忍者ブログ

ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

NEW ENTRY

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • 02/05/01:16

55 揚げ出し豆腐

Hazeは次のマンスリーライヴに向けて練習を始めることになった
ユイは学校の休憩時間、着席したまま前の授業の教科書やノートを片付けもせず、拓真とアタルのバイトのシフトを手帳のカレンダーにメモしながらにらめっこしている

「‥‥うーんと‥‥‥‥」

「何書いてんの」

考え事をしながら唸り声をあげるユイの真後ろから、菱和が声を掛けた
ユイが真上に顔を上げると、自分を覗き込んでいる菱和の顔が見えた
長身な菱和は、着席して尚背の低いユイを見下ろす

「あ、アズ。あんねぇ、練習の日程考えてたんだ。あとでまとめてアズにも報告するから!」

「ふぅーん‥‥マメだな」

「あ、そうだ。アズの日程も聞いとかなきゃと思ってたんだ。駄目な日ある?」

「俺はないよ、いつでも大丈夫」

「そっか。じゃあ、取り敢えずこんなもんかなぁ‥‥‥‥よし、出来たっ!今月はこんな感じ!」

ユイは得意気に出来上がったスケジュールを菱和に見せた

「‥‥‥‥、漢字間違ってる」

「え!どこ!?どれ!?」

「19日。機材調整の“機”」

ドヤ顔だったユイは慌てふためき、間違った漢字をペンでくじゃぐしゃと消した

 

***

 

スタジオに集まったHazeのメンバーは各々定位置につき、談笑しながら練習を進める

「何演るか決めたの?」

「そろそろストックの曲やっても良いかなぁと思ってたんだよな」

「良いねー。練習し甲斐があって」

拓真は軽く腕を伸ばしてストレッチした
ユイはストックの曲を思い浮かべてみる

「今までライヴで演ってないのって‥‥“GOLD RUSH”とか?」

「そうなぁ。ひっしーも居るし、時間的に“DIG IN”も出来そうかと思ってたんだけど。どうよ?」

アタルが菱和に尋ねる

「うん。貰ったCDは一通り弾いたし、大丈夫」

「じゃあそれでいこ!」

 

特に意見がぶつかることもなく、加入して間もない菱和を然り気無く気遣うことも怠らず、すんなりと事が決まっていく
少なくとも、菱和はHazeに加入してからメンバー同士が良い争いや喧嘩をしているところを見たことがない
アタルのリーダーシップ故のものなのか、仲の良い幼馴染みで構成されているバンドだからなのか、平和主義者ばかり集まっているのか
いずれにしても、決断力の早さや清々しいほどの仲の良さはHazeの強みであると思った

 

「そんじゃ‥‥何からやる?」

「“GOLD RUSH”やりたいー!」

「‥‥お前、ほんと好きな」

「大好き!早くやろ!」

アタルが呆れ返るほどお気にの曲を演奏出来るとあって、ユイは張り切ってギターを構えた

 

“GOLD RUSH”は、随所に散りばめられたカッティングが印象的な曲になっている
カッティングの好きなユイの為に作ったといっても過言ではなく、また疾走感のあるものに仕上がっている
アタルが『一攫千金当てたい』という願望を詞に充てた為、拓真が『GOLD RUSH』と名付けた

対する『DIG IN』は、シンプルだがヘヴィな印象の曲
『DIG IN』には『突っ込む』という意味があり、リズム隊の勢いがキーになっている
比較的初期の頃に作られた曲で、アタルの“若さ”が滲み出ている

ユイも拓真もアタルの作る曲には外れがないと思っており、菱和もまた、技術的な面、バンドや曲の雰囲気をとても気に入っていた

人間的にもギターの音色に関しても、ムードメーカーでマスコット的存在のユイ
常にメンバーを気遣い、屋台骨としてしっかりとバンドを支える拓真
ガラは悪いがバンドのことを強く想う、絶対的リーダーのアタル
比較的キャラの濃い個々のメンバーの個性も、勿論好きだった
迎え入れてくれたことや腕を認めてくれたことに恥じぬよう、自分にやれることを精一杯やろうと心に決め、Hazeというバンドに改めて感謝した

 

***

 

練習が終わると、全員が揃って菱和の自宅へと向かう

「今日はあっちゃんもアズんち行けるんだよね?」

「ああ。今日の献立は?」

「何食いたい?」

「和食も、作れるか?」

「どんなの?」

「‥‥揚げ出し豆腐」

アタルは少し恥ずかしそうにそう云った
菱和にとっては、意外なリクエストだった
アタルが和食を好きだとは知らず、少し目を丸くする

「良いねー!揚げ出し豆腐!」

「あっちゃん、渋いチョイスだね」

ユイと拓真は、アタルの意見に賛成のようだった

「なんか急に食いたくなって。ひっしー、大丈夫か?」

「うん。じゃあ、豆腐だけ買ってくわ」

「いえーい!みんなで買い出し行こ!」

4人は、最寄のスーパーへと向かった

 

***

 

自宅に着くと、菱和は早速調理に取り掛かる
3人はリビングでのんびりしていたが、ふと立ち上がったアタルがギターを取り出した

「ちょうど新曲作りてぇと思っててよ。思い付いたフレーズくっ付けてみたから、ちょっと聴いてみてくれっか?」

「お!聴く聴く!」

「ひっしー、アンプ借りるぞー」

「うん」

調理中の菱和は、キッチンから返事を寄越した

 

アタルはギターアンプをリビングに運び込み、シールドを繋いでギターをセットした
軽くチューニングを合わせるとソファに座り、ギターを弾き始めた
弾きながら、メロディーラインを鼻唄で歌う
ゆっくりと、優しい印象のイントロ
Aメロ、Bメロも柔らかい雰囲気だったが、サビに入ると急激に哀愁漂うものに変化した
切ないアルペジオが室内に響き、ユイも拓真も菱和もアタルのギターに聴き入った

ワンコーラス弾き、アタルはギターのスイッチを切った

「‥‥‥‥こんな感じかな」

「めっちゃカッコいいじゃん!」

「うん、すげぇ好き!切ない感じだけど、良いね!」

「今まであんま無かったんじゃない?こういうの」

「ん。ライヴ映えはしねぇと思うけど、上手くアレンジ出来れば良いんじゃねぇかなと」

「うん、やろうよ!続き作って!」

「ひっしー、どうよ今の?」

「俺も気に入った。すげぇ色気あって、良いね」

「おっしゃ。じゃあこれベースに曲作るわ」

揚げ出し豆腐が出来るまで、アタルはユイと拓真にアドバイスを受けながらノートに記憶を走らせた

 

***

 

菱和は、揚げ出し豆腐の他にも簡単なサラダと味噌汁を作った
揚げ出し豆腐には、細く切られた人参や玉ねぎが入った飴色の餡がかけられている
味噌汁からは、香ばしい胡麻油の香りが漂う

「頂きまーす!」

「どうぞ」

3人は、まずはメインの揚げ出し豆腐を口に運んだ

「美味ぁ‥‥沁みるわぁ」

「餡が美味いね!豆腐とすげぇ合う!ね、味噌汁は何入ってんの?めっちゃ良い匂いすんだけど」

「もやし。胡麻油で炒めた」

「へぇー、初めての味。母さんに頼んで作ってもらおっかな」

「お前、女だったら良い嫁になったろうなぁ」

「‥‥そーかな」

菱和は軽く頭を掻いた

「男をゲットするには胃袋を掴めって云うじゃん?料理できる奴はポイント高けぇよ、やっぱ」

「女じゃなくても、充分モテるんじゃない?背ぇ高いし、顔も良いし、料理も楽器も上手いし」

拓真が云った言葉に、ユイもアタルも頷く
菱和は軽く溜め息を吐いた

「‥‥‥‥如何せん、性格がさ。難ありだから」

3人は、真面目な顔の菱和を一斉に見つめた
菱和は3人の視線に若干たじろいだ
突然、アタルが吹き出す

「ひゃははは!何云っちゃってんのお前!?」

「全然難ありじゃないじゃん!優しいし、真面目だし」

「謙遜してんでしょ、ひっしーったら」

ユイは揚げ出し豆腐を頬張り、拓真はくすくす笑っている
菱和は真面目に云ったつもりだが、3人には洒落だと捉えられたようだ

「つぅか、今まで女と付き合ったことあんのか?」

「無い。女って苦手」

「え、そうなの?」

3人は、菱和の答えに目を丸くした

「煩くて好きじゃねぇ。そういう女ばっかりじゃねぇってのはわかってるけど」

「告られたことは、あるっしょ?」

「‥‥何回かは」

「全部お断り?」

「ん。興味ねぇから」

「超絶優良物件なのに、勿体ねぇなぁ」

「‥‥んなことないっすよ」

菱和は少しだけ口角を上げた

4人は、談笑しながら食事を進めていった

 

菱和の女性遍歴を聞いたところで、ユイは何故かほっとした気持ちになっていた

拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら