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21 The Meaning of ××
ピカピカ、チカチカ
カラフルなライトが照らす下
響くタイコと黒い箱
長年連れ添った、向日葵みたいな色をした相棒
遠慮なく、思い切りやらせて貰うよ
掻き鳴らす度に、身体に馴染む音
やっぱり楽しいね
“お前”も、そう思うよね?
これは最高に気持ち良い瞬間なんだ
一度味わったら、絶対抜け出せない
踊るよ
跳ねるよ
まだまだ、まだまだ
一緒に行こう、もっともっと、その“先”へ───
***
興味本位、暇潰し、上田の追っかけ、ただ騒ぎたいだけの奴
様々な目的を抱く生徒達を目の前に、ユイたちは全力で楽しんで演奏をした
ユイと拓真がバンドを組んでいることを知っているクラスメイトはほぼ観に来ており、実際に演奏しているところを観られる数少ないこの機会に、2人が演奏している姿と実力を知り感心していた
ポピュラーな楽曲だったこともあり、ステージは大いに盛り上がった
決して練習時間を多く取れたわけではないのだが、気心の知れた仲間とやる演奏は楽しいことこの上なく、特に大きなミスやズレもなく最後までしっかりと演奏が出来ていた
難易度の低い選曲だったことも幸いし、上田のベースも特に問題なかった
唯一の“ミス”といえば、演奏前にユイのギターの弦が切れたことだった
演奏が終わり、声援に応えながらステージを降りようとしたその時、体育館の入り口辺りに突っ立っている人物が目に入る
ステージ以外の照明が落とされているにも拘わらず、暗がりに立つそれが誰なのか、遠目でもすぐにわかった
───菱和、だ
菱和は壁に寄りかかり、いつものように怠そうに突っ立っていた
いつからそこにいたのか、自分達の演奏を聴いていたかどうかもわからない
今、菱和と目があっているように感じる
保健室での一件が思い起こされる
途端にユイは赤面し、急にギクシャクし出した
そして、ステージを降りる直前で躓きそうになった
「───ぅおっっっ!!?」
ユイの落ち着きの無さを知っている観客は、躓いたのもその所為だと思い『いつものことか』『ギター弾いてる時はカッコイイのに』『やっぱりどこか抜けてる』と野次を飛ばしつつ笑っていた
菱和はユイの様子を見て少し口角を上げ、体育館から出て行った
***
控え室に戻ったユイは、一先ず心を落ち着かせた
自分でも驚くほど、動揺しているのがわかる
数回深呼吸をし、平静を取り戻そうとした
控え室の入り口から、リサがひょこ、と顔を出した
拓真はいち早くリサに気付く
「おーリサ。聴いてた?てか頭痛もう大丈夫なの?」
リサは返事をせず、拓真を見つめている
手招きをし、拓真を呼んだ
「‥‥ちょっと来て」
「ん?何?」
「大事な話。急ぎで」
「お?何よ何よ?」
「あら、たっくんなんか悪いことしたんじゃないの~?」
上田は拓真を茶化した
「何もしてねぇし!てか、まだ片付け終わってないんだけど‥‥」
「片付けならユイと二人でやっとくよ。幾ら幼馴染みでも、近藤サンみたいな可愛いコ待たせるなんて罪深いぜ。早く行ってあげて」
上田は冗談交じりにそう云ったが、リサは若干目を細めた
「そう?んじゃ頼むわ」
拓真はリサに連れられ、体育館から出て行った
ユイと上田は片付けを終え、楽器を持って体育館を出た
並んで歩きながら、控え室に指定されている教室へ向かった
「大事な話って、何だろ」
「さーな。やっぱ拓真なんかやらかしたんじゃないの?」
教室には、誰も居なかった
時刻は正午を過ぎたが、まだまだ校内の活気は衰えず、生徒達はそれぞれ出払っている
ギターとベースを置いた二人は、教室で少しだらだらすることにした
先程のステージの反省点、来年もやるとすればどんな曲がやりたいか、本当に他愛のない話を続けた
「あ、そだ。ねね、上田。さっきの、教えてよ」
ユイは、口煩い拓真が居ないのをいいことに、嬉々として上田に尋ねた
「さっき?‥‥あぁ、キスマークのこと?」
「うん!それ!」
「いやー、教えても良いけどたっくんにお尻ペンペンされちゃうからなー‥‥」
上田はわざとらしくもったいぶった
「えー?教えてくんないのー?」
「‥‥てかさ、お前ほんとに知らないの?言葉も意味も?どういうものなのかも?」
「うん、知らない。初めて聞いた」
「マジかよ‥‥逆にすげぇわ。お前のこと少しだけ尊敬する」
「またそうやって!みんな俺のこと子供扱いし過ぎなんだってば!何で俺だけ!」
「いやいや、そんだけみんなお前のこと心配してるってことっしょ?」
「それは‥‥嬉しい、けど‥仲間外れみたいで、なんかやだ」
上田は、にらにらしているユイが単純に可愛く見えた
ユイの動きや反応が小動物のそれに酷似していると常々思っており、今見せている姿もハムスターか何かに見えた
拓真にほんの僅かな罪悪感を抱きつつ、上田は話し始めた
「‥‥キスマークっつーのは、“恋人同士が付ける印”みたいなもん、かな」
そう云って腕捲りをし自らの腕に吸い付き、わざと内出血を作ってユイに見せた
「ほれ。これがキスマーク。実際はただの内出血だから、こうやって自分でも簡単に付けられる。‥‥まぁ、首は誰かにやって貰わないと無理だけどな」
「‥‥‥‥へぇ。‥で、何で俺はまだ知らなくて良いことなの?」
「はっきし云って、キスマーク付いてんのって結構恥ずかしいことなのね。『夕べはお楽しみでしたね~』みたいな。だから、絆創膏で隠す女が多いんだよ。‥‥でね、お前のそれ、どうしてもキスマーク隠す為に絆創膏付けてるようにしか見えんかったの」
「‥‥でも俺、そんなことされた覚え無いんだけど?」
「ふふ、わかってるよ。そう見えたってだけ。どうせ傷の上から擦ったか掻いたかしたんだろ?」
上田は呆れた顔をした
多少触ったりはしたが、ユイには傷を擦ったり掻いた記憶は無かった
唯一思い出せることは、菱和に傷を舐められて、噛まれたこと───
───“噛まれた”?
あのとき、噛まれたのだとばかり思っていた
よくよく思い返してみると、噛まれたというよりは“吸われた”ような気がしないでもない
事実、菱和はユイの首筋にキスマークを付け、リサはその上から絆創膏を貼った
上田がユイの首に貼られた絆創膏に対して抱いた印象───首筋のキスマークを隠す為に貼ったものであるという解釈は、強ち間違いでは無いということになる
ユイが神妙な面持ちでいることに気付き、上田はその顔を覗き込んだ
「? どうしたん?」
「‥‥‥‥なんでも、ない」
ユイは、何故菱和があんなことをしたのかを考えていた
『恋人同士が付ける印』
上田の話を聞く限り、“それ”今の自分と菱和の関係性において刻まれる可能性はほぼ皆無に等しいと思った
菱和はクラスメイト、友達の筈だ
なのに、恋人同士がするであろう行為を、何故自分に───?
「‥‥ね、キスマークって、友達に付けたり‥‥‥しないよね?」
ユイの素直な疑問に、上田は噴き出した
「お前、何云ってんの?そんなのあるわけないじゃん!拓真とか俺に、“こんなこと”したいと思う?」
上田は先程自分の腕に付けて見せたキスマークの痕をユイの目の前に翳した
心なしか、さっきよりも色が濃くなっているように見えた
ユイはゆっくりと首を横に振った
「だろ?‥‥もし友達にそんなことする奴が居るとしたら、多分そいつは友達以上の特別な感情を持ってるってことになるんじゃない?」
「特別な感情、って?」
「キスマーク付けるってのは、独占欲の現れだから。『こいつは俺のもの』っていう印」
“独占欲の現れ”
“自分のものであるという印”
いずれも、ユイにはピンとこなかった
少なくともユイ自身は、自分に対する菱和の“特別な感情”は微塵も感じたことが無い
剰え、ユイは自分の鈍さに対する自覚がほぼ無いようなものだ
こと恋愛に関しては、拓真もリサも『こいつは将来無事にお嫁さんを貰えるんだろうか』と本気で心配するほどに疎い
上田の話を聞けば聞くほど整理がつかなくなる
自分と菱和は友達
でも友達にキスマークをつけることは普通のことじゃないらしい
なら、どうして?
それに、どういう意味が‥‥?
ただ只管に、そのことだけが頭の中を駆け巡っていた
───このままずっと考えていたら、知恵熱出そう
「‥‥あ、てか俺がここまで話したの、拓真には内緒な。お尻ペンペンどころかタイキックでも喰らいそうだわ」
「‥‥うん。云わない。教えてくれて有難う。‥‥‥‥てか上田、そういう話詳しいね」
「まぁな。自分で云うのも何だけど、俺結構モテるから」
全く嫌味なく、さらりとそう云った上田
ユイは、万が一自分が恋に落ちたり、まかり間違って自分に彼女が出来た時は上田に相談しようかと考えていた
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