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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/05/01:17

47 おひるごはん

「───あれ?何でおべんと2つあるの?まさか、2つ食べるの?」

「んなわけないでしょ、これはユイの」

お弁当が入った、赤と青の色違いの巾着
青い方はリサの母親がいつも買い弁のユイを気遣ってたまに持たせているもので、リサは事前にユイに『今日は昼食を持って来なくても良い』と伝えてあった

「はい、あんたの分」

「おっ、この巾着久し振り!ありがと!な、今日は2人も屋上で飯食わない?」

「え、私たちも行って良いの?」

「勿論!そん代わし、“しー”ね!」

ユイは人差し指を口の前に立てて、ニコッとした

 

開け放った屋上の扉から、風が吹く
乾いた涼しい風が、もうすぐ秋の訪れを伝える

屋上には拓真と菱和、そして上田がおり、既に昼食をとっていた
ユイはリサとカナを先に通し、扉を閉めた

「お、リサ。カナちゃんも」

「ユイくんが誘ってくれたの。うちらもお邪魔して良い?」

「どーぞどーぞ。華が無くてむさ苦しいと思ってたんだよねー。近藤サンと長原なら、いつでも大歓迎よん」

「樹、うざい。邪魔」

「え、何でそんな哀しいこと云うの‥‥」

カナは、腕を広げて歓迎する上田を軽くあしらう
上田はふざけて哀しそうな顔をした
普段意味もなく上田に絡まれている拓真は、ここぞとばかりにカナに加勢する

「カナちゃん、もっと云ってやって」

「はうぅ、たっくんまで俺のこと虐めるの‥‥?」

拓真は上田を無視し、ユイが持っている巾着に目をやった

「お、今日は“リサの母さんの日”か」

「えへへー、そうなんだ!ね、唐揚げ入ってる?」

「‥‥知らない」

「‥入ってんじゃーん!テンション上がるー!」

「ユイ好きだもんな、リサんちの唐揚げ」

「うん、めっちゃ好き!」

弁当箱を開けると、卵焼きやミニトマトに紛れ、ユイの大好きな唐揚げが入っていた
一つ摘まみ、にこにこしながら菱和の口元へ差し出した

「はいアズ、“あーん”!」


大好きなそれを自分よりも先に味わって欲しいと思い、ユイは何の躊躇いもなく最初の一口を差し出す
箸を使うことも憚られるほど待ちきれないのだろうと思っていた一同は目が点になった
菱和も目の前に唐揚げを差し出され硬直していたが、徐に首を傾けて唐揚げを口に咥えた

醤油と生姜、大蒜で漬け込んだ後、ブラックペッパーとハーブが混ざった衣を付けてカラリと揚がったスパイシーな鶏もも肉の唐揚げ
菱和は咀嚼し、親指で唇を軽く拭いながら感想を云った

「‥‥超美味ぇ」

「でしょでしょ!?リサの母さんの唐揚げは、世界一なんだー!」

ユイは菱和の顔を見て、漸く自分も唐揚げを口へ運んだ

 

「───なんかさ、今の“あーん”、『彼氏に手作りのおべんと食べさせてあげる彼女』みたいだった」

カナはユイと菱和をまじまじと見つめ、おかずを口にしながら云った
パックジュースのストローを噛み、上田が同意する

「ふふっ、確かに。男が男に“あーん”は初めて見たけど、そんなに違和感無かったな」

「ユイくんがやるから良いんだよね、きっと」

「‥‥だからって、行儀悪すぎ。せめて箸使えば」

「いやー、ついいつもの癖で」

ユイは全く反省の色を見せていない

 

「───ユイが女ならちょうど良かったのにな」

拓真がボソリと呟くと、
上田は噴き出した

「ぶっ‥‥はははは!ユイが女!?全然想像出来ねぇ!」

「いや、仮にカップルだとしたら、ひっしーよりユイが女の方がしっくりくるじゃん?今より少しくらい淑やかになるかもしんないし」

「いやー、幾らユイが女で可愛いカオで“あーん”とか云ってきても、絶対カノジョにしたいとか思えないな」


「ん、何でさ?」

ユイがもぐもぐしながら上田に尋ねる

「えー?なんか、常に元気良すぎて根負けしちゃいそうで。こっちが具合悪いときまでずっとこんなテンションなら、正直参っちゃうわ」

「あ、それは確かにうざいかもな」

拓真と上田は苦笑いしながら顔を見合わせた

「でもさ、それがユイくんの良いところじゃない?ね、リサ?」

「‥‥カナはユイのうざさ知らなさ過ぎ」

「え?全然うざくないけど?もしユイくんが女の子だったら、一緒に色んなとこ遊びに行きたかったなぁ‥」

「女じゃなくても、全然行くけど!カナ、“PANACHE”のクレープ好きなんでしょ?俺も好きなんだよね、今度一緒に行こ!」

「ほんとにー!?拓真くん、リサも、今度ユイくん借りてっても良い?」

「どーぞどーぞ!気の済むまでご自由に」

「てか、私たちに同意得なくて良いから」

「大人気だねー、ユイったら」

「そう?へへっ!」

 

談笑しながら昼食をとる5人に対し、菱和は黙々と食べ進めている

いつもの屋上が、いつも以上に賑やかになる
輪になって談笑するこの光景が、“いつものこと”となるのに、そう時間はかからない
屋上にいる全員が、そう感じていた

 

食事を終え、ユイと拓真は上田が持ってきたトランプに興じ、そこに菱和とリサとカナも加わる

リサは一早く上がり、初めて見る屋上からの景色をぼーっと眺めていた

「‥‥唐揚げ、すげぇ美味かった。お袋さんに礼云っといて」

2番目に上がった菱和は、リサの元へ向かい、声を掛けた
リサは菱和の顔をちらりと見てすぐに目を逸らし、生返事をした

「‥‥ん」

「‥‥、観に来るんだろ?ライヴ」

「うん、行く。‥‥‥‥またあんな顔して弾いてたら、ぶん殴るから」

「相当痛そうだな、そりゃ」

「結構本気で云ってんだけど?」

「‥‥そ。でも多分、殴られずに済みそうだわ」

菱和は、穏やかに笑った
たまに見せる意地の悪い顔ではなく、穏やかな柔らかい笑顔

───こいつでも、こんな顔するんだ

リサはまだわかりかねている部分もあるが、ずっと抱いていた菱和の良くない印象は、とうに消え失せていた

 

「なーんの話してんのっ!」

3番手で上がったユイは、2人に駆け寄った
菱和は振り返り、無表情の中にも意地の悪そうな表情を含んで云った

「‥‥俺をサンドバッグにしたいんだとさ」

「‥なっ!!そんなこと云ってないでしょ!?」

「何だよリサ、ストレス溜まってんの?」

「うるさい!!あんたも余計なこと云うな!!」

 

クールな瞳に隠された優しさ
口に出さずとも伝わる、友達を想いやる心
不器用な素直さ

リサと菱和は似ているところがあるが、煽り耐性が高い分、菱和の方が一枚上手だった

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