せた
ありったけの気持ちを込めて、ユイは菱和の頬にキスをした

「‥‥今年も宜しくお願いしま、す」

「‥こちらこそ。宜しくです」

二人は額を合わせ、暫し二人きりの時間に浸った

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