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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/04/23:31

81 GUITAR KIDS

菱和は鍋の材料と一緒に買ってきたホットかりんをマグに淹れ、ソファに座るユイの前に置いた

「お前は休んでな。起きてても良いし、もう寝ても良いし。なんかあったら呼べよ」

「‥‥ありがと。‥‥‥‥あの‥」

「‥‥‥ん?」

「‥‥‥‥また、一緒に、‥寝たい‥‥」

「‥‥云われなくてもそのつもりだったけど?」

「‥!‥‥‥」

「‥‥待ってな、直ぐ終わらすから」

「‥‥‥うん」

 

まだ熱はあるが、動けないほどしんどいものではない
だが、テレビを観る気にもなれず一気に手持ち無沙汰になる

ユイは、楽器が置いてある部屋に入った
菱和がメインで使っている白いボディのベース
その隣には、ギグケースに仕舞われたもうひとつのベースと、ソフトケースに入っているであろうギターがスタンドに立て掛けられている
ソフトケースには、黒いボディに白いピックガードのストラトが入っていた
エリック・クラプトンが使用しているものと同じシェイプとカラーだ
徐にケースから出し、ギターアンプにシールドを繋いだ
チューニングをしてみると、然程狂ってはいなかった

ユイは胡座をかき、軽く爪弾き始めた

 

***

 

家事を進めていると、ギターの音が聴こえてきた

菱和は手を止め、音のする部屋を覗いた
小さな背をこちらに向け、部屋の隅でギターを弾くユイの姿があった

 

切なげな、哀愁漂う高音域のアルペジオ
指板を滑る、指の音
メロディラインの鼻歌を重ね、無我夢中でギターを爪弾くその後ろ姿を、見守る

サビらしきところに入ると、アルペジオからストロークへと奏法が変わる
正確にコードを押さえながら、ユイは半ば陶酔しながらストロークを刻む

トーン、と、最後の一音が間延びする

 

その音が途切れたところで、ユイはずしりと背中に重みを感じた

気付けば、後ろから菱和に抱き締められていた
ユイの体温が、ぐっと上がる

 

「───‥‥ア、ズ‥‥‥‥」

「‥‥‥‥なんて曲?」

「‥‥、前に俺が、作った、曲‥‥」

「ふーん‥‥‥。‥良いな。“ユイっぽい”」

「そ‥‥かな。‥‥ごめん、勝手に触って」

「なんも。俺全然ギター触ってないから、たまにいじってやって」

「うん‥‥‥」

ユイの顎の直ぐ下に、菱和の大きな腕がある
ユイは指板を押さえていた手をその腕へと添え、袖を軽く引っ張り、頬を腕に乗せた

───何だ今の。可愛い、な

菱和はくす、と笑った

「‥‥な、今の、歌詞あんの?」

「ん?うん‥‥一応、あるけど‥‥‥」

「‥‥じゃあ、もっかい聴かして」

「え‥‥」

「詞があるなら歌えよ」

「ええー‥‥」

「何だよ、良いじゃん。減るもんじゃなし」

「ん‥‥そうだけど‥‥‥恥ずかしい‥から‥‥」

「今更何云ってんだか‥‥‥。‥何なら俺も弾くよ。それなら歌ってくれる?」

「う、うん‥‥」

「じゃあ、コード教えて。ルート拾うから」

菱和は名残惜しそうに身を離し、ベースの準備を始めた
その傍ら、ユイは曲のエピソードを話し出す

「サビまで、ギターだけなんだ。だから、演ってもライヴ映えしないかなーと思って、お蔵入りにしようと思ってたやつで」

「ライヴで演んなくても、皆で演れば良いんじゃねぇの」

「うーん‥‥‥‥一応拓真にもあっちゃんにも聴かしてるんだけど、皆があんま楽しくないんじゃないかなー、って‥‥」

「俺は気に入ったよ。すごく」

「‥‥そぉ?」

「うん。歌詞も気になるし」

「歌詞は‥‥‥‥ほんと、適当に宛てただけだから‥‥」

「日本語?」

「ううん。英詞。あっちゃんに、『詞は自分で付けろ』って云われて‥‥‥‥。辞書引っ張り出して、徹夜で書いた。めっちゃ頑張ったよ」

「‥‥‥そっか」

「わ、笑わないで、ね?」

「‥‥笑わねぇよ」

「ん‥‥じゃ、いきまーす‥‥」

 

ユイは、心のままに綴った詞を歌った

 

淋しい夜を、何度も過ごしてきた
でも、誰も恨んではいない
幾度となく朝と夜を迎え、ちっぽけな自分に気付く
それでも、自分の周りには沢山の人が居てくれる
それに気付いたとき、回遊病のように彷徨っていたこの心は真に落ち着き、在るべき場所に還る

 

素直な心が綴った歌は、聴く者の耳へと真っ直ぐに届く

バンドのオリジナル曲は、主にアタルが作詞作曲している
アタルのセンスは折り紙付きだが、ユイにもそれなりのセンスを感じる
アタルが作ったものはアタルにしか、ユイが作ったものはユイにしか無いものが沢山ある

ユイが作った曲には、何処か憂いを帯びている印象があった
それでも菱和は、ユイがその想いの丈を綴った曲を大切にしたいと思う

上手く重なるかどうか見定めつつ、菱和はユイが歌うメロディラインに自分の声を重ねる
サビのストロークにも、ベースの音を重ねた

綺麗にハモる、2人の声と楽器の音

ユイはゾクリとした
今までも、菱和のベースが自分達の音に乗ることで悪寒が走ることはあった
だが、今までと今現在とでは、互いの想いは少し違っている
クラスメイトから友達へ
友達からバンドメンバーへ
バンドメンバーから、想い人へ───

まるで自分の全てを包み込むように、優しく穏やかに奏でられるベースの音
悪寒は何時の間にやら遠退き、心の底から安らかになっていく

いつまでも、同じ音楽を一緒に奏でていけたら良いな───

その想いだけは、2人同じだった

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