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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/04/23:30

86 美術準備室にて

「ここ」

旧校舎の2階、最奥の教室
菱和はそこで立ち止まり、指を差した

「‥‥‥‥“美術準備室”?」

菱和を除く5人は、その表示をぽかんと見上げる

「ずっと使ってねぇっぽいから誰も来ねぇし、でも何でか鍵かかってねぇし暖房入ってるから、冬の間はここ使ってた。‥‥6人だとちょっと狭めぇかもしんねぇけど」

「へぇー‥‥」

「じゃ、入ってみるべ」

「お邪魔しまーす」

菱和がドアを開け美術準備室に入ると、5人が続いて中に入る
足を踏み入れると、ツンとした臭いが鼻についた

「うお、臭っ!」

「ほんと、油臭いなー」

「使いかけの油絵の具とか筆とか残ってるから。慣れればわりと快適」

12帖程の美術準備室は、部活動で使用していたものの名残があった
カンバスや石膏、油絵の具、その他の画材が棚に所狭しと置かれ、雑然としている
換気を兼ね、菱和は窓を開けた

「ほんとだ。絵も残ってるんだね」

「‥‥あ、これ見たことある」

ユイはある石膏を指差した
拓真もそれに近付き、首を傾げた

「誰だっけそれ?」

「“モリエール”、だったかな」

「お、“アメンホテプ”もいんじゃん!」

「‥‥“あめんほてぷ”って、どれ?」

「こいつ。なんか、それっぽくね?」

上田はニヤニヤしながら石膏の頭をぺちぺちと叩いた

「‥‥それは“マルス”」

「あ、ちゃんと名前付いてんだ」

「当たり前でしょ。樹、教養無さ過ぎ」

「いやいや、教養云々の前に“美術”ってガラじゃないっしょ、俺は」

「まぁ、そーだよな‥‥‥‥てか、カナちゃん、詳しいね」

「私、選択美術だから」

「なるほど、そっかー。つーかさ、大分前に帽子被したり眼鏡かけさしたりしてたよな」

「そーそー!あれは新校舎の美術室でさ、マサとかケンゴと一緒に忍び込んでやったわー。速攻で拓真に写メ送ったっけー」

「マジでクソみたいな嫌がらせだったんだけど」

「うっそ、バカウケだったっしょ!?」

「俺もその写メ見してもらったけど、めっちゃ笑った!」

「だろー!?ユイ、わかってるー!たっくん、も少しユーモアのセンス磨いてよ」

「いや、ユーモアじゃなくてただの悪ふざけだろあれは」

菱和とリサ、カナは、拓真の意見に同意せざるを得なかった
適当に並べられた机と椅子を整理し、机を軽く拭いて、各々は昼食を広げ出した

 

「ほんとに、誰も来ないの?」

カナは少し不安げに室内を見回し、菱和に尋ねた

「‥‥何回か美術の先公来たけど、別に何も云われなかった」

「とか云って、ガンたれたりしたんじゃねぇのぉ、菱和ぁ?」

紙パックジュースのストローを噛みながら、上田がニヤニヤ笑って茶化す

「いやいや、ほんとに」

「美術のセンセーって、誰だっけ?」

「“木邑”だな。俺のクラスの副担だわ。たまに教室来るけど、なーんかいっつもやる気ねぇ顔してんだよなー」

「キムラ先生かー‥‥‥なんかあの人、結構大変な思いしてるみたいよ」

「そうなん?」

カナは唐突に、美術教諭について自分が知り得ている情報を話し出す

「私も人伝に聞いた話だからほんとかどうかわかんないけど、先生の奥さんも同業者で、何年か前に亡くなったとかって‥‥‥。それまでは、“あんな感じ”じゃなかった‥‥って」

「ほー‥‥‥‥よっぽど奥さんラブだったんだな」

上田は、部屋の片隅に置かれているゴミ箱目掛けて紙パックを投げた
ゴミ箱は空に等しく、カコン、という音が響いた

「‥‥最愛の人を亡くすって、私たちにはまだまだ理解出来ないよね」

「そうなー‥‥‥」

「その話がほんとなら、そういうのって人格まで変えちゃうんだね‥‥‥‥てか、カナめっちゃ詳しいね」

「美術部に友達いるから、その子から聞いたの」

「へー‥‥」

「長原の情報網、ほんとすげぇよな」

「別にー。たまたま耳に入ってくるだけだし」

謎多き美術教諭の話に花が咲き、昼食は進められた

美術準備室は、美術室と隣接している
扉を隔てた向こう側は、暫くの間ほぼ使われていない旧美術室
準備室よりも雑然としており、時折人の出入りもあるようだが、教諭や美術部員が画材を取りに来たり等、ちょっとした用事でたまに訪れる程度だった
まるで存在そのものが忘れ去られているかのように、普段は閑散としている
長らく一人で過ごしてきた菱和にとっては、『真に独りになれる場所』としてかなり好都合だった
南向きなこともあり、日によっては暖房が要らないくらい暖かくなる
転た寝をし、そのままサボることもしばしばあった

 

「なぁ、裸婦画とかねぇんかな?」

「さぁ‥‥捜せばあんじゃない?てか、今はやめろよ。みんな食事中なんだから」

「何だよ、つまんね。みんな食うの遅せぇんだよ」

「お前が早過ぎんだよ。それか、量が少な過ぎるか」

「上田、俺のパン1個食う?」

「お、良いの?」

「うん。俺いっつも多めに買っちゃうから余るんだよね。‥‥はい、これ!」

「じゃ、貰いー!さんきゅー!さーて、裸婦画捜してみよー」

「良いから、大人しく食えっての!」

「‥‥たっくん、怖ーい」

「樹、行儀悪過ぎ。座って食べな。あと、超うざい」

「‥は!?‥‥あのさ長原、俺だって傷付くんだけど‥‥‥」

「知るかっつーの。バカ。エロ。変態」

「うおぉー‥‥‥今の3連コンボはマジ効いたわ‥‥泣きてぇ」

「勝手に泣いてろ」

「いっそパン喉に詰まらせて喋れなくなっちゃえば良いのに」

「‥‥菱和ぁ、どう思うよこの2人?辛辣過ぎね?」

「‥‥‥‥御愁傷様」

「‥‥‥お前は俺を裏切らないと思ってたのに‥‥」

「上田、元気出して。パン、もいっこ食う?」

「‥ユイがもう食わないなら食う」

「うん、あげる!」

「あー、俺の心の拠り所はユイだけか‥‥」

「‥‥‥‥同レベルっぽいから合うんじゃない」

「‥‥近藤サン、今然り気無く問題発言しなかった?」

「気の所為じゃない?リサは変なこと云わないもーん」

「あ、そーですか‥‥」

 

───‥‥‥‥この調子じゃ、寝てる暇も無くなんな‥‥

屋上だけでなく、美術準備室までも
何時の間にやらすっかり賑やかな場所になってしまったことを憂いたりなどしないが、菱和は一人で過ごしていた時を少しだけ懐かしく感じた

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