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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/02/17:33

Overture-千歳先輩のミニ講座

皆でスタバに行った日の話
 
 
 
明らか頭悪そうなトキとイナ
小柄で可愛らしいヒカルくんと継さん
長身でクールなアオ
スーパーイケメン、千歳さん
そして平々凡々な俺が、続々とスタバに入店する
 
周りの人達が、ジロジロ見てくる
完全に不良グループだと思われてるよね、そうだよね
ちらっと見たら睨まれたと思ってすぐに顔を逸らすけど、またジロジロ見てくる
オネーサンたちは、アオと千歳さんをニヤニヤしながら見てくる
2人とも長身で、アオはミステリアスな感じ、千歳さんはスーパーイケメンだから、特に年上のオネーサマ方にめっちゃ注目されてた
 
 
 
トキはいつも頼んでる杏仁フラペチーノ(現在はオーダー不可)
 
イナはバニラフラペチーノにチョコソースをカスタム
 
ヒカルくんはイナと同じバニラフラペチーノに、キャラメルソースをカスタム
 
アオと千歳さんはホット
 
継さんは新作の何とかフラペチーノ(横文字で長いから忘れた)
 
俺はいつもの、抹茶フラペチーノ
 
それぞれ頼んで、角の席を陣取った
席に着いても注目の的だった
もう、他人のことなんか放っとけば良いのにさ
不良だってフラペチーノ飲むんだっつーの
 
 
 
「ポン、手拭き取って」
 
千歳さんが言うと、継さんが紙ナプキンを千歳さんに手渡した
 
「───“ポン”???」
 
継さんのこと?
何で継さんがそう呼ばれるのか全くわからない俺らは、きょとーんとした
 
「‥‥‥‥?‥‥ああ‥“小さい”って意味。俺チビだからさ」
 
俺らのきょとん顔に気付いた継さんが、ニコニコ笑って教えてくれた
すかさず、ヒカルくんが尋ねる
 
「え、何語っすか?」
 
「アイヌ語」
 
「へえぇー‥‥‥‥じゃあ、“大きい”は?」
 
「“ポロ”。‥俺はそれしか知らねぇ」
 
継さんは、にしし、とはにかんだ
 
アイヌ語で、
ポロ は大きい、ポン は小さい
なるほど、覚えた
皆、こくこくと頷いた
てか、わざわざアイヌ語で継さんに渾名つけるなんて、千歳さん何者なんだろ
 
「───‥‥‥‥“イランカラプテ”」
 
千歳さんが静かに呪文を詠唱した
まさかの魔法使いだったとは‥‥“何が起こるかわからない”系の魔法かな、それってヤバくね?
皆が目を見張る中、千歳さんは澄まし顔で呪文の意味を教えてくれた
 
「‥‥、“こんにちは”って意味」
 
どうやら、呪文じゃなくてアイヌ語だったらしい
皆、盛大に噴き出した
 
「───ぶはっ!!!あはは!びーっくりしたあぁ!!」
 
「マジマジ、パルプンテ唱えたのかと思っちゃった!」
 
「焦ったああぁ‥!何だぁ、挨拶の言葉だったのかぁ」
 
「‥‥本来は、“Hello”みたいに軽い感じでは使われないらしい。改まった機会に男だけが使う言葉だったとか」
 
皆、へえぇーとかふぅーんとか言いながら頻りに頷いた
勿論、俺も
千歳さんて、博識なんだな‥‥他にも色々知ってそうだ
だから、訊いてみた
 
「他に、なんか知ってる言葉ありますか?」
 
千歳さんはコーヒーを一口飲んでから、次々と色んな言葉を教えてくれた
 
「‥‥“アイヌ”は人。“カムイ”は神」
 
「あ、それ聞いたことある!」
 
トキが人差し指を立てて閃いたようなポーズをとった
千歳さんは軽く頷いて、更に続けた
 
「“チセ”は家。“レラ”は風。“ピリカ”は綺麗とか可愛い。“ワッカ”は水。“イコロ”は宝物」
 
「ふえぇ、詳しい!何でそんな知ってるんすか!?」
 
「‥‥‥母親の田舎が、集落があった場所の近くなんだ」
 
なーるほど
 
その昔、北の大地にアイヌと呼ばれる民族が住んでいた
本州から開拓民が渡ってきたことでその生活はどんどん脅かされてしまったとかって、小学校の時に社会の授業で学んだ記憶がある
でもまだ僅かに集落が残ってて、アイヌの伝統を守ろうっていう組織もあるとか何とか
 
「確か、アイヌの人達って色んな物に『神が宿ってる』って考えてたんですよね」
 
アオが言った
何気にアオも詳しいな
イナもその話は知ってたみたいで、頷きながら言った
 
「アミニズム、ってやつか」
 
「あみにずむ??」
 
トキは何もわかってねぇ
 
千歳さんは、アイヌのアミニズムについて丁寧に教えてくれた
 
「‥‥動植物、自然現象、人工物、あらゆるものに神が宿ると信じられてきた。でも条件があって、『固有の能力を有しているもの』、『人間には不可能なことを行って様々な恩恵や災厄をもたらすもの』がそれに合致する。宗教上の神とは違って、人間と対等の存在‥‥‥‥らしい。アイヌ語ってのは文字が存在しなくて、全部口伝えなんだ。アミニズム的なものもコロポックルの伝説も、ずっと口頭で語り継がれてきた話」
 
「文字が、無い‥‥‥?」
 
「‥伝承者が居なくなると、失くなっちゃうんですね」
 
「そう。しかも、標準語ってのが存在しないから地方によって方言とか訛りがすげぇんだと。おまけに母語話者がもうかなり高齢だから、近い将来消滅する可能性が高い」
 
「絶滅危惧種の言語かぁ‥‥なんか、浪漫を感じるなぁ」
 
ヒカルくんが腕を組みながらうんうん、と頷いた
トキは再びなにか閃いたような顔をした
 
「あの。“有難う”って、何て言うんですか?」
 
「‥“イヤィラィケレ”。‥‥でもこれも“Thank You”みたいに気軽に使う言葉じゃないらしい」
 
千歳さんがまた詠唱した
多分、異常回復系の呪文───違う違う、“有難う”だ
今度は、トキが詠唱を試みた
 
「じゃあ、イヤィラィケレ!」
 
「え、いきなり何なの」
 
「いやだって、友達と皆でこんな美味いもん味わえてめっちゃ楽しくてさ、フツーの感謝じゃなくてものっっっそい感謝しなきゃな、と思って!」
 
ああ、そういうことか
っていうか、今使っちゃって良いタイミングなの?
でも、イナもヒカルくんもアオも同じ気持ちだったみたいだ
 
「‥イヤィラィケレ!」
 
「イヤィラィケレー!」
 
トキが杏仁フラペチーノを掲げると、皆揃って乾杯し出した
 
「‥‥くひひ。今度から使うか、“イランカラプテ”と“イヤィラィケレ”」
 
継さんが無邪気に笑ってそう言うと、継さんも千歳さんも乾杯に加わった
 
 
 
「───お兄」
 
気付けば、すばるがいた
背中に何か背負ってる
 
「‥すばる」
 
多分、窓の外からでも目立ってたんだろうな俺ら
 
「すばるちゃん、こんちはー」
 
「こんにちは、ポンさん」
 
継さんの渾名、すばるにも伝わってたのか
継さんと千歳さんって、相当仲良いんだな
 
「すばるすばる、“イランカラプテ”!」
 
トキはしたり顔でついさっき教えてもらった呪文、じゃなくてアイヌの“こんにちは”を詠唱、じゃなくて挨拶した
千歳さんに教わったんだろうことがわかったような顔したすばるは詠唱、じゃなくて挨拶を返した
 
「‥‥、イランカラプテヤン」
 
「わ!一段階進化した!!」
 
「最後になんかくっついてたね」
 
「“ヤン”?“ヤン”って何?」
 
語尾の“ヤン”について盛り上がる俺らを尻目に、千歳さんはすばるの今後の予定を尋ねてた
 
「道場、行くのか」
 
「うん。お兄も来てよ、皆『指導して欲しい』って言ってるよ」
 
「‥気が向いたらな」
 
多分、すばるが背負ってるのは剣道に使う道具か胴着かなんかだ
2人とも、兄と妹の顔になってた
 
 
 
「───“タアンペ ヘマンタ アン”?」
 
すばるが意地悪そうな顔をして、トキに向かって新たな呪文を詠唱した
多分、中の上くらいの強さの炎系の呪文だ
 
「え?え??」
 
「‥‥“これは何ですか”?」
 
千歳さんが訳してくれた
 
「杏仁フラペチーノ、ヤン!」
 
トキはニコニコして、すばるに飲み物を差し出した
受け取ったすばるは、何の躊躇いもなく口を付ける
 
「‥“ヒンナー”」
 
多分、“美味しい”って意味だ
顔が、そう言ってたから
 
「おーいおーい、間接キッスじゃん」
 
継さんが千歳さんに目配せしながら言った
千歳さんは、素知らぬ振りをしてる
 
「そういうの全然気にしないもんね、すばるは」
 
「そこがまた良いけどね、気を遣わなくて」
 
「ほーんと、女子力のカケラも無いもんなー」
 
トキはケラケラ笑った
 
「‥‥‥、“エパタイ”。“アプンノ パイェ ヤン”」
 
「わっ‥冷てっ!!」
 
すばるは満面の笑みでトキの頬っぺたに杏仁フラペチーノを突き返して、俺らに軽く手を振ってスタバから出て行った
また新しい呪文───今度のは、多分闇魔法だ
 
「‥‥今の、なんて言ったんですか‥?」
 
「‥“バカ野郎”。“さようなら”」
 
千歳さんは、少し棘のある言い方をした
皆、一斉に噴き出した
 
「あ、の‥‥すいません、でした」
 
トキは、ついいつもの調子ですばるに軽口を叩いたことを猛省し、兄である千歳さんに謝罪した
 
「‥‥‥‥、事実だから気にするな」
 
千歳さんは薄く笑って、コーヒーを啜った
 
多分、トキだから許されることだったんだろう
てか、この場に居る他の誰がトキと同じようなことを言ったとしても、千歳さんは笑って許してくれたと思う
千歳さんはあんまり感情を表に出すタイプじゃないけど俺らのことは気に入ってくれてるみたいだと、前に継さんが教えてくれた
そして、千歳さんが継さん以外の人間と一緒につるんだり出掛けたりするのは、継さんが知る限りでは初めてのことらしい
スーパーイケメンに気に入られるなんて、光栄の極みでございます
俺も、千歳さんは凄く素敵な先輩であり友達だと思ってる
妹想いだし、長身だし、イケメンだし‥‥あと、何気に優しいんだよな
 
その思いはその後何があっても覆ることはなかったんだけど、千歳さんがほんとはガチで『おっかない人だった』ってわかったのは、も少し後になってからのことだった

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