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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/17/21:16

120 石川家

ユイは2階に、拓真とリサと菱和はリビングにおり、それぞれユイの兄と父の帰りを待ち侘びている
リビングにいる3人が談笑していると、ガチャリと鍵の開く音が聴こえた

「お、帰ってきたんじゃない?」

「私、見てくる」

リサは玄関に向かい、石川家に帰宅した人物を出迎えた
ユイの兄・尊が、白い息を吐きながら入ってくる

「たけにい、お帰り」

「おーリサ、ただいまー。久し振りー。ごめんなー、遅くなって」

出迎えてくれたリサににこりと笑い掛け、尊はドアを閉め施錠した
寒い外気と室内の温度差に、あっという間に尊の眼鏡が曇る

「寒かったでしょ。お茶飲む?」

「おおー、相変わらず気が利くイイ女だなほんと。カレシ出来た?」

「出来てたらここに来てない」

「‥‥何だそれ、哀しい話だな」

「るさいよ、もう」

リサはじとりと睨み付けた
靴を脱ぐのに尊が視線を下に落とすと、見慣れないブーツが目に入る

「‥‥あれ、この靴誰の?アタル?」

「‥‥‥‥菱和の」

「お、噂の菱和くんか。来てくれたんだ?」

「うん。一緒に待ってた」

「そっかぁ‥‥も少し早く帰ってこれりゃ良かったなぁ。雪でバス遅れてさぁ、やんなるわほんと。‥ただいまー」

リサと話しながら、尊が居間のドアを開け放つ

「たけにい!お帰りー!」

拓真がにこやかに、軽く手を振った

 

───‥‥似てる

『顔は似てるってよく云われるんだよ。兄ちゃん眼鏡かけてるんだけど、俺も眼鏡掛けたら兄ちゃんそっくりみたい』

菱和は2、3度瞬きをした
初めて見る尊の顔は、果たして“眼鏡を掛けているユイ”そのものだった

「たけにい、菱和くん。‥ひっしー、ユイの兄ちゃん、タケルさん」

拓真が菱和と尊をそれぞれ紹介すると菱和はすっと立ち上がり、軽く会釈した

「‥‥お邪魔してます」

「っうお!!!でかっ!!」

立ち上がった菱和は悠然と尊を見下ろす背の高さ
尊は長身の菱和を見てたじろぎ、思わず声をあげる

「ちょっと、たけにい。お客さんになんて態度とってんの」

「あ‥‥すいません、初めまして‥‥ユイの兄の尊です。ユイが大変お世話になっております」

「‥‥菱和です、初めまして」

尊は初対面にも関わらず無礼な態度をとってしまったことを詫び、深々とお辞儀をし改めて挨拶をした
菱和もぺこ、と頭を下げた

 

尊は上着を脱いでソファの背もたれに掛け、拓真たちと一緒に座った
曇りで湿った眼鏡をティッシュで軽く拭いて掛け直すと、まじまじと菱和を見つめた

「写真も見たし“でかい”とは聞いてたけど、実物はなおでかく感じるなぁ。菱和くん、身長幾つ?」

「‥‥182です」

「うぉー‥‥でけぇー‥」

「あっちゃんと同じくらいあるもんね」

「今のバンドの平均身長半端ないな‥‥」

「ユイの所為でそんなこともないけど」

「ああ、そうか。‥‥てか、ユイは?」

「2階にいるよ。『たけにいの布団出す』って」

「あ、そぉ。別に自分でやるから良いのにな」

「ふふ、『見られちゃマズいもんでもあったらどーすんの』って云ったんだけどさー」

「そういう類いのもんはここ出る前に全部処分したっての。ばぁか」

二人の会話を聞いて、菱和はふ、と口角を上げる

「親父が帰ってくるまで、これ食って待ってよ」

尊は鞄から“土産”の一つを取り出したが、後ろからリサに取り上げられた

「ユイ呼んでくる。‥お茶入ってるからね」

ちょっとした“猥談”はダイニングにいたリサにもばっちりと聴こえていた
リサにとっては見慣れた風景、聞き慣れた会話であり、『いつものこと』だと思い別段気にする様子を見せず、クールな面持ちのままダイニングのテーブルに土産を置くと颯爽と2階へ上がっていった

「あー‥‥またやっちまった。女の子の前であんな話しちまって、はしたないな」

「そだね、自重しよ‥‥。ひっしーも、お茶飲も」

「うん」

リサが女であることを把握してはいるものの、ついいつものノリで下ネタを喋ってしまったことを拓真と尊は深く反省した
3人はダイニングへと移り、ユイとリサが降りてくるのを待った

 

***

 

リサに呼ばれたユイは尊が帰宅したことを聞き、足早に階段を駆け降りてきた

「───兄ちゃん!」

「ユイ。ただいま」

「お帰りっ!」

ダイニングの椅子に座る尊に、無邪気に後ろから抱き付いた

「おいおい、お茶溢すからやめろっての」

「これ、たけにいのお土産。お茶に合うわぁ」

「お、美味そ!」

尊が用意した“土産”は、柔らかい求肥のようなもので餡を包んだ和菓子だった
リサが淹れた焙じ茶との相性は抜群だった
ユイは行儀悪く、尊に抱き付いたまま菓子をとって口にする

「さぁーて‥‥もうそろ親父も帰ってくっかなぁ‥何食おうか」

「俺、“きなり”行きたい!」

「お、チーズメンチ?良いねぇ、さんせーい」

「リサは“きなり”で良い?」

「私は何でも」

「‥菱和くんは?」

突然話を降られた菱和は、面食らった顔をした
一同が菱和を見守る中、拓真が尋ねる

「ひっしー、揚げ物平気?海老フライとか豚カツとか。“きなり”はさ、チーズメンチがめちゃくちゃ美味いんだよ」

「‥‥そんなに美味いのか、その店」

「うん!絶品!ふふっ。アズもね、きっと気に入るよ!」

「‥‥そっか」

尊は菱和の横顔を見て、ユイや拓真と打ち解けている様子であることに心なしか安堵した

 

「ただいまぁ」

程なくして、父親が帰宅した
皆、一斉にリビングのドアを見やる

「あ、父さん!」

「お帰りー」

「お邪魔してまーす」

「お帰り、おじさん」

歓迎ムードに沸く中、菱和は尊のとき同様に立ち上がって軽く会釈した

「‥‥今晩は」

「うおぉ!ははっ、でかいなぁ!!」

見慣れない長身の姿を目にし、父親は感嘆する
一同は口々に父親の態度や言葉に様々な感想を云った

「‥たけにいと同じ反応」

「ちょっと、親父さん。初対面でしょ」

「親父、お客さんだっつの」

「たけにい。人のこと云えないっしょ」

「‥‥さーせん」

「ははっ!父さん、アズだよ!初めまして!」

「や、ごめんごめん‥‥新しいお友達?尊と唯の父です、どうも今晩は」

ユイの父・辰司は、軽く頭を掻いて気さくに挨拶をした

───血は争えねぇってやつか

菱和はそんな風に思い、軽く口角を上げて会釈した

「‥‥初めまして、菱和といいます」

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