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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/04/21:48

92 Beginner

バンドの方針として、テスト期間になるとスタジオ練習は“お休み”になる
バイトのシフトが増えたとはいえ、拓真も時間があればユイの勉強を見てやった
時にはリサも交えて4人で勉強会を行い、ユイは“平均点以上”を目標にひたすら机に向かった
此度の試験期間中は、今までの自分の記憶に無いほどの時間を勉強に費やした
その甲斐もあってか、ユイは全ての科目で平均点を超えることが出来た
一番苦手だった数学も大幅に点数が上がり、ドヤ顔で拓真と菱和に答案用紙を見せて寄越した
下校途中、ユイと拓真と菱和は並んで歩きながらそのことについて話す

「何にしてもお疲れさんでした。ほーんと、奇跡みたいな点数ばっかりだったな」

「んっふふー。俺、“やれば出来る子”だった!」

「‥‥何で今までちゃんとやってこなかったのか不思議でなんねぇわ」

「う‥耳が痛い‥‥」

「いやー、ひっしーの教え方が上手いんでしょ」

「そんなことねぇよ」

「またまた、謙遜しちゃってさ。とにかく、有難う御座いました。これで俺も心置きなくバイトに勤しめるわ。今日も稼ぐぞー」

「何だよ、折角試験終わったんだからスタジオ行こうよ?」

「試験終わったからこそバイトだろー。冬休みに向けてガッツリ稼がなきゃさ」

「むー‥‥!」

「そう膨れるなって。スタジオ行く代わりに、ひっしーになんか“ご褒美”でも貰ったら?」

「“ご褒美”‥‥?」

「今まで作ってもらったことないものご馳走になる、とかさ」

「あ、それ良い!っていうか、そんな話聞いたらめっちゃ腹減ってきた!」

「‥‥じゃあ、このままうち来るか?」

「うん!アズんちのギターも触りたいし!」

「したら、行くか」

「俺はバイト行ってきまー。また明日ねー」

「気ぃ付けて」

「バイト頑張ってね!ばいばーい!」

ユイと菱和はバイトへと気持ちが逸る拓真と別れ、菱和の家に向かった
その道すがら、菱和はユイに尋ねる

「何食いたい?」

「ずっと考えてたんだけど、今結構腹減ってるから何でも良い!」

「あっそ‥‥」

ギターと食事にわくわくしているユイを尻目に、菱和は冷蔵庫の中に何が入っていたかを思い出しながら歩いた

 

***

 

帰宅するなり、菱和は煙草を喫い始める
ユイは菱和のギターをケースから出すと胡座をかき、アンプに繋がずそのまま爪弾いた
煙草を喫い終えた菱和はユイの下へ行き、頭を軽くぽん、と叩いた

「これで心置きなく弾けるな」

「うん!めっちゃ弾く!俺のギター全然触ってないし、おまけに先にアズのギター触っちゃったからきっと機嫌悪くしてるよ!」

「‥‥妬きもちか」

「そうそう!でもこれほんとだよ、ちょっとでも触んないと拗ねてキーキー云うんだから!」

「ふーん‥‥」

───ほんとに好きなんだな、“相棒”が

心底楽しそうな顔をするユイを見て、菱和はそう思った

「それにしても、ほんと勉強頑張ったな」

「アズのお陰だよ、ほんとに有り難う!逆に俺が“ご褒美”あげたいくらい!」

菱和にありったけの感謝を気持ちを込め、ユイはニコニコ笑った

 

“ご褒美あげたい”

そのワードを聞き、菱和はボソリと呟いた

「──────‥‥“ちゅー”するか」

ユイは怪訝な顔をして、首を傾げる

「‥‥、“ちゅー”‥‥‥?」

「ん。“ご褒美”」

そう云って、菱和はユイからギターを取り上げ、スタンドに立て掛けた
そしてユイの顎を掴み、顔を近付ける

“ちゅー”がキスのことであると認識したユイは、途端に慌てふためく

「‥ちょ、ちょっと待って!!」

「何が」

「や、『何が』じゃなくて!」

「‥‥‥‥あぁ。初めて、か?」

「初めて、ってか、初めてだけど‥‥‥‥って、そうじゃなくてっ‥!それはさ、どっちに対する“ご褒美”なの‥!?」

「‥‥‥‥、お前にとってどうかは知らねぇけど、俺には“褒美”の価値あるよ」

真顔でそう話す菱和
ドキリとするその間にも、菱和との距離が無くなっていく

「は‥!!?いや、まっ‥‥!」

「大丈夫。俺もお前にすんのは初めてだから」

「あ、当たり前だろっ!されたことないんだからっ‥‥」

「だから今するって。‥‥ちゃんと出来ねぇ、動くな」

顎を持つ手に力が入ったのが伝わる
それと同時に、脈がより早く打つ
ユイは固まり、動けなくなった

 


ヤバい
これ、“マジのやつ”だ
え、なに‥俺このままアズとキスしちゃうの?
いずれは“そういうこと”もするのかなーと思ってたけど、今なの?急すぎね?
どうしよ、まだ心の準備も出来てないのに‥‥
てか、顔、近っ!!
ヤバいヤバいヤバい───

「───っ!!」

ユイはぎゅっと目を瞑り、唇を固く結んだ

 

「──────っく‥‥っ‥‥‥‥はは‥‥!」

待てど暮らせど何の感触も伝わってこない代わりに、菱和の“笑い声”が聴こえた
こんなにはっきりと菱和の笑い声を聴くのは、初めてのこと
そっと目を開けると、切れ長の垂れ目はより細くなり、肩を震わせ、歯を見せて笑っている菱和の姿がある
菱和のこんな顔を見るのも、初めてに等しい
いつもの菱和の笑みは、少し口角が上がる程度の小さいものだ
その顔も、その声の高さも、初めて目の当たりにするもの

───‥‥こんな風に笑うんだ‥

無邪気に笑う菱和の姿に、目を奪われた

「‥ふ‥‥っ‥く、はははは‥‥!」

可笑しくて堪らない様子の菱和は髪を掻き上げ、未だ声を出して笑っている
ユイはなかなか笑いが収まらない様子に戸惑い、菱和の顔を覗き込んだ

「あ、アズ‥‥?」

「───お前、超めんこい。‥‥でも、そんな顔されたらめっちゃやりづれぇ」

菱和はくく、と笑いながらユイの頭を撫でた

「‥な‥‥あ、う‥‥‥‥ごめ、ん‥‥なさい‥‥」

「‥‥ユイ、おいで」

ユイは促されるまま、菱和の腕に収まる

「‥‥ハグは、平気なのな」

「‥んん、決して平気な訳じゃないんだけど‥‥」

「‥‥‥嫌だった?」

「嫌じゃない、よ‥!いきなりだったからわけわかんなくなって混乱しただけ!」

「そっか‥‥ちょっと安心した」

「‥え‥‥何で」

「だって、あんな顔するから本気で『嫌なんだ』と思って。‥‥でも、マジで可愛かった」

───ああもう、爆発しそう

恋愛経験が皆無な自分にはキスなど土台無理な話だ
菱和の顔も、身体も、吐息も鼓動も、何もかもが近くて、それだけでも破裂しそうなくらい緊張してしまう
しかし、菱和が“そういうこと”をしたいと想ってくれているのは素直に嬉しいこと

「‥‥嫌なわけじゃないんだ、ほんとに。でも、俺にはまだハードルが高過ぎるっていうか‥‥‥‥」

ユイが恥ずかしがっているだけだということは、菱和も充分理解した
他の場所ならばいきなり唇にするよりハードルが低く、幾分か緊張も紛れるかもしれないと思い、菱和はユイの唇を指差した

「‥‥‥‥あのさ、“ここ”じゃなかったら、良い?」

ハードルを下げてくれたことに『申し訳ない』『情けない』と思いつつも、ユイは頷いた

「‥‥‥、ん」

 

菱和はふ、と笑むと、ユイの前髪を上げて額にそっとキスをした

 

『一体どこにされるのだろう』とおっかなびっくりだったユイは、あまりにすんなりと済んだことに少し拍子抜けした

「‥‥‥お前の番。‥‥どこでも良いから、お前の好きなとこにして」

そして、顔を覗き込まれまた心臓が鳴る

「‥‥、‥‥‥‥」

漆黒の瞳に見つめられると、吸い込まれそうになる

この眼差しも、初めて落とされたキスも優し過ぎて
その優しさを一人占めしてるのが不安になるくらい嬉しくて
耳障りな鼓動だけが動いてるみたいで
思考が止まりかける

───っていうか“キスそのもの”が俺にはハードル高いんだよ‥‥や、ちゃんとやんなきゃ。アズはしてくれたんだから

早鐘は止まぬままだが、ユイは決心した
しかし、『どこでも良い』と云われても困り果ててしまう
思い悩んだ挙げ句、ユイは徐に菱和の手を取った
ギターよりも弦の太いベースを弾く、細く長い指
固くなったその指先に、軽く唇を押し付ける

 

──────そういや少し前、顔真っ赤にして“好き”って云ってたっけ。‥こいつらしいな

ユイのいじらしさに柔らかく笑み、菱和はたった今キスをされたその手でユイの頭を撫でた

「‥‥‥ありがと」

「‥‥‥‥、ごめん‥‥」

「何で謝んの?」

「く、唇じゃなかったから‥‥」

「場所なんてどうでも良いよ。お前が“そういうことしてくれた”ってのが、一番嬉しい」

「ほん、と?」

「うん。ちょっと、意外な場所だったけど」

「‥‥ごめん、ほんと慣れてなくて‥‥」

「‥慣れてたらそれはそれで複雑だわ。‥‥っつーか正直、俺も探り探りだから」

「そ、なの?」

「そうだよ。‥多分、好きだから余計に」

菱和はぎゅ、とユイを抱き締めた

「‥‥‥手も繋ぎてぇし、キスもしてぇなって思うけど、かといって、無理強いする気はねぇから。お前が嫌がるようなことは絶対しねぇ。‥‥きっとそのうち何もかも普通に出来るようになるだろうから」

 

菱和の心臓の音が聴こえる

自分の早鐘よりも、ゆっくりと、深く、静かな鼓動

余裕綽々な菱和と今にも爆発してしまいそうな自分
『慣れている菱和』と『不慣れなユイ』というアンバランスな構図の2人だが、菱和とて恋愛経験が豊富というわけではない
経験の有無など関係なしに、自身の気持ちに素直に従っているだけだ

「‥‥アズ」

「ん?」

「‥‥‥‥俺、のこと、‥好、き?」

「うん。好き。‥‥慌てたり照れたりしてるお前も、可愛くて好き」

「な、ん‥!!」

先行きを不安に思うユイは堪らなく『自分を好きか』などと尋ねたが、即答され案の定照れまくる

───あーあ、なんかこれ癖んなりそ

照れるユイを余所に、菱和はくすくす笑いながら『つくづく自分は“S”だ』とぼんやり思った

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