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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/04/23:31

87 “PANACHE”'s Crepe

美術準備室で昼食をとった後、教室へと戻る道すがら
ユイは菱和の制服の袖を軽く引っ張った

「アズ、放課後クレープ食い行かない?」

「‥‥クレープ?」

「今日、リサに奢る約束してるんだ。拓真も一緒に」

「ふーん‥‥‥‥っつうか、俺が行っても良いの?」

「へ、何で?甘いもん嫌いじゃないよね?」

「いや、幼馴染み水入らずの方が良いんじゃねぇの」

「美味いもんは、皆で食った方がもっと美味いじゃん!」

「‥‥そ」

放課後、制服姿のまま街をぶらつくのは久し振りのことだ
その雰囲気がどういったものであるかを全く掴めないまま、菱和は“PANACHE”へ行くユイたちと行動を共にすることにした

 

駅前通りの公園近くのアーケード
ディスカウントストアやドラッグストア、カフェ、ゲーセンなどもあり、学校帰りの学生でいつも犇めき合っている
“PANACHE”も、そのアーケード内にある

人混みは好きじゃない
寧ろ、嫌いな方だ
だが、周りの賑やかさに負けじとはしゃぐユイに何となく根負けし、菱和も自然と街の喧騒に紛れる

“PANACHE”は、連日のように行列が出来る人気店だ
看板メニューはクレープだが、アイスやパフェ、飲み物も充実している

行列に並び順番を待つ一際長身の無愛想な男に、誰もが振り返る
カフェで濃いブラックコーヒーを飲む姿の方が似合いそうな菱和の見た目は『甘いものを好んで食べそう』という印象が少しも見当たらなく、スイーツ店に並ぶその姿は周囲に強烈なインパクトを与える
ただただ驚きガン見する者もいれば、“ギャップ”に萌えて二度見、三度見する者もいた

そんな“ガラ”じゃない
そんなことは本人が一番よくわかっている
だからと云って、『男だから甘いものを食べて何が悪いというのか』と菱和は思った
確かに自分はクレープを食べに来ている
それは紛れもない事実なのだが、『“目的はクレープではなくコーヒーかも知れない”という想像もつかないものなのか』と、好奇の目を向けてくる周囲の反応があっという間にうざったくなった

───まぁ、そりゃ当然の反応だわな。‥‥‥‥でもやっぱ、うぜぇ。他人のことなんてどうでも良いだろっての

“スイーツ男子”という括りに勝手にカテゴライズされてしまうのは不本意だ
ましてやわざわざ“ギャップ萌え”を狙っているわけでもない
若干苛ついて一瞥くれるとその視線は散るのだが、次々と人の出入りがある場所ではその行動は最早無意味なものだった

リサやユイが居ることが、この場にえらく不釣り合いな自分の印象をほんの僅かに和らげる
それだけが、順番待ちをする菱和にとっては唯一の救いだった

 

順番が来ると、ユイとリサはカウンターの目の前で、拓真と菱和はその後ろからメニューを覗き込んだ
ユイは、女子高生に負けないくらい目をキラキラさせている

「毎度毎度のことだけど迷うなぁ。みんな、何にするー?」

「私、“ストロベリーレアチーズ”」

「早っ。ってか、それ美味そうだな」

「最近ずっと、これしか食べてない。最強」

「最強って‥‥そんなに好きか。じゃ、俺は‥‥オーソドックスにストロベリーチョコカスタード。ユイは?」

「んー‥‥‥‥じゃあこれ、“ティラミス”!」

「ひっしーは、何にする?」

「‥‥“抹茶”」

「お、それも美味そう。んじゃ、会計しよー。リサの、幾ら?」

「あ、あー‥‥450円です‥‥‥」

「ほい。‥‥お前のティラミス、一口寄越せよ」

「‥もっちろん!拓真、ありがと!」

会計を済ませて番号札を受け取り、クレープが出来上がるのを暫し待つ

「ひっしーて、わりと好みがシブいのね。和菓子とか餡子平気な人?」

「ん。黒蜜と黄粉って、ヤバくね?」

「あー、最高の組み合わせだなぁ」

「抹茶って、メニューだと生地が緑色だったね!どんな味すんだろ?」

「‥‥美味しいよ、抹茶。白玉入ってて。結構好き」

「リサが云うなら、間違いないね!ね、一口ちょうだい?」

「‥‥ティラミス半分寄越すんなら良いよ」

「‥‥‥‥、俺は一口なのにアズは半分もいっちゃうの?」

「半分貰っても全然不公平じゃないじゃん。お前の“一口”でかいし。結構前だけど、俺クレープん中のアイス殆ど食われたことあんだよね」

「‥‥私もチーズケーキごっそり食べられたことある」

「‥‥‥‥じゃ、やっぱ半分な」

「‥ぶ‥‥」

ユイはバツが悪そうに唇を尖らせた
意地悪そうに口角を上げる菱和
2人の顔を見て、拓真はくすくす笑っていた

 

番号を呼ばれ各々がクレープを受け取り、席を捜す
テラス席もあるのだが、流石に寒そうなので今回はやめ、4人は窓際の席に座った

リサのクレープは、小さめのピースケーキの周りにホイップが盛られており、甘酸っぱい苺のソースがかかっている
拓真が頼んだのは、カスタードクリームにチョコソースがかかっており、ざくざくと切られた苺がふんだんに入っている
ユイが注文したものはマスカルポーネムースにコーヒーを含ませたスポンジが散りばめられていて、ほろ苦くも濃厚なクレープ
そして、菱和が頼んだ抹茶はホイップに黄粉と黒蜜がかかっていて餡と白玉が入っており、生地にも抹茶が混ざっている

4人は感想を述べながら、クレープを食べ進める

「美味ぁ!ティラミス美味いっ!」

「コーヒー入ってるのに、よくそれ頼んだね」

「コーヒーなんか気になんないくらい美味いよ!この‥‥ムース?みたいなの!とにかく美味い!」

「抹茶の味は、どう?」

「‥‥超美味ぇ。色々、絶妙」

「‥‥‥‥っていうかさ、クレープ食ってるひっしーって、絶対レアだよな」

「そうか?」

「ほんとだね!今のうちに写メ撮っとこっかなー」

「‥‥何に悪用する気だよ」

「悪用なんてしないよ!レアだから撮っとくだけ!」

「‥‥‥、なんかの“厄除け”程度にはなるんじゃない」

「あー‥『悪い人に絡まれない』、とか?」

「‥‥んなもん“厄除け”にすらなんねぇよ」

「アズ、“一口ちょうだい”っ!」

「ん」

「‥‥‥美味ぁ!抹茶の味する!」

「抹茶のクレープなんだから当たり前でしょ」

「っていうか、俺も一口貰って良い?緑の生地の味、めっちゃ気になってきた」

「ん。どーぞ」

「人の見てたら、食いたくなるよね!」

「そうなんだよなぁ‥‥。‥‥、うわ、マジ美味!俺も次、抹茶食おうっと」

「‥‥たっくん、俺にも苺食わして」

「う‥‥‥。‥‥その、たまにくる“たっくん”、めっちゃ心臓に悪い‥‥」

「何で?結構気に入ってんだけど」

「そっすか‥‥‥」

「リサのも一口ちょうだいっ!」

「‥先っぽだけあげるから、もうちょっと待ってて」

「何だよそれ!いちばん美味いとこ全然なくなるじゃん!」

「待てないならもう1個買えば?」

「むー‥‥リサのケチ!」

「‥‥‥‥」

「‥‥、ほんとにくれないの?」

「‥‥‥‥どうぞ」

「むふふっ、頂きます!」

 

一口ずつ貰い貰われ、自分が注文した以外のものも互いに楽しむ
リサも菱和も、意地悪なことを云いつつもしっかりとユイにクレープを“一口”あげた
舌鼓を打ちながら、4人は談笑して放課後を過ごす

 

中学時代、放課後といえば毎日のように喧嘩に明け暮れていた
当時の自分からは全く想像もつかない、友人とクレープを食している現在の姿

やはり、“毒されてしまった”と思うより他ない

ただ、その“毒”に不快な要素は皆無と云って良いほど見当たらない

あらゆる不快感を一瞬で消し去るユイの笑顔、拓真の笑い声、リサの仏頂面、そして甘味

他愛ない放課後をともに過ごす仲間が居てくれることに感謝し、菱和はほろ苦い抹茶のクレープを堪能した

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