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58 暗転
一足先にライヴ会場を後にしたリサとカナ
残りのバンドを観る為にライヴ終了まで会場にいるユイたち、そして打ち上げに混ざるつもりで共に残っているケイと別れ、街灯の少ない夜道を歩く
「あーあ、私もピック欲しかったなぁ‥‥」
「そんなの、云えば幾らでもくれると思うけど」
「もう、違うんだってば!投げてくれたやつをキャッチしたいの!」
「あ、そう‥‥‥」
カナは、大ファンと云っても過言でないほどHazeの曲や雰囲気を気に入っている
確かに、一言頼めばピックの一つくらいユイもアタルも喜んでカナに渡すだろう
しかし、客席に投げられたものを手に取るチャンスは滅多になく、特別なことだ
憧れている、大好きなバンド
そのメンバーが使っている私物であれば、どんなものでも欲しいと思えるもの
その辺の感覚がいまいち理解できないリサは、いつまでもユイやアタルのピックを手にした観客のことを羨んでいるカナに呆れた顔をした
2人の後ろから、ひたひたと足音が聞こえる
リサはいち早くそれに気付き、カナの話を聞きつつも後方に注意を向けた
最寄りの駅までの道をわざと遠回りしてみると、やはり足音は自分達の後をついてくるようだった
数ブロック歩いたところで、リサは『自分達はつけられている』と確信した
カナもそれに気付いたようで、不安そうにリサに腕を絡ませる
「‥‥‥‥‥ねぇ、うちら後つけられてない?」
「私もそう思ってた。ちょっと急ご」
ライヴ会場へ引き返そうにも、距離的には駅へ向かった方が近い
歩くペースを少し早めるも、後ろの足音もそれについてくる
女子2人で歩くにはとても心細く感じてしまう、人気のない夜道
カナはどこの誰なのかもわからない何者かに後をつけられる不安から、苛立ちを募らせる
「もう何なの、どこまでついてくる気なの!っていうか誰よ!?」
「落ち着いて。大丈夫、もう少ししたら大きい通りに出るから‥‥」
リサが宥めようとしたとき、カナは立ち止まって絶叫した
「──────っきゃあぁぁぁーーー!!!!!」
「何っ‥‥!?」
「こういうときは、大声で叫ぶの!きゃあぁぁーーー!!!助けてえぇーっっ!!!」
無我夢中で叫ぶカナの声に、リサはただ驚くばかり
咄嗟にリサの腕を掴み、カナは走り出した
「行くよっ、リサっ!!!」
「あっ、ちょっ‥‥!」
リサも、引き摺られるように走り出す
──────!!‥‥‥‥‥‥
ちらりと振り返ると、見覚えのある男の姿が目に入った
カナの声に驚いたのか、狼狽えたまま追い掛けて来ることはなかった
安堵するも、訳がわからなくなる
何で、今更──────
思い出したくもない出来事が、リサの頭の中を埋め尽くした
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