忍者ブログ

ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

NEW ENTRY

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • 02/05/01:16

60 Neapolitan

その日、ユイと拓真は念の為カナを自宅近くまで送り、リサと一緒に帰宅した
リサが自宅に入るのを確認すると2人も足早に帰宅し、支度を済ませてバスでスタジオへ向かった

バスに揺られながら、2人はリサの件を話し合った

「しかし、もう2ヶ月くらい前の話なのに向こうもよくリサのこと覚えてたな」

「リサの顔、結構目立つもんね」

「まぁな‥‥‥‥取り敢えず、折り見てあっちゃんに相談してみよ」

「うん、そうだね。こんなときこそリーダーに相談!」

「こんなときしか相談することもないんだけどな‥‥‥‥。あ、あとお前、絶っっっ対顔に出すなよ。ひっしーに知られたら元も子もない」

 

───アズ

「‥‥わかってる。俺だってアズに心配かけたくない」

自分達とバンドをやる為に形振り構わず行動を取った菱和のことを考えるユイの眼差しは、いつになく真剣なものだった

 

急いでいたものの、いつもの集合時間より若干遅れており、2人は駆け足でsilvitに向かう
息急ききって、ユイは勢いよくドアを開けた

「こんにちはー!」

「やぁ、いらっしゃい。アズサちゃんとアタルくんなら、仲良く煙草喫ってるよー」

我妻は2人に気付き、にこりと笑って裏口を指差した
いそいそと裏口に回ると、菱和とアタルが怠そうに煙草を喫っていた

「やっと来やがったか!遅せぇんだよお前ら!」

「ごめーん、つい話が盛り上がっちゃって‥‥」

「どうせまた下らねぇ話でもしてたんだろ?ったく‥‥これで5本めだぞ!?」

へらへらと笑うユイの顔を見て、アタルは苛ついて煙草を吹かす
拓真は、アタルと並んで煙草を喫う菱和に尋ねた

「ひっしーはそれ何本目?」

「‥‥2本目」

「あっちゃんが喫い過ぎなんだよ。まだ少し時間あるのに‥‥ほんとせっかちなんだから」

「うっせぇ。とっとと始めんぞ」

「いって。‥‥はいはい」

アタルは拓真の頭を軽く叩いてから、灰皿に煙草を押し付けてスタジオに向かった
拓真も頭を掻きながらそのあとに続く

菱和は未だ、怠そうに煙草を吹かしている

「あっちゃん、早く弾きたくて待ちきれないみたい」

「‥‥そりゃお前もだろ」

「あ、バレた?」

「いつものことっしょ」

「‥まぁね!行こっ、アズ!」

にこりと笑い掛けるユイ
菱和は最後の一口を喫うと、穏やかに頷いてユイと共にスタジオに行った

 

ライヴのあとにリサとカナが高野と駒井に後をつけられていたことを知ったのは、ほんの一時間前のこと
余計な心配を掛けまいと、わざわざ自分のいないところでそんな話をしていたユイたち
拓真に釘を刺された通り、ユイは菱和に“隠し事”をしていることを悟られまいと、普段と変わらず接するよう努めた

菱和が“その話”を聞いていたことを、ユイたちは知らない
悟られないよう努めるのは、菱和も同じだった
ただ、菱和はユイよりも遥かに感情が表に出難い
菱和は、『こういうとき、無表情というのは至極便利なものだ』と思った

 

***

 

練習が終わると、4人はいつものように菱和の自宅へと向かう

「あっちゃん、今日もアズんち行けるね!」

「今日は反省会だからな。しこたま食ってやらぁ。今日は何なん?」

「ナポリタン。俺、前もってリクエストしといたんだー」

「ほー。期待してんぜ、シェフ」

「‥‥その期待に添えれば良いけど」

「またまた。謙遜しなくても、十分美味ぇから」

アタルは軽く顎を掻く菱和の肩をぽん、と叩く
それを見て、ユイと拓真はくすくす笑った

 

菱和は拓真がリクエストしたナポリタンを恙無く作り終えた
細く切られた玉葱とピーマン、ウインナーと共にケチャップで和えられたパスタが盛り付けられた皿を目の前にし、皆思い思いに粉チーズを振り掛ける

「‥‥美味ぁ!初めてなのに、なんか懐かしい味する!」

「『古き良き洋食屋の味』って感じだな」

「うん、美味いなーやっぱり。リクエストして正解だった」

「‥‥ひっしー、タバスコねぇか?粉チーズもも少し欲しいな」

「ん、あるよ。持ってくる」

「あっちゃん、タバスコなんてかけたら味変わっちゃうじゃん!このままでも十分美味いのに!」

「うるせぇ。ケチャップ口に付いてんだよこのチビ助」

「え、どこどこ?」

「がっつき過ぎ。ひっしー、お代わりある?」

「ん。目一杯食ってって」

「拓真だってがっついてんじゃん!俺もお代わりいるー!」

「おいガキ共、俺の分も残しとけよ!」

「‥‥ほんとに沢山作ったから、ゆっくり食えば」

清々しいほどの、3人の食欲
自分の料理の腕前など、高が知れてると思っていた
ユイたちが本当に自分の腕に満足してくれているのか、ただ単に空腹だからなのかはわからない
だが、どちらにしても、喜ばれていることに変わりはない
この騒がしい夕餉の雰囲気が、心地好かった

 

食事を終えた4人は、先日のライヴの反省会をした
曲の出来にそれなりに満足だったこともあり、話題はユイがピックを客席に放ったことへとシフトしていった

「‥‥あれはねぇよなマジで。お前、もっと落ち着いて弾けよ」

「でも、なんかみんな喜んでくれたじゃん!」

「完璧“棚ぼた”だったけどね。ピック一つであんなに盛り上がるなんて思ってなかったわ」

「でしょ!?なら、結果オーライじゃん!」

「女の人も沢山あっちゃんのピックに群がってたしねー。あっちゃんも満更でもなかったんじゃないのー?」

拓真が意地悪そうな顔をしてそう云うと、アタルは負けじと意地悪そうに云った

「‥‥お前、今度スティック投げろよ」

「‥やだよ!俺のなんて、しかもあんなボロボロのスティックなんて誰も欲しがらないよ」

全力で拒否する拓真の横で、ユイも意地の悪そうな顔をした

「新品買って忍ばせとけば良いじゃん!で、終わったらそれ投げれば‥‥」

「いーやーだ。誰も取ってくれなかったら切ないし、怪我したら大変っしょ。てか、新品投げるなんて勿体なさ過ぎる」

「まぁ、スティックはちょっと危ねぇな。っつぅか、それよりもまずひっしーのピックだべ」

「え?でもひっしーピック必要ないじゃん。指弾きなんだし」

「だから、それこそ投げる為だけに用意しとけば良いんじゃねってこと」

アタルはニヤニヤしながら菱和の顔を見てそう云った
途端、ユイが目をキラキラさせた

「え、それなら俺も欲しい!」

「‥‥何でだよ。アホかお前」

「だって、アズのピックなんて絶対レアじゃん!」

「そんなら普通に買ってもらえば良いだろ」

「それじゃ何の意味もないっしょ!使ったばっかのほやほやのやつをキャッチするのが良いんでしょ!」

「っつうかお前がベース用のピックなんて持ってても仕様がねぇだろ。大体、ひっしーがピック投げるとき何処に居る気だよ?」

「‥そりゃ客席でしょ?ピック争奪戦に混ざりたい!」

「ギター持ったままステージ降りて、ひっしーがピック投げるの待ってんの?」

「え?」

「‥‥まず、演奏が終わったらギターを抱えたまま急いでぎゅうぎゅうの客席に降りて、良いポジション取ろうと思って客掻き分けてもみくちゃになっているうちにシールド外れて、スピーカーから変な音聴こえて、そのうちギターごと上に担がれて胴上げ状態になってわっしょいわっしょい‥‥‥‥‥‥‥‥」

3人は、拓真の話を順番通りに思い浮かべてみる

「‥‥‥で、結局ピック受け取り損なうんでしょ?そこまでやってユイクオリティだよね」

「全然クオリティ高くねぇし!」

拓真とアタルは、腹を抱えてゲラゲラ笑う
ユイはムキになって身を乗り出した

「ちゃんと受け取るし!‥‥じゃあ、演奏終わったらすぐ手渡しで貰う!」

「‥‥それもなんか変じゃない?ってか、それなら結局最初から買って貰った方が早いじゃん」

「演奏終わって『はい、ピックどーぞ』ってか?何のこっちゃわけわかんねぇし!」

「お、面白過ぎる‥‥!っははははは!」

想像すればするほどよくわからない状況になっていく
拓真とアタルは涙目になって笑った

「───もう、何でも良いじゃん!俺もアズのピック欲しいよおぉ!!」

「‥‥‥まだ投げるって決まった訳じゃねぇし、もしそんときが来たらやるよ」

菱和はユイを宥めるようにして云った
そこへ、アタルがボソリと呟く

「‥‥手渡しで?」

菱和もこの状況を楽しんでいるようで、アタルの問いに至極真面目な顔をしてこくりと頷いた
拓真とアタルはまた弾けるように笑い出す

「もおぉ、アズまで面白がるなよ!!」

菱和も、意地悪そうに少し口角を上げる
3人に小ばかにされ、ユイは顔を赤くした

 

一頻り笑い話を終え、3人は菱和の自宅を後にした
快晴の夜空は澄み切っており、星が疎らに瞬く
吐いた息は、ほんの少し白くなる

「寒くなってきたなー」

「ほんとだね」

「風邪引くなよお前ら。特にお前。‥‥あ、心配ねぇか。バカだから」

「バカじゃないし!勉強できないだけ!それにねぇ、あれは『バカは風邪引いてるかどうかもわからない』っていう意味なんだよ!」

「どっちにしてもあてはまんじゃんよ」

「‥違うし!あっちゃんのバカ!!」

「‥‥、俺はバカじゃねぇよな?」

「うーん、どっちもどっちだねぇ‥‥」

「あ!?てめっ!このチビと一緒にすんな!」

「こっちの台詞だし!あっちゃんと一緒にすんなよ!」

「うひょ、怖えぇー!」

3人はふざけながら、帰宅の途に着く

 

***

 

騒がしかった室内が、一気に静まり返る
菱和は余韻に浸りながら煙草を喫った

立ち上る煙をぼんやりと眺めながら、放課後教室でユイたちが話していたことを思い出した

───‥‥‥‥あいつら今何やってんだろ

ふと思い立ち、菱和は軽く身支度を整え、自宅から出て行った

拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら