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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/04/21:49

90 核心

夕食後のんびりと過ごした3人は、20:00を目処に帰宅することにした
菱和は最寄りのバス停まで3人を見送ることにし、玄関を施錠した
拓真とリサが話しながら先を行き、ユイと菱和がその後ろを歩く
菱和は息を吐き、ユイに云った

「‥‥‥‥あっちゃんにさ、」

「ん?」

「話しときたいと思って。‥‥俺らのこと」

「え‥‥」

「佐伯ももうわかってるし、バンドの中ではわざわざ隠す必要もねぇんじゃねぇかな‥って。‥‥っつうか、遅かれ早かれあっちゃんにもバレるだろ。俺は隠せる自信あるけど、お前は‥‥‥‥」

そう云って、ちらりとユイを見る
途切れた言葉の続きを、聞くまでもない
恐らく『絶対無理だ』といったところだろう
そんなことは、わかっているが───

ユイは目を細めて、唇を尖らせる

「‥‥どうせ俺はすぐ顔に出ますよっ」

「いや、全然それで構わねぇんだけどさ。悪い」

自分の思惑が無事伝わったとわかり、菱和はくすっと笑った

「むー‥‥‥‥てか、拓真にも云われたけど、やっぱ俺ってわかりやすい?」

「‥‥俺よりはずっとわかりやすいんじゃねぇの。俺と比べるのも何だけど」

「そうだね‥‥、アズと俺とじゃ比較対照になんないなぁ」

「‥‥‥‥どうせ無表情ですよ」

菱和はユイの真似をしてわざとらしく唇を尖らせた

「あ‥‥ご、ごめ、ん‥」

「別に。ほんとのことだし。‥どうする?‥‥バレるまで、黙っとく?」

「‥‥‥‥、‥‥ううん。‥‥アズのこと好きだって、あっちゃんにもちゃんとわかってて貰いたい」

「‥‥じゃあ、あっちゃんに連絡しとくわ」

「お願いします」

 

その日の夜、菱和はアタルに『話がある』と連絡をとった
ユイと2人で自宅を尋ねたい旨を伝えると、アタルは自分の都合を菱和に教えた
アタルが指定したのは3日後の夕方
菱和はそれをユイに伝え、その日を待った

 

***

 

アタルの自宅を尋ねる日
放課後、ユイと菱和は私服に着替え、アタルの家に向かった
時刻は17:30を過ぎていた
陽はすっかり短くなり、辺りは既に暗くなっている

「‥‥寒みぃな」

「うん、寒いねー」

空気はぴんと張りつめ、吐く息は白く、今にも雪が降りだしそうな冬の寒さ
ボトムのポケットに手を突っ込んでいた菱和は、唐突にユイの手を取った

「───ぅわっ‥!」

「“なまらしゃっけぇ”じゃん」

そう云ってそのまま、ユイの手をぎゅっ、と握る
突然のことに驚くも、『せめてこの道程の間だけでも』と、菱和の優しさに甘えたくなる
無骨で暖かい菱和の手を、握り返した

「‥‥あったかいね」

「だろ」

2人は手を繋ぎ、並んで歩いた

 

「───何でぇお前ら、手なんか繋いじまって。“ナカヨシコヨシ”か?」

アタルの自宅を目前に、後ろから聞き覚えのある声がした
振り返ると、煙草を咥えたアタルが興味深そうな顔をして立っていた

「! あっ、ちゃ‥‥や‥、手、“しゃっこかった”から‥‥‥‥」

アタルに何を話に来たのかを考えると、菱和は手を繋いでいるのを目撃されたことを気にしなかったが、ユイは気恥ずかしそうな顔をした

「‥‥煙草買いに出てた。ちょうど良かったな、入れよ」

アタルは穏やかな顔で2人を自宅へと招き入れ、手を繋いでいたことを茶化すこともなく颯爽と中に入った

 

***

 

ユイは菱和をアタルの部屋に案内した
自室で煙草を喫っていることもあり室内はかなりヤニ臭いのだが、真新しい吸い殻が2本ほど入っている灰皿と、大学の課題と思わしきレポート用紙がテーブルの上にきちんと置かれていた
ゴミ箱の中はほぼ空で、ベッドも綺麗だった
飾り棚にはリキュールの瓶とカクテルグラスが並び、その隣には簡易冷蔵庫がある
部屋の隅には、メインで使っている真紅のSGがスタンドに立て掛けられている

───あっちゃんって案外几帳面なんだな‥‥

菱和は、そわそわしつつテーブルの脇に座るユイの隣に座り、室内をしげしげと見回した

 

アタルはコーヒーの入ったマグを3つ持ち、部屋に入ってきた

「手ぇ繋ぐくれぇだし、仲直りしたみてぇだな」

そう云ってテーブルの上のレポート用紙を除け、2人の前にマグを置く
菱和は少し口角を上げ、軽く頭を下げた

「‥‥迷惑かけてすみませんでした」

「全くだよ。お前、来年から酒付き合えよな。それでチャラにしてやるよ」

「はい。‥‥バンド、続けても良いすか」

「愚問だ。俺らは端からお前を手離す気なんかなかったんだからな」

アタルはにこっと笑った

 

バンドメンバー全員が、自分を待ってくれていた

そのことに多大な感謝をし、菱和は深く頭を下げた

 

「‥‥‥‥で?『話』ってのは、それで終わりか?」

アタルは2人の顔をそれぞれ見ると、コーヒーを口にした

「ん‥‥んと、ね‥‥‥‥」

『アタルにも自分達のことを知っていて欲しい───』

本題を話したいのだが、ユイはなんと云って良いやら、どこから話せば良いのかわからずもじもじとし出す

「‥‥俺が話すよ」

見兼ねた菱和はユイの頭をぽん、と叩いた
『情けない』と思い顔を伏せつつも、ユイは出だしを菱和に任せることにした

「───‥‥今からめっちゃぶっちゃけますけど、ちゃんと聞いて欲しいす」

「おう。何でも来い」

アタルはマグを置き、菱和の目を真っ直ぐ見る

「‥‥‥‥こいつのこと、好きなんす。‥‥友達としてじゃなく、“特別”に」

菱和はユイの頭を撫でながら云った
恥ずかしそうに顔を伏せるユイと至極真面目な菱和の表情を見て、アタルは2人の顔を覗き込んだ

「‥‥冗談‥‥‥じゃ、ねぇんだよな?」

「マジです」

「‥‥‥‥そんで、ね、拓真に云われて気付いたんだけど‥‥俺も‥‥‥‥」

ユイも、恥ずかしそうにしながら口を開いた
続きの言葉は、口にするまでもなく菱和と同じ内容だ

「‥‥つまり何か?お前ら“そういう”関係になったってことか?」

アタルの問いに、ユイも菱和も軽く頷いた

 

「───ぶはっ!っははは!!何だよそうなんかよ!いつの間にそんな話になってんだよ!!」

アタルは突然笑い出した

「‥‥一週間くらい前、から」

「そうかよ‥‥くく、‥ふははは!!超面白ぇなお前ら!!」

大声で笑うアタルの態度に若干苛つき、ユイは顔を赤くした

「‥笑い過ぎだよ!!あのねぇ、俺らふざけてるわけじゃないんだけど!?」

「わーってるよそんなこと!‥‥悪りぃ悪りぃ、別にバカにして笑ったわけじゃねぇから。‥しっかしまぁ、仲直りどころかくっ付いちまうとはなぁ‥‥ははっ」

指で軽く目尻を拭い、アタルは笑うのをやめた
ユイは押し黙り、唇を尖らせる

「‥たーはもうわかってんだよな?」

「うん‥‥でも、あっちゃんにも知ってて欲しいと思って」

 

───どんだけ勇気持ってうちに来たんだか‥‥打ち明けづらい内容の話だったろうに

今のユイと菱和の関係性は、万人には受け入れられ難い状況だ
2人がわざわざその報告をしに訪ねて来たことを、アタルは嬉しく感じた

「‥‥‥そっか‥。‥‥そういう気持ちは大事にしねぇとな。‥‥‥‥愛情に性別は関係ねぇからな、たーと俺の前では、堂々としてろ」

「‥‥うん」

「はい」

“愛情に性別は関係ない”

それはアタルの信条で、拓真が云っていた通りアタルは偏見を持っていない様子だった
2人は『話して良かった』と安堵し、アタルの言葉に頷いた

 

「‥今日、亜実ちゃん居る?」

「おう、多分部屋に居るんでか」

「ほんと!‥会うの久し振りだし、なんか話してくる!2人は煙草でも喫ってなよ!」

ユイはマグを持ち、いそいそと部屋を出て行った
ユイに云われたからというわけでもないのだが、菱和とアタルは揃って煙草に火を点けた

「あいつと喋って何の徳があんだよ‥‥‥‥あ、“亜実”って俺の姉な」

「お姉さんいるんすか」

「ん。たーも姉ちゃんいんだわ、“葉子”っての」

「へぇ‥‥‥‥。俺兄弟居ないから、ちょっと羨ましい」

「そうかぁ?ユイんとこみてぇに同性の兄弟ならまだ楽しいのかしんねぇけど、“姉”になると正直うぜぇぞ」

「‥‥そんなもんなんすかね」

「俺も自分で云ってるわりによくわかんねぇや、はは。‥‥‥てかよ、度が過ぎた“いちゃこら”はすんなよ。多分俺が耐えらんねぇ」

「‥‥“いちゃこら”したくなったら、勝手にどっか連れてくんで」

「ふはは!そっかそっか、じゃあそうしてくれ」

「迷惑掛けるつもりは全くないんすけど、ひょっとしたら痴話喧嘩くらいはあるかもしんないす」

「そんくれぇは多目に見るさ。そういう仲にもなりゃあ、きっと色々あんだろ。‥‥っつうか、あいつで大丈夫なのか?空気読めねぇしうるせぇし、あいつの相手すんのマジ疲れんぞ?お前が疲弊しまくってベース弾けなくなったりしちゃあ‥‥そっちの方が心配だな、俺は」

「大丈夫す。‥‥‥‥あいつが飽きても、俺は揺るがないんで」

アタルは目を瞬き、口から煙草を落としそうになった

「‥‥すげぇ自信だな、お前」

「‥‥‥‥相当ヤられてますわ」

穏やかにそう云った菱和
酷く優しく、柔らかな表情と言葉尻に、その想いが確実で、とてつもなく大きいものなのだと思い知る

───あのチビも、きっと同じなんだろうなぁ

「そっか‥‥‥‥。ほーんと幸せ者だな、あいつ‥‥」

ぽつりとそう呟いたアタルは、満足そうな笑みを浮かべ、煙草の煙を吹かした
一途に互いを想い合うユイと菱和を、微笑ましく思った

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