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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 05/06/20:17

1-3“ALLT③

「いやーオニーサンめっちゃ凄かった!マジ吃驚した!」
 
「最初すげぇ面白い顔して追い掛けてきたから笑っちゃったよね、焦ったけど」
 
「マッスルカーニバルの人かと思ったよ、良いもの見せてもらったぁ」
 
「っていうかお前らも凄いな!あんなやり方されたら店もGメンも真っ青だよ!」
 
 
 
チャリとダッシュ
自分達の勝利を確信しての逃亡劇の末に敢えなく取っ捕まった男子高校生たちと、肩を並べて和気藹々と話す伊芙生
剰え、万引きの手段をベタ褒めしている
どうやら、精神年齢が合うらしい
 
男子高校生たちに力の限り怒号をぶつけた直後、たまたま近くを通りかかった主婦のママチャリを借りて猛スピードで追い掛けた伊芙生
その先には30段ほどの石段があり、男子高校生たちは自転車に乗ったまま恐る恐る階段を下り始めた
 
なにビビってやがんだ、全然怖くないぜ───
 
伊芙生は少し助走をとって階段の一番上からママチャリごと思い切りぶっ飛び、男子高校生たちが一番下に辿り着く前に見事着地を決めて立ちはだかった
男子高校生たちは伊芙生の先回り(?)の刹那、驚嘆と恐怖に戦き次々と衝突して倒れた
借り物のママチャリは着地の衝撃で派手に歪んでしまったが、無惨な姿へと変わり果てたママチャリに引き換え奇跡的に無傷の伊芙生が間髪入れず連行しようとした矢先、男子高校生たちは伊芙生のアクロバティック且つアグレッシブな行動に堪く感動し、そのまま流れるように皆でNäckrosorへと訪れた
 
 
 
「───で、どうやって万引きしてたんじゃ?」
 
「ん、まず二人で店員に話し掛けて、その隙に一人がトイレ行ってタグ剥がして‥‥って感じ」
 
「あとは、皆で一人を囲って周りから見えなくする、とかね」
 
尋ねられた男子高校生たちは、嬉々としてその手口を披露した
 
「ほぉ‥‥自分等で死角を作り出すんじゃな、なるほど」
 
「トイレに持ってかれたんじゃ、店側もたまんねぇな」
 
ボックス席で食後の珈琲を啜る憂樹と蓉典も、万引きの手口に思わず感心し頷いた
無論、感心している場合ではないのだが───
 
「───こらこら君たち、さっきのサラリーマンと女子高生と同じようにその子たちを諭す為にここへ連れてきたんじゃないのかい?」
 
Näckrosor店内で唯一の常識人である迦一が、思わずツッコミを入れた
 
「あ、いやほら、こいつらと同じ目線で物事考えなくちゃいけんし‥‥な?」
 
「ああ、まぁ‥そういうことっす」
 
迦一は目を泳がせて言い訳する憂樹と蓉典の言葉に呆れ、それ以上感知しないことにした
 
 
 
「──てかさ、あんな芸当見ちゃったら万引きなんかどーーーでも良くなっちゃった。スカッとしたよ」
 
「ほんとほんと!実際、万引きよか楽しかった!」
 
「オニーサン、またなんか凄い技見せて!」
 
自分たちが犯した罪を何処へ棚上げするやら、男子高校生たちは目を輝かせて伊芙生へ期待の眼差しを向ける
 
「いやー、さっきのアレはたまたまだし‥‥今度同じことやって怪我しない保証はないから‥‥‥‥」
 
「そうなの?じゃあ、あれってマグレ?」
 
「うん。“ああいうこと”するのは初めてじゃないけど無傷でいられるのはマグレだよ、いっつも」
 
「そうなのかー。‥でもでも、今までマグレだったんなら次も大丈夫じゃね?」
 
「随分軽く云ってくれるなー‥‥‥迂闊に大怪我出来ないんだよ、ぼくわ」
 
「何それ??」
 
「ふふん。俺はな、ウルトラレアブラッドなんだ。 俺の血は希少中の希少種で、高値で取引されてんだぜ」
 
「っぎゃはは!何だよそれ!!!」
 
「オニーサン、実はさっき頭打ったんじゃないの?」
 
「いや、マジだから!これ、ガチのマジ!」
 
ニヒルにキメたつもりが“厨二病”とでも捉えられたのか、伊芙生は男子高校生たちに散々嘲笑われた
 
「‥おい、コソ泥共。今のはほんとの話だぞ」
 
蓉典はのそりと立ち上がってカウンターまで足を運び、伊芙生をフォローしつつその頭をぐりぐり撫で回した
 
「え、そうなの‥‥?」
 
「だから、ガチのマジだって云ったろー?」
 
伊芙生はドヤ顔をし、至極誇らしげにした
 
「そう、なのか‥‥‥‥なんか、すいません」
 
「は?何で謝んの?」
 
「だって、アレでもし大怪我してたらめっちゃやばかったじゃん」
 
「うん‥‥チャリ同士ガチでぶつかったら死ぬらしいしな」
 
「たかが俺ら捕まえるのに死なれでもしたらすげぇ後味悪かった‥‥あー、なんかバカらしくなってきたな」
 
「ああ、ほんと。‥‥‥‥オニーサン、ごめんなさい」
 
「さっき追い掛けてきたとき、大爆笑しちゃってすいませんでした」
 
急にしおらしくなった男子高校生たちを見て、憂樹はくすりと笑った
 
「漸く自分達の立ち位置がわかってきたんか。‥‥まぁ、万引きとぼっくんが怪我するかどうかはまた別の話じゃけん。でも、“そういう結末が待ってるかもしれん”っちゅー危機感は持ってて損はないかもしれへんな」
 
「‥‥はい。すみませんでした」
 
「ん。でも、二度目はないからな。‥‥‥‥あんだけ激チャリしたから腹減ったろ。迦一さん、カツサンドある?」
 
「ああ、今出すね」
 
迦一は冷蔵庫からボリューミーなカツサンドを取り出し、伊芙生と男子高校生たちの前に置いた
序でに、キンキンに冷えたレモンスカッシュをお供に出す
 
「これ食ってから帰んな、超美味いから。俺の奢りだ」
 
伊芙生はカツサンドに一口かぶりつくと、にこりと笑った
 
 
 
***
 
 
 
「よー、良くやったなお前ら。お疲れ」
 
伊芙生たちがカツサンドとレモンスカッシュを堪能し御満悦の男子高校生たちを見送ると、ちょうど、店の奥から菩希と提午が顔を出した
 
「ういーす」
 
「お疲れさん」
 
「迦一さん、珈琲貰える?」
 
「はいはい、只今」
 
菩希と提午が伊芙生と並んでカウンターに座すと、迦一は珈琲を淹れ始めた
店内に、香ばしい珈琲の香りが漂う
 
 
 
今回は、『万引き犯を捕まえて欲しい』と店の人間に懇願されての依頼───万引き犯を現行犯で引っ捕らえてNäckrosorへ連行するまでが、“実働部隊”に課せられた仕事だった
憂樹たち三人は口々に「そんなことは警察に任せておけば良い事案だ」とぶーたれたが、店主はわざわざALLTに依頼を寄越した
その理由は、『明らかにGメンらしき人間が店舗にいるよりも犯人の警戒心が解かれると思ったから』だ
少なくとも憂樹、蓉典、伊芙生の三人は、Gメンや警察官のように万引き犯を取り締まる立場の風貌ではない───憂樹はパッと見チンピラ、蓉典はガラの悪いあんちゃん、そして伊芙生は一回り近く年下の男子高校生にコケにされるほど間抜けな見て呉れだ
 
無論、店主は警察にも相談には行っているが、『防犯カメラのチェックを』『見回りの強化を』とお決まりの台詞を吐くだけだった
 
“来るもの拒まず”、“どんな依頼でも受ける”のが、『何でも屋』の信条───
 
 
 
「───で、チャリぶっ壊したって?」
 
菩希の眉と口の端が、くっと釣り上がった
伊芙生の目が、泳ぐ
 
「あああーあれは、えーと、不可抗力というか何というか‥‥」
 
「までも、結果オーライなんじゃねぇの?」
 
「むー、ぼっくん凄いのぉ。ほんまに怪我無いんか?」
 
「平気す」
 
「チャリの修理代金は給料から天引きな」
 
「‥‥ふぁい」
 
憂樹と蓉典のフォローも空しく
提午は慰めのつもりで、落胆する伊芙生の肩をぽんぽん、と叩いた
 
残りの報告をBGMに
迦一はゆったりと笑み、明日の営業に向けての仕込みを始めた

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