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42 Tandoori Chicken & Qeema Curry
週末を迎えた
何度か練習を重ね、“SCAPEGOAT”との対バンの話も双方が合意し、来るべき日に備えて練習を積む
オリジナル曲を3曲、SCAPEGOATとのジョイント用に2曲
ジョイント用の曲は『とにかく楽しめるように』をコンセプトに、難易度は高いがそれぞれのパートが際立つ楽曲を選んだ
「“CUPID'S DEAD”と“PLAY WITH ME”か、なかなか思い切ったな」
「でも、超楽しいじゃん!」
「まぁなー、どっちも最後の最後まで楽しめるよな」
「しかし、ユニゾンは俺より変態ギターの方がお誂え向きだな」
「変態じゃないから!2曲ともずっと弾きっぱなしだからちょっとでも触らないと指が鈍るの!」
「はいはい。っつうか俺歌わなきゃなんねぇし、ギターはお前と樹がメインでやれよ」
「うん、わかった」
「ベースはユウスケと相談して決めろ。お前らなら色付けることも出来るだろ」
「うん」
「ま、近いうちあいつらともミーティングするべ」
「ああ、それなら上田が『飯行こう』って云ってたよ」
「‥‥それもアリか。たー、樹にもあいつらに連絡しとけって云っとけな」
「うん、了解ー。じゃあ、“CUPID'S DEAD”から行くね」
乾いたスネアの音が響き、長く伸びたベースラインに妖しいアルペジオが滑り乗る
ギターとベースの粒が揃い出し、並走して『号外』を伝える
『天使は死んだ』と
飽きるほど弾いてきたフレーズに、意図も容易く重なるベース
兄である尊とも幾度となく弾き合った曲を、今度は菱和と共に奏でる
ユニゾンパートが埋め尽くす楽曲に、ユイはワクワクとゾクゾクが入り交じった変な感覚に陥った
“パープルヘイズ”が“回る”
それは麻薬よりも気持ち良いものかもしれないと、ユイは思った
***
スタジオを終え、店外に出る4人
ユイは伸びをして云った
「よっしゃー、アズんちでご飯だー!」
「めっちゃ腹減ったー。ひっしー、リクエストして良い?」
「ん、何食いたい?」
「鶏肉が食いたいっす。“ガッツリ”って感じの」
「“ガッツリ”ね。わかった」
「俺、これからバイトだから帰るわ」
3人で献立を考えて歩こうとする中、アタルは3人とは逆方向に向かおうとしていた
「‥‥ああそっか、そうだったね」
「え、何バイトとか入れちゃってんの?空気読みなよ」
「お前に云われたかねぇわこのチビ!!!金曜の夜は書き入れ時なんだよ!」
“金曜の夜は書き入れ時”
菱和はその言葉を聞いて、アタルに尋ねた
「‥‥あっちゃん、何のバイトしてんの?」
「バーテンダーだよ!お洒落なバーで、カクテル作ってんの!」
ユイはシェイカーを振る真似をした
「‥‥へぇ‥‥‥‥、めっちゃ似合う」
「ふっふっふ。だろ?お前、来年二十歳だよな?一回飲みに来いよ、ご馳走するぜ」
「うん、是非」
「じゃあ、またねー!」
「おー、お前らも気ぃ付けてなー」
アタルは足早に帰宅し、ユイと拓真は菱和の家へ向かった
***
幾度めかの、菱和の自宅での晩餐
大好きな音楽を良いだけ堪能した後の菱和の作る料理は、いずれも絶品だった
今宵も、期待せずには居られない
「少し時間かかっても大丈夫?」
「うん、勿論!どうせ明日学校休みだし、俺らも少しのんびりしてくわ」
「時間とか全然気にしないで!何時まででも待つから!」
「‥‥ん」
冷蔵庫の中身を物色し思案したところ、菱和はタンドリーチキンを作ることにした
余り物の挽き肉と玉ねぎでキーマカレーを、同じく余っていた野菜を使いサラダを作った
「めっちゃ良い匂い!」
「ふおぉー、贅沢にサラダ付きか。てか俺、キーマカレー大好き」
「俺もー!頂きまーす!」
スパイシーで香ばしい香りを放つタンドリーチキンは食欲を唆る
手が汚れることを全く気にせず、ユイと拓真は手掴みでチキンを頬張った
タンドリーチキンと同じくインド料理であるキーマカレーには、目玉焼きが乗っている
半熟の黄身を潰すと、とろりと流れ出る
『この組み合わせは反則だ』と、2人は大満足で夕餉を堪能した
菱和は早々に食事を済ませ、まだ食事中の2人を残し、キッチンでドリンクを作り始めた
ヨーグルトと牛乳、生クリームを撹拌し、黒砂糖を加える
再び撹拌して、氷の入ったグラスに注ぐ
「まだ腹に入りそうなら、どうぞ」
少しとろみのあるヨーグルトラッシーを、2人の皿の傍らに置いた
「何、これ?」
「ラッシー」
「‥‥うまあぁ!ヨーグルトだ!」
「甘さとか固さ、大丈夫?」
「うん、ちょうど良い。俺サラサラより少しドロッとしたラッシーのが好き。今日はインド尽くしかぁ。‥‥ひっしーって、形に拘るタイプ?」
「ん、形から入る。特に料理は」
「こういうのって、誰かから教わるの?」
「そういう時もあるけど、ここに住むようになってからはレシピ見て適当に」
「ふぅーん、てかレパートリー半端ないね!」
「‥‥やり出したらハマっちまって」
「得意料理ってあんの?」
「‥‥‥‥‥‥何だろ‥‥、考えたことなかったな」
「料理ってセンスだからなー。元々そういう才能あったのかもね。器用だし」
「‥‥‥‥別にフツーじゃねぇか」
「ひっしーって、お袋さん似?」
「‥‥多分」
「そっかぁ。お袋さんも、さぞや料理上手なんだろうなー」
2人はタンドリーチキンとキーマカレーを食べ終えた後、ラッシーをもう一杯お代わりし、漸く食事を終えた
いつものことながら、胃は八分目以上に膨れている
ユイと拓真は胃を落ち着かせる為、のんびりと寛いだ
絶品の料理で胃が満たされた後は、自然と眠気が襲ってくる
ユイは大きな欠伸をした
「くぁー‥‥‥‥」
「ユイー、洗い物ー。今日はお前の番だぞ」
「あー‥‥うん‥‥‥‥」
ユイは目を軽く擦り、眠たそうにしている
灰皿が置いてあるキッチンから煙草の煙を吐きながら、菱和がユイに声を掛けた
「‥‥寝不足?」
「‥‥うん、夕べ朝方まで弾いてたから」
「はー‥‥ほんとお前は見境無いんだから」
「毎日弾かなきゃ、腕が鈍っちゃうもん」
「んー、そうかもしんないけどさぁ‥‥」
「だいじょぶ、洗い物はちゃんとやるよ。アズ、御馳走様!超美味かった!」
「‥‥お粗末さんです」
また一つ欠伸をし、ユイは食器を片付け始めた
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