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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/04/23:37

Waitin' ②

古賀とのタイマン後
菱和は駒井と別れ、口元に痣を作った顔のまま漫画喫茶で一夜を過ごした
両親はまだ留守にしており、この顔で帰宅しても誰にも咎められないが、自宅に帰るのが面倒臭かった

深夜3時を回った漫画喫茶は、基本的には静まり返っていた
中には爆睡している客も居るのだろう、鼾が聴こえてきた
何の気なしに手に取ったMR.BIGのライヴDVDと灰皿を持ち、備え付けのPCでDVDを再生する
イヤホンをつけ、煙草に火を点けると、だらしなく椅子に座る
煙草を吹かし、ポール・ギルバートとビリー・シーンの超絶ユニゾンをただぼんやりと眺めた
そのうち、菱和が特に気に入っている曲が演奏された
パット・トーピーのリズミカルなドラミングから始まり、ポールのギターとビリーのベースが重なる
エリック・マーティンのハスキーなヴォーカルが、妙に眠気を誘う

 

“Take Cover”

“逃げ出す”
“隠れる”

 

「言いたいことは言えと人は言うけれど、言葉は出て来ない
頭が働きすぎて、口を閉ざしてしまう
誰か、この魂を救ってくれ
いつも自分に正直でありたいと願ってしまった
想いは片っ端から手離した
誰も気付きやしない
別にそれで良い

身を引くのが賢明な時もある
潜んでればいいだけだ
お願いだから、今のままでいさせてくれ
理解してもらうには、どれほどの時間が必要なんだろう

だけど本当は逃れたい
君の前から姿を消したい
カタがついたら呼んでくれ
それまでは、逃れていたいんだ」

 

飽きるほど聴いた曲の歌詞が、今の自分の心境と重なる
こんな形で心に沁みるとは、思ってもみなかった

 

『菱和さ、MR.BIGも聴くって云ってたよね?何の曲が好き?』

『‥‥“Take Covor”とか、“Daddy, Brother, Lover, Little Boy”とか 』

『おお!“Take Covor”とかシブいねー!“Daddy,Brother,~”なんか兄ちゃんと弾きまくったなー、サビのユニゾン速過ぎでさ!』

『‥兄ちゃん?』

『うん、元々バンドでベース弾いてたの、俺の兄ちゃんなんだ』

『へぇ‥‥』

 

全くと云っていいほど他人に興味なんて無かったくせに
好意を寄せるほど親密に関わってしまった
あいつとこの曲の話をしたことをはっきり覚えてる辺り、未練がましいな
自分の気持ちなんかどうでも良いと思ってたのに、告げられなかった想いがいつまでも頭に纏わり付く

この想いが消えてしまえば、相手の記憶から自分の存在も無くなってくれるような気がする
わざと相手に嫌われるような言葉を選んで突き放したんだ、永遠に伝わることはないんだから

だから早く、消え去ってくれ

 

脱力した菱和の瞳は、ゆっくりと閉じられる
画面の中のミュージシャン達は、菱和が眠った後も演奏を続けていた

 

***

 

2時間ほど眠り、菱和は目を覚ました
DVDは再生が止まり、PCの画面はスクリーンセーバを映し出している
時刻は6時過ぎ
煙草に火を点け、一口喫う
起き抜けの煙草は、無性に美味い
煙草との相性が抜群の濃いブラックコーヒーを飲んで少しだらだらした後、怠そうにシャワーを浴び、菱和は漫画喫茶を後にした

若干口元が痛む
大した威力ではなかったが、古賀から浴びた一発は傷になっていた
シャワーを浴びた際、少し傷口が開いたようだ

夜のうちに浄化されて澄み切った朝の空気は、次第に汚れていく
朝の喧騒に紛れ、菱和は自宅を目指して歩いた
駅に向かい歩いていくと、マンスリーライヴの前夜にユイと2人で話をした広場が点在する通りに出た
菱和はふと思い立ち、そこへ向かった

あの場所でユイと2人で居ると、自分は本音で話すことが出来た
ユイはその言葉を素直に受け止めてくれた
あの時は既に、ユイへの感情は特別なものになっていた
今だって、その気持ちに偽りはない

無人のベンチに、足を放り投げて座る

 

『何だよそれっ!!!どういうことだよ!!?“友達ごっこ”って何だよ!?本気でそんなこと思ってんのか!!今まで遊びで俺らと付き合ってたって云うのかよ!!?』

 

んなわけねぇだろ
“ごっこ”だなんて思ったこと、ただの一度もねぇ
いつだって、本気だったよ
でも、こうすることしか思い付かなかった
そしてそれが最善だと思ったけど
最後の最後に、傷付けちまった───

 

繰り返される、ユイの言葉
届く筈もない、自分の返事

自分を見つめるユイの物哀しい顔が、何度も脳内に再生される

 

───一体いつまで付き纏うんだ、この気持ちは

そんな途方もないことを思い、菱和はぎゅっと胸の辺りを掴んだ

 

「───何してんの」

気付くと、目の前には私服に身を包んだリサが立っていた
ロングのニットカーディガンにコーデュロイのショートパンツ、デニールの濃いタイツに程よく履きこなしたエンジニアブーツ
ボーイッシュなコーディネートが、とてもよく似合っている
そういえば、ここまで来る途中に擦れ違う人間は、サラリーマンや学生よりも私服の若者が多かったように思える

───ああ、今日は土曜か日曜か‥‥すっかり曜日の感覚が無くなっちまってる

「‥‥‥どっか行くのか?粧し込んで」

「カナと映画」

「随分、時間早いな。まだ9時前だろ」

「中途半端な時間からのしかなくて」

「ふーん‥‥」

 

菱和の口元に、まだ真新しい傷がある
リサは、眉を顰めた

「‥‥‥‥喧嘩、したの?」

「ああ」

「‥‥‥‥‥ちょっと見せて」

リサは菱和の横に座り、鞄を漁った
普段から持ち歩いている応急道具が入った小さなポーチを取り出し、消毒液をティッシュに含ませる

「こっち向いて」

大した怪我ではないのだが、リサは手当てをするつもりでいる
菱和はどこを見るわけでもなく視線を落とし、リサの方に顔を向けた
消毒液を含んだティッシュで、傷痕をそっと拭う
先程開いた小さな傷に液が滲み、ピリッと痛む

「‥っつ」

「我慢して」

若干顔を引き攣らせる菱和を尻目に、リサは手際よく消毒をしていく
絆創膏を取り出し、丁寧に傷口に貼った

「はい、出来た」

「‥‥どーも」

リサが普段から応急道具を持ち歩いているとは、クールな印象からはあまり想像が出来ない
学校内に一定数存在する、リサを狙っている男子生徒は、リサにこんな女子らしい一面があることを知らない
その多くは、リサを容姿でしか好んでいないからだ
そんな姿を垣間見てしまう辺り、リサとも親密になってしまったのだと思い、菱和は少し口角を上げた

「‥‥‥‥あいつら、どうしてる?」

「私に訊かないで、ガッコ来れば良いじゃん。嫌でも会えるでしょ、ユイたちに」

鞄にポーチを仕舞ったリサは、ぶっきら棒に言葉を返した

「‥‥そっか」

菱和はふ、と鼻で笑った

初めから、それが出来れば何の苦労も要らないだろう
胸を叩く痛みを抱えることも
ユイや拓真の顔を必要以上に思い出すことも
でもそれをしないのは
出来ないのは
今更戻れる訳がないと諦めているから
顔を合わせるのが
想いを伝えるのが
“怖い”から

逃げたがってんのは、“自分自身”からか───

 

薄ら笑いを浮かべる顔からは、その心情を汲み取ることが出来ない
菱和は今、何を考えているのだろうか

「‥‥‥‥、ユイのこと、嫌いになった‥‥?」

リサの問いに、心がざわつく

 

───そんなわけねぇじゃん

「──────‥‥‥‥好きだよ。ずっと」

 

菱和は、優しく笑みそう云った

 

リサの心臓が、どくんと鳴った

今まで見てきたどの顔よりも、酷く優しい顔
その気持ちまで表れていて
胸の奥が痛くなる
ああ
そうなんだ
こいつはきっと
ユイを──────

 

「ねぇ、あんた‥‥」

「───もう、何も起きねぇから」

「え?」

「何も、心配要らねぇから」

そう云って、菱和は立ち上がった

「‥‥‥‥ありがとな」

穏やかな声で礼を云うと、菱和は呆然とするリサを残して去っていった

伝えたいのに伝えられない、強い“想い”があるということを思い知る
微かに残る菱和の香水の香りを、ユイや拓真と同じように反芻した

 

***

 

菱和の表情が頭に張り付いて離れず、映画の内容はさっぱり頭に入ってこなかった
カナに申し訳ないと思いつつ、軽くランチをした後でカナと別れ、帰宅の途につく
自宅に着いてからも、延々と同じことが頭の中をぐるぐると回る

“ずっと”って、何時からなんだろう
本人に直接訊かないことにはわからないけど、ただ一つわかったのは、“今でも”菱和はユイを想っているということ

切ない、儚い、強い、“想い”───

リサは、ユイの自宅に向かった

 

ユイは自室のベッドに腰掛け、ぼーっとしていた
お気に入りのクッションを抱きかかえ、活気の無い顔を埋めている
大好きなギターは、スタンドに立て掛けられたまま
週末になると欠かさず朝から晩まで弾いていた筈の大好きなギターも、今はさっぱり弾く気になれない

「───今日は弾いてないんだ、ギター」

顔を上げると、リサがドアのところに立っていた
人の気配をシャットアウトするほど、ぼーっとしていたようだ

「‥よ!来たの全然気付かなかった」

「‥‥、ご飯食べたの?」

「うん。‥あれ、今日カナと映画じゃなかったっけ?」

「もう観終わった」

「ふーん。おもしかった?」

「‥よく、覚えてない」

「何だそれ!」

そう笑って話すのは、何時ものユイだ
ただ、

───‥‥空元気

長い付き合いの幼馴染みだ、それくらいは手に取るようにわかってしまう
リサは溜め息を吐いて、椅子に座った

「‥‥あいつとなんかあった?」

「ん?」

「学校、全然来ないでしょ。なんかあったの?」

ユイの表情が、次第に曇る

「───‥‥‥‥、もう俺らとバンドやらないって云われた。俺らと一緒に居たのは、『暇潰し』だったんだって」

「‥あいつが、そう云ったの?何でそんなこと‥‥」

「‥‥わかんない。なんかあるみたいだけど、理由は全然わかんないんだ。‥‥やっぱ、嫌われちゃったかな」

へへ、と笑うユイ
リサは、また胸がちくんと痛んだ

 

「───そんなことない」

「え?」

「‥‥今日、あいつに会った」

「‥‥アズに?」

「喧嘩したみたい。ちょっと怪我してた」

「‥!」

その喧嘩は、自分達を突き放したことと何か関係があるのだろうか
それが、“不利益”の原因なのだろうか
誰かを傷付け、自分も傷付いたのだろうか
ユイは不安そうな顔をして、リサに訊く

「‥‥大丈夫そう、だった?」

「メールでもして訊いてみれば?」

「‥‥‥‥ずっと、無視されてるからさ」

そう云って、ユイは俯いたが、すぐにぱっと顔を上げた

「‥良いんだ!アズが元気ならそれで‥‥」

「───ほんとにそう思ってる?」

「え‥‥」

リサは真っ直ぐ、ユイを見つめた
リサの瞳に写るユイには、無数のはてなが浮かんでいる

拓真同様、ユイが何を考えているのかが手に取るようにわかる
拓真が云った“恋患い”の意味が、漸く理解出来た
ユイが菱和に拘っているのは、ただ単に『友達だから』という理由だけではない
それ以上の、もっと特別な感情を抱いている
だからこそ、どこか遠慮をし、連絡も出来ないでいる
それもその筈───ユイも菱和も、男なのだから

だが、この際そんなことは関係無い───

「‥‥あんたを避けてんのには、絶対に理由がある。理由もなく人のこと避けるなんて、あいつに限って有り得ないでしょ。まさか、あいつがあんたに嫌気さして学校来なくなったとか思ってたの?」

「‥‥‥‥ん‥‥」

顔を伏せるユイに、リサはまた溜め息を吐いた

「───‥‥‥‥あんたがあいつのことまだ少しでも想ってたり信用出来るなら、一つ教えてあげる。あいつはあんたのこと、嫌ってなんかいない。‥‥あんたが“好き”って、云ってたから」

 

漸く口にした菱和の“好き”という言葉は、ユイではなくリサが聴き受けた
その感情に偽りが無いと確信したリサは、それをユイへと伝える
ユイはその言葉がすんなりと受け入れられなく、怪訝な顔をする

「‥‥ほんと、に?」

「私が嘘吐く理由はないよ」

「‥‥‥‥、そうだよね、そんな嘘吐くとか意味わかんないよね‥‥」

ならば、今リサから聞いた菱和の気持ちは、真実と云っても過言ではない
ユイは目を丸くしたまま、クッションに顔を埋めた

「‥‥私は、伝えたからね」

そう云って、リサは立ち上がった

「‥冷蔵庫ん中、なんか入ってる?」

「あ、ああ、何かかんか、適当に‥‥」

「何食べたい?あいつみたいに凄いものは作れないけど、あんたが食べたいもの作ったげる。‥‥下行ってるよ」

リサは部屋から出て、階段を降りていった
菱和の気持ちを伝えたのはお節介だったかもしれないが、ユイの“恋路”を応援したいのはリサも同じだ

───早くガッコ来いっての。‥‥ばかやろー

ユイと菱和が相思相愛だということは、リサはまだ自分の胸に閉まっておくことにした

 

ユイは、抱えていたクッションを更に抱え込んだ

俺は、嫌われてない?
良かった、アズに嫌な思いさせてなかったんだ
でも、じゃあ、何で学校来ないの?
嫌いじゃなくても、会いたくない‥‥‥‥?
俺は、‥‥会いたいな───

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