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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/05/02:34

17 Indirect Kiss

教室で休憩をとる、ユイのクラスの生徒たち
キンキンに冷えたドリンクに、ポテチやチョコなどの菓子を口にし、談笑に耽る
中には、肉まんやチキンなどのホットスナックを頬張る生徒もいる
どれも日常とはかけ離れた特別な感覚で味わうもので、何故だか一層美味しく感じてしまう
 
ユイはカナにロイヤルミルクティーと、ほんの詫びの気持ちを兼ねて一緒に買ったポッキーの箱を渡した
他の生徒たちが談笑する中、直ぐ様屋上へと駆けて行った
 
 
 
空はうっすらと赤く染まり、陽が傾き始めている
屋上の扉を開けると、菱和の姿があった
何時ものように、怠そうに座り込んでいる
カナが云っていた通り、菱和はいつもの場所に居た
そのことに何となく安堵し、ユイは菱和に駆け寄り声を掛けた
 
「やっぱここに居た!教室戻ろうよ」
 
「‥‥今日はもういい。もう少し涼んだら帰る」
 
「え?‥‥‥‥えぇー‥‥」
 
残念がるユイを尻目に、教室に戻る気など微塵も無い菱和は少しも動こうとはしない
ユイは仕方なく、菱和の隣に座り込んだ
 
「‥‥楽しくない?」
 
「そんなことねぇよ。‥‥楽しいよ」
 
「‥でしょ?」
 
ユイは満足げに、にこりと笑った
 
他人と関わりを持つのは、本当に面倒臭かった
誰もが恐れてきた自分の姿
それにビビるような奴らなんて、相手にしてても仕様がない
だから今まで遠ざけていた
会話はおろか、誰かと一緒に過ごすことなんて、これから先も無いんじゃないかと思ってた
でも違った
人の顔を見ては、何かと笑顔で話しかけてくる奴が居る
何の自覚も遠慮もなしに、ずかずかと、土足で他人の領域に入ってきやがる
別に嫌な訳じゃない
寧ろ、あの騒がしい雰囲気も会話も楽しんでいる自分がいる
よく飽きもせず俺に構ってくること
そうだよ、“わざわざ”“俺と”関わってくるなんて
行く宛を捜してまで一緒に居るなんて
一体何なんだろう
何が、そうさせてるんだろう───
 
 
 
「‥‥飲まねぇのか、それ?」
 
ユイの手には、同じドリンクが2つあった
 
「あぁ、忘れてた‥‥はい!菱和の分!何が良いかわかんなかったから、俺と同じやつだけど。今さ、休憩がてら買い出し行ってきたんだー」
 
ユイはペットボトルを菱和に手渡した
ラベルを見てみると、以前コンビニでユイが“俺のジュース”と宣言した桃のフレーバーティーだった
 
キャップを開け、一気飲みするユイ
仄かに甘い紅茶が喉を通り、飲み干した口の中にほんのりと桃の香りが漂った
慣れ親しんだお気に入りの味だ
3分の1ほど一気に飲み干し息を吐くと、菱和は少し汗をかいたペットボトルを見つめていた
 
「‥‥、これじゃない方が良かった?」
 
少し不安げに顔を覗き込むと、菱和はユイが持っているペットボトルを指差した
 
「‥‥それちょうだい」
 
「‥え、これ?飲みかけだよ?」
 
「‥‥わかってる」
 
いまいち要領を得なかったが、ユイは菱和に自分のペットボトルを手渡した
 
菱和はペットボトルを受け取ると、ユイと同じように一気飲みをした
立て続けにごく、と鳴る喉
琥珀色の液体が、その喉を潤しながら通る
ふ、と息を吐き、親指で軽く口唇を拭った
 
ただ飲み物を飲んでいるだけのその姿に、ユイは何故か目が離せなくなっていた
 
 
 
「これ、やるよ」
 
菱和は、先程受け取った未開封のペットボトルをユイに差し出した
 
「え?」
 
「‥‥俺の分持ってきてくれたお礼。帰ってからでも飲めば」
 
ユイはきょとんとした
人付き合いに関してはユイよりも不器用な菱和が時折見せる何気ない優しさ
それに触れているとわかり、みるみる嬉しくなった
 
拓真、リサ、カナ、そして菱和
自分の周りに居てくれる友達の顔を思い浮かべながら、穏やかに笑った
 
「───菱和ってさ、優しいよね。‥‥俺の周りは、優しい人ばっかりだ」
 
 
 
自分が優しいと思ったことなど、一度もない
だが、そう感じている奴が隣にいる
ユイは、自分の想いを素直に言葉に出来る
感じるままに言葉に出来ることを、羨ましいと思える
ユイが本音を吐露したことで、菱和も感じたままの心を口にした
 
「‥‥それは、人徳なんじゃねぇの」
 
「人徳?‥俺の?」
 
「何の見返りも求めないで“誰かに何かしてやりたい”って思う気持ちは、そんだけ相手のこと大事だって思ってなきゃ湧いてこないだろ。だから、そう思わせる何かがある‥‥ってことなんじゃねぇのかな」
 
無愛想だが、実直に話す菱和
今までのユイを見ていて、周りに“何の見返りも求めず優しくしてくれる人間がいる”ということはわかっていた
それは、ユイが自ら構築した人間関係から生まれてきたものだ
 
無愛想に自分のことを話す菱和の横顔に、既視感を覚える
いつも無愛想にしているが、その裏に隠れた優しい心
気恥ずかしさや照れを隠すような一見冷たい態度
 
その不器用な優しさを、ユイは知っている
 
───リサと菱和って、似てるな
 
ユイの心が、綻んだ
 
「菱和が優しいのも、俺の人徳のお陰?」
 
「‥‥、そうかもな」
 
「‥そっか!」
 
ユイは、にしし、とはにかんだ
 
 
 
つまらなかった筈の学校
うざったかっただけの喧騒と笑い声
誰かと一緒に過ごす時間
下らない冗談
好みの音楽
他愛もないものを共有すること
重いだけの簡素な音とぴったりと重なった賑やかな電子音
それを引き連れる、細い金属の線を滑る指
同調するかのように湧き高鳴る心臓
全ての感情を排除し、昂揚する頭の中
放課後の匂い
吹き抜ける風に微かに混じる、他人の体温
いつもと少し違う紅茶の味
 
すっかり脳裏に焼き付いた、純真無垢な笑顔
 
“毒されてく”
 
 
 
全て、ユイが菱和に齎したものだった 
 
 
 
同じ飲み物を共有した二人
菱和との距離が縮んだことを、ユイは真の意味で理解していなかった

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