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2 再会
「改めまして‥‥俵 翔太です。宜しくね」
「“タワラ”って、変わった苗字だね!俺、石川 唯!みんな“ユイ”って呼ぶから!」
「“ユイ”」
「ん!しかしさぁ、すっげぇ偶然だよね!こんな形でまた会えるなんて!」
「ほんとだね、俺もびっくりしてる。ってかさ、流石、バンドやってるだけあってよく通る声してんね」
「いやぁ、それほどでも!」
ホームルームの終わりと共に全校生徒が体育館にて行われる始業式に参加し、再び教室に戻ると休み時間に入る
ユイと翔太は、早速再会を喜んだ
他のクラスメイトもわらわらと集い、先程の大絶叫の謎が解き明かされることとなった
その後は委員決めや席替え等の時間に割り振られており、残りは自習という名の自由時間だった
ユイは再び翔太や他の同級生との雑談に耽り、そのまま下校の時間を迎えた
帰り支度をしながら、ユイが尋ねる
「翔太、どこに住んでんの?」
「日吉町だよ」
「そっかー、うちとは逆方向だなー。日吉ってことは、バス通?」
「うん。ユイは?」
「チャリ。雪降ったらバス」
「なるほど。‥‥今度さ、時間あるときどっか遊び連れてってくんない?まだどの辺に何があるか全然わかんなくてさ」
「うん!良いよ、行こう!‥てか、部活は?やんないの?」
「やらないかなぁ。今入部しても、すぐ引退になるでしょ」
「ああ、そっか」
「ユイは?バンドやってるから軽音部?」
「‥惜しい!“バンドやってるから”、帰宅部!」
「あああー、そっちだったかー」
早くも打ち解ける二人
互いのキャラクターがマッチしているようだ
一昨日の出会いから僅か一日足らずの再会は、正に“運命”と云っても過言ではないのかもしれない
翔太がそう云ったように、ユイもそう感じていた
「ユイー、帰ろー」
和気藹々と話をしていると、拓真が教室の外から顔を覗かせユイを呼び掛けた
拓真の横には、上田も居た
「今行くー!‥ね、翔太!ちょっと来て!」
翔太は、鞄を抱えて拓真たちの下へ向かうユイの後を着いていった
「えっと、拓真と上田!転校生の、翔太だよ!」
ユイは即座に翔太を紹介する
途端に、翔太の目が輝き出した
「‥!Hazeのドラマー‥!と、SCAPE GOATのメンバー!?同じ学校なの!!?」
「え、俺らのこと知ってんの?」
「知ってるも何も、俺マンスリーめっちゃ観に行ってるから!HazeもSCAPE GOATも推しバンド!うひゃー、超感激!俵 翔太です、宜しく!」
興奮度マックスの翔太は、2人に握手を求めた
「それはそれは‥‥どうも有難う。俵くん、だよね。3組の佐伯です」
「4組の上田くんでーす。噂の転校生でしょ?もう仲良くなっちゃったの、ユイってば」
拓真と上田は気さくに挨拶し、それぞれ翔太と手を握り合った
「でね、実は俺らさ、今日が初対面じゃないんだ!」
「え、そうなの?」
「一昨日のマンスリーで、ね。トイレのとこでまたまた会ったんだ」
「うわお、すげぇ偶然じゃん。一昨日会ったばっかのカレが、まさかの転校生だったの?」
「そうそう!また会えるかなーなんて喋ったばっかりなんだよ!一昨日は名前まで聞いてなかったから、翔太が教室入ってきたとき思わず叫んじゃった!」
「‥‥やっぱりホームルームのときの大絶叫はお前だったのか」
「え、聴こえてた‥?や、あんまりびっくりしたもんだからさ、つい叫んじゃって‥‥」
「ユーイ。いちばんびっくりしたのは翔太くんなんじゃないのー?」
「まぁ‥‥思いっきり指差されたし、一瞬時間止まったよね」
「ああ‥ほんとごめん‥‥」
「ううん。俺のこと覚えてくれてて、すっげぇ嬉しかったよ」
にこりと笑む翔太
指を差されたことで気分を害したどころか、自分がユイの印象に残っていた感動の方が勝っていたようだ
そんな翔太の第一印象は、拓真と上田にとっても“良い”と思えるものだった
「───てか、上田。アズは?」
「ん?そういや俺が教室出てくるときにはもう居なかったような。トイレじゃね?」
「あ、そう‥‥‥あんね翔太、上田と同じクラスにもう一人バンドメンバーが居るんだ」
「‥ベースの人?」
「うん、そう」
「あの人もここの学校だったんだ、てっきり赤い髪の人くらいの年だと思ってた」
「ふひひ。見た目老けてるからなぁ、菱和は」
「聞ーいちゃった、聞いちゃったー。ひっしーに、云ってやろー」
「あっ、たっくん、ダメっ!」
「折角だから、アズのことも紹介したいなぁ‥‥」
「終わったらここ通るんじゃない?ちょっと待ってようか。俵くん、時間大丈夫?」
「うん。全然平気」
「じゃあ、菱和が来るまで親睦深めてようぜ。なぁなぁ、翔太はさー‥‥‥」
上田はもう翔太を呼び捨てにしている
四人は暫し談笑し、菱和が訪れるのを待ったが、一向に現れる気配はなかった
用を足すにしては些か時間が掛かりすぎている
既に下校している可能性の方が高いかもしれない───そう思った矢先、ユイの携帯にメールが届いた
送り主は菱和で、画面には「先帰る」とだけ記載されていた
「‥アズ、先帰っちゃったみたい」
「なんだ。トイレじゃなかったのか」
「んじゃま、ひっしーの紹介はまたの機会にってことで」
「そー、だ、ね‥‥」
ユイは少し肩を落とし、溜め息を吐いた
「‥なんか用事あったのかもよ。俺らも帰りましょ」
拓真はフォローしつつ、ユイの背中を軽く叩いた
「‥‥うん。‥翔太、そのうち紹介するから。うちのベーシスト」
「有難う。楽しみにしてる」
「じゃ、行こうぜー」
4人は揃って玄関まで行き、それぞれの手段で帰宅の途に着いた
***
拓真の云う通り、用事があったのかもしれない
もしかしたら、急に体調を崩してしまったのかもしれない
色々と憶測をしてみてもただヤキモキするだけ
帰宅後、何も云わずに帰宅してしまった菱和の行動が気になったユイは「具合はどうか」という内容のメールを送った
程無くして、着信音が鳴る
すぐに返信が来たことに一先ず安堵し、メール画面を開いた
『元気だよ。どうした?』
そこから、暫しやり取りが続いた
「明日、一緒に帰れる??」
『うん。一緒に帰ろ』
「掃除終わったら4組行くね(^^)」
『どこ掃除?』
「教室♪」
『じゃあ俺が行くよ。多分時間かかるから』
「どこ掃除??」
『旧校舎の階段』
「そんなとこ掃除するんだね、知らなかった(^^;」
『俺も初めて知った。だから、待ってて』
「わかった、待ってる(*^^*)あのさ、今日、なんか用事あった?先に帰っちゃったから、気になってたんだ」
『野暮用。言うのすっかり忘れてた。あとちょっと急ぎだったから。ごめん』
「そっか良かった(*´-`)具合悪くなったのかなってちょっと心配だった、何でもないなら良かった(*^^*)」
『心配かけた?』
「ちょっとだよ、ちょっと心配になっただけ(^^;」
『そっか。ありがとう。あとで梅サイダー奢る』
「(*≧∀≦*)ラッキー★☆★」
『スタジオ終わったら、うち来るよな?』
「行きたい!行く!」
『じゃあ、晩飯何食うか佐伯と一緒に考えといて』
「うん(´∀`)b 決まったらまた連絡するね♪」
野暮用があったことを伝え忘れていただけ、体調を崩したわけでもないよう
夕方にはバンドの練習があり、数時間後には否でも応でもsilvitで菱和に会える───それまで、自宅でギターを弾きながらのんびり過ごした
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