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46 煙霧×生贄+洗礼
とある週末
SCAPEGOATとの合同ミーティングを兼ねた食事会を予定しており、Hazeの面々は会場であるレストランに入った
「ユウスケの名前で予約してんだっけ?」
「そうそう」
「ここね、ユウスケさんの知り合いがやってるお店なんだ。結構融通きくから、打ち上げとかによく使ってんの」
「ふーん‥‥」
「えーと、18時に予約してる“生野”です」
「“セイノ”様ですね。お待ちしてました、どうぞ」
店員に促され、“reserve”と書かれた札が置いてある席へと通される
SCAPEGOATのメンバーが来るまで、4人は暫し談笑をして待った
予定時刻を5分ほど過ぎた頃、SCAPEGOATのメンバーが到着した
「よー、遅れて悪い」
「こんばんはー」
脱退事件のときは特に気にしていなかった、というよりは気にしている余裕がなかったのだが、菱和はSCAPEGOATのメンバーの容姿に若干驚いた
ハジは袖が切りっぱなしのパーカーを着ており、肩から手首までトライバルの入れ墨が顕になっている
ユウスケはツートンカラーから黒に染め直し、その上から軽く青いスプレーをかけていて、穴が開いている全てのポストにゴツいピアスが付けられていた
ケイは、トップスは全体的に切り込みの入ったTシャツ、ボトムは太ももから足首まで派手に裂けたボロボロのダメージジーンズを穿いていた
シンプルなバンドTシャツに左膝だけがばっくりと開いたジーンズを穿いている上田が、どうしても普通に見えてしまう
以前、ユイが云っていた『上田が浮いてしまうほどガラの悪いメンバー』という印象が、この時初めて菱和にも伝わった
ハジたちは、菱和にも気さくに挨拶をした
「菱和くん、久し振り!元気だった?」
「‥‥‥‥はい」
菱和は軽く会釈をした
「大したことなくて、ほんとに良かったね」
「“Haze”加入、おめでとう!」
「有難う御座います。‥‥礼も詫びも出来なくて、すいませんでした」
顔を合わせるのは脱退事件の日以来
すっかり謝りそびれていた菱和は、深々と頭を下げた
ハジたちは面食らった顔をして、直ぐに噴き出し、笑った
「───ぷっ‥‥」
「っははは!そんなの全然気にすることないのにー!」
「そうだよ、俺らだってあんときなーんも出来なかったしなー」
「今後一切、堅苦しいのはナシ!ね?」
「菱和くん、これからも宜しくね」
菱和はまた軽く会釈した
ユイが横から耳打ちをする
「ね、みんなガラ悪いけど良い人たちでしょ!」
“良い人たち”なのは、脱退事件のときから既にわかっている
だが、見た目の印象よりも遥かに気さくで優しい人たちだと改めて感じ、菱和は納得してこくりと頷いた
「今日って、食べ放題飲み放題?」
「うん。がっつり食おうや」
「あー腹減ったー」
「酒は飲んで良いの?」
「アルコールは飲み放題に入ってないわ。飲みたいならまたの機会に」
「あっそぉ」
「何飲む?」
「面倒臭せぇから一杯目は全員コーラで良くねぇ?」
「じゃあ、二杯目から各自好きなの飲むってことで」
注文したコーラが席に届くと、全員グラスを持った
「じゃ、お疲れー!!かんぱーい!!」
少しずつ、食事も運ばれてきた
気軽につまめるポテトや唐揚げ、取り分けるタイプのサラダやピラフ、パスタが所狭しとテーブルに並ぶ
「んーと、一緒にやる曲ってEXTREMEだっけ?」
「そう、“CUPID'S DEAD”と“PLAY WITH ME”」
「ふわー‥‥どエラい選曲」
「どういう割り振りにしよっか?」
「当然、ヴォーカルはハジ。ギターは樹とユイに任せる。ドラムは交代で、やらない間はコーラス入って貰うって感じで考えてたんだけど‥‥」
「あっちゃんはどうすんの?」
「掛け合い多いし、歌う。適当にバッキングやるから。こんな感じでどうよ?」
「うん。良いんじゃない?」
「ベースは、小節毎に区切って弾けば良いかな」
「ギターもそうするべし?」
「そうだねー、どんな風にするか相談しなきゃね」
「今度、全員でスタジオ入るべ」
「うん、いつにしようか?」
食欲旺盛な男子が、8人
ボリュームのあるメニュー内容だったが食事はハイペースで進んでいき、締めのデザートもあっという間に平らげられた
「あー、食ったなー」
「んまかったー!ご馳走様でした!」
「さーて‥‥‥‥“アレ”、やりますか」
「あ、やっぱ今日もやっちゃう?」
「やるっきゃねぇべ!オネーサン、“裏デザート”一つお願い」
「かしこまりました!」
ハジはとあるメニューを追加注文した
数分後、店員が注文したものを席へ持ってきた
「お待たせしましたー」
店員が持ってきた皿には、一口サイズのシュークリームが乗っている
アタルはそれを指差し、ニヤニヤした
「この店の裏デザート、ロシアンシュー。このメンバーでここに来たら必ず頼んでんだ。8個の中に一つだけ“当たり”がある。残りは全部デスソース入り。ひっしー、どれでも好きなの選びな」
「え、アズ一人だけ?」
「まずは新入りから運試しだ」
普段であれば全員同時に食べているのだが、アタルは菱和にだけ先にシュークリームを選ばせた
菱和がこういった“ノリ”についていけるかどうか、或いはいつもの無表情が豹変する様を目撃したいだけのただの嫌がらせか
どちらにしても、これは菱和に対する“洗礼”だった
当たりの確率は8分の1
菱和はアタルに促され、特に選ぶ様子もなくシュークリームを一つ手に取った
全員が固唾を飲んで見守る中、菱和は何の躊躇いもなく口に放った
シュー生地はさくさくしていて軽い口当たりで、中にたっぷり詰め込まれたクリームにはバニラエッセンスと紅茶が混ざっている
くどくなく甘過ぎず、何個でも食べられそうだと思った菱和は、何度か咀嚼し味わった後シュークリームを嚥下した
そして、いつもと変わらず、無表情のままでいる
一同が、目を丸くした
「───‥‥‥‥あれ?」
「‥‥ひょっとして菱和くん、当たりだったの?」
「ん、美味いす。紅茶の味する」
途端、アタルはテーブルに突っ伏し激しく落胆する
「なーんだよおおぉぉぉ当たりかよおぉ!!つまんねぇえええ」
「‥‥‥‥、なんかごめん」
あまりの落胆振りに、菱和は取り敢えず謝罪した
「謝んなくて良いよ!てか当たりの確率低いのに、一発で当てるなんて!」
「っはははは!あっちゃんの目論見、見事に外れたね!」
「めっちゃ強運だねぇ、菱和くん」
「ほんと、すげぇな!」
「‥‥ご馳走様でした」
手を合わせ、挨拶をする菱和
落胆していたアタルは顔を上げ、意を決したように云った
「‥‥くそぉ‥‥‥‥じゃあ、俺らもいくかぁ」
「え、食うの?残り全部ハズレだよ?」
「そんなんわかってるよ」
「本気で云ってんの?」
「あたりめーだろ。いっつもそうしてんじゃんか」
「‥‥そだね、やっぱ残さないでちゃんと食わなきゃ」
「うぅー‥‥ですそーすぅ‥‥‥」
菱和以外の全員が、躊躇いつつもシュークリームを手に取る
「‥‥よーし、んじゃ『せーの』でいくぞ」
「うん」
「──────せーの!!!!!」
数秒後
菱和を除く他のメンバーはデスソース入りのシュークリームを口にし、悶絶した
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