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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/17/20:16

119 石川家

「‥‥俺ね、何となーく、“More Than Words”の意味がわかったかも」

「‥‥‥ん‥?」

「『言葉よりももっと』って意味でしょ?‥‥夕べ、その‥‥‥キス‥したときに、何となく実感した」

「‥そうなん‥‥?」

「‥‥、『好き』、って、云わなくても、伝えられるって、わかったから‥」

「‥‥‥俺が寝てるタイミングで?」

「や、それは‥‥ほんと、ごめん」

「んーん。最初『何事か』と思ったけど、すげぇ嬉しかったよ。‥‥‥でも、どっちもおんなじくらい欲しいかな」

「ぅ‥‥え?」

「‥‥だいぶ前にヌーノのインタビュー記事読んだんだけど、“More Than Words”には結構深い意味があってさ。『“好き”とか“愛してる”とかいう類いの言葉を軽々しく使うから、その“魔法の言葉”さえありゃどんな状況でも修復出来ると誰もが思ってる。でも時には、それ以上のことをして気持ちを表さなきゃいけない。“言葉以外のやり方”も存在する』‥ってさ。‥‥でも“そういう言葉を望んでないってわけじゃない”とも歌ってる」

「その歌詞‥どこ?」

「最初んとこ。‥“It's not that I want you not to say.But if you only knew”。‥‥記事読んだ当時はヌーノが何云ってやがんのかさっぱりわかんなかったけど、今なら俺も少しだけわかる気がするよ。‥欲張りかもしんねぇけど、言葉も、それに代わるものも、両方欲しいな」

「ど、努力しま‥す」

「ふふ‥‥別に無理しなくて良いよ」

「無理じゃない、よ!アズのこと、好きだもん‥」

「‥‥‥好き?」

「‥、‥‥うん」

「‥‥俺も、好きだよ。ユイ」

「‥‥、ふ‥‥‥」

「‥‥これからも、沢山するから覚悟しとけよ」

「ん‥‥‥」

「‥顔、真っ赤」

「だ、って‥!」

「ふふ‥‥‥」

 

2人は寝起きに“More Than Words”の歌詞の意味を振り返り、“言葉以上に伝えられるもの”を存分に共有し合った

 

***

 

ユイは15:00頃まで菱和の自宅で過ごし、帰る身支度を始めた
昨日拓真とメールでやり取りしたことをふと思い出し、『菱和も誘ってみる』と云っていたのをすっかり忘れていた
身支度を整える傍ら、菱和に打診した

「あのさぁ、アズ」

「ん?」

「今日の夜ね、ゴハン食べに行くの、アズも一緒に行かない?」

突然の誘いに、菱和はきょとんとした

「‥‥‥‥、俺が行って邪魔じゃねぇ?」

「何で‥?アズさえ良ければ、一緒に行きたいんだけど」

「‥‥。‥‥‥‥じゃ、お言葉に甘えて。どっちにしろお前を家まで送るつもりだったし、俺も支度するわ」

「‥うん!」

元々ユイを自宅まで送り届けるつもりでいた菱和は、財布と携帯をポケットに突っ込めば支度は済んでしまった
流石にユイの自宅で煙草を喫うわけにはいかないと思い、出掛ける前の一服をする

「忘れ物ねぇ?」

「うん、ない!」

「‥‥ま、あったとしてもすぐ会えるんだろうけどな」

「‥ふふ。そうだね」

時刻は15:30前
二人は揃って玄関に向かう

「そだ、これやる」

「ん?」

靴を履いたところで、菱和はキーケースに付けてある自宅の鍵を外し、ユイに手渡す
鍵を受け取ったユイは、目を丸くして菱和を見上げた

「‥‥貰っちゃって、良いの?」

「鍵あれば、いつでも来れるだろ。俺がいなくても、好きに出入りして良いから」

菱和の部屋の鍵を貰った───自分の生活空間に躊躇いもなく迎え入れてくれる
ユイは、貰った鍵をぎゅ、と握り締めた

「‥有難う」

「ん。‥‥行くか」

「あ、アズ。ほんとに、ほんとーーーに、お世話になりました」

ユイは深々とお辞儀をした
菱和はふ、と口角を上げると、そっとユイを抱き寄せ、額に軽くキスする

「またいつでもいらしてください」

キスする度に、ユイは目を丸くして頬を赤らめる
勿論今も、ご多分に漏れない
少しの間は、したくても出来なくなる───そう思うと益々離れがたくなり、この部屋から出したくなくなってしまう
菱和は名残惜しそうにユイの頭をぽんぽん、と叩き、優しく笑いかけた

 

***

 

16:00を少し過ぎた頃
2人は石川家に到着した
鍵はかかっておらず、既に拓真とリサが待機しているようだった
玄関を開けると案の定、拓真のスニーカーとリサのパンプスがあった

「ただいま!」

「おー、お帰りー!」

「お帰り。寒かったでしょ。‥‥菱和は?」

「いるよ!」

ブーツを履いている菱和は、少し間を置いてリビングに入ってくる

「よう」

「ひっしー!いらっしゃーい!」

「案外早かったね。適当に座ってて、今なんか飲むもの持ってくるから」

「お気遣いなく」

「ひっしーも行くっしょ?飯食いに」

「ああ。家族と幼馴染み団欒のとこ水差しちゃ悪りぃけど」

「そんなこと、なーんも気にしないで良いのに!」

「たけにいにも、ちゃんと伝えてあるから」

「‥‥そっか」

菱和はソファに座り、自分が“イレギュラー”であることはもう気にしないことにした

 

***

 

「あ。俺、兄ちゃんの布団出してくる。押し入れにしまったまんまなんだよね」

「あんま勝手に他んとこいじくんなよ」

「へ?何で?」

「もしかしたら見られたくないもの隠してあるかもしんないじゃん」

「どこに?」

「‥‥‥‥“ベッドの下”、とか?」

「そーそー!」

菱和の一言にけらけら笑い出す拓真
ユイには何故拓真が笑っているのか皆目検討もつかない様子で、軽く首を傾げる

───ベッドの下?何隠すんだよ?点数悪かったテスト?‥‥俺ならまだわかるけど、っていうかそんなんしたことないけど、兄ちゃんに限ってそんなことあり得ないし

「‥‥別にいじくんないよ、そんなとこ。‥変なの」

ユイはきょとんとしたまま階段を上がっていった
見送った拓真と菱和は、思わず苦笑いした

「‥‥‥‥あいつ、マジで鈍いのな」

「ほんとねー。ピュア過ぎてたまにどこまで話して良いかわかんなくなる。‥‥でも願わくば、ユイには永遠にピュアでいてもらいたい」

「それは、無理じゃね」

「いや、わかってんだけどさ。やっぱいずれはそういう知識も身に付くよなぁ、哀しいけど」

「‥‥‥‥‥‥、“いずれは”、な」

その言葉に含みを感じた拓真
ユイに“無駄な知識”を植え付けるのは自分でもリサでもアタルでも尊でもなく、今自分の横で意地悪そうにほくそ笑んでいる菱和かもしれない
そんなことを想像すると、少しだけ背筋がゾクリとした

「‥‥‥やーめーてー、ひっしーいぃ‥‥お願いぃ‥‥」

「安心しな、“今んとこ”はあいつに余計な知恵つける気ねぇから」

「“今んとこ”じゃなくてぇ、俺の願いは“永遠に”なのぉ‥‥頼むよぉ‥‥‥‥」

「さて、どうなるかな‥」

『全ては自分次第』だと云わんばかりに含みを持った笑いを浮かべている菱和は、縋るように懇願する拓真の肩をぽん、と軽く叩いた

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