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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/05/01:16

40 40 aglio, olio e peperoncino

スタジオを後にした4人は、だらだらと帰路につく
空は暗くなっており、2時間ほど練習をした4人はすっかり空腹になっていた

 

「腹減ったなー、なんか食ってくか」

「賛成ー!」

「あっちゃん、奢り?」

「んなわけねぇだろボケ」

「‥‥何なら、またうち来るか?そしたらあっちゃんも、余計な金使わなくて済むだろうし」

菱和は前回3人でセッションをしたときと同様に、また夕飯を振る舞うつもりで云った
ユイは目をキラキラさせて喜んだ

「えー、またなんか作ってくれるの!?行く行くー!!」

「そういや、『料理上手い』っつってたっけ」

「病み上がりなのに、大丈夫?」

「ん、もう全然平気」

「前から思ってたけど、お前タフだよなぁ」

「‥‥自分でもそう思います」

「何ヶ月振りかな、アズの晩飯!」

 

3人は、菱和の自宅に向かうことにした

 

***

 

「なんか食いたいもんある?」

「んー‥‥今猛烈にしょっぱ辛いもん食いてぇんだよな」

「“しょっぱ辛い”‥‥‥‥ペペロンチーノとかで良い?」

「お、パスタか!良いねぇ!」

「お前らは?」

「俺、何でも良い!」

「パスタかー、カルボナーラが絶品だっただけに楽しみだなー」

3人は談笑しながら、菱和が料理を終えるのを暫し待つ

程なくして、オリーブオイルと大蒜が絡む香りが漂ってきた
ガーリックチップが油で跳ねる音が聴こえ、3人の食欲はより一層唆られた

ユイと拓真が前回のカルボナーラを大絶賛していたのは知っているが、未だ菱和の料理を口にしたことのないアタルは、果たして本当に美味いのかどうか半信半疑だった
アタルのお眼鏡に敵うかどうかはまだ定かではないが、菱和は怠そうに煙草を喫いながらさくさくと調理を進めていった

 

「頂きます!」

「‥‥どうぞ」

ユイと拓真は揃って手を合わせ、ペペロンチーノを口にした
前回同様、2人は菱和の味に絶賛した

「‥うんまぁ!!!サイコー!!」

「はー、塩加減絶妙だわ!今日もお代わりある?」

「あ、俺も俺も!」

「ん、多目に作ったから」

「‥ラッキー!」

2人の様子を見て、アタルもパスタを口に運んだ
数回咀嚼した後、その手が止まる

「‥‥あっちゃん、どしたの?」

ユイはパスタを頬張ったまま話し掛けた
どこか様子のおかしいアタルに、菱和も声を掛けた

「‥‥口に合わなかったすか‥?」

アタルは口の中の物を飲み込み、驚愕の顔で菱和を見た

「‥‥美味ぇ。‥‥‥‥多分今まで食った中でいちばん美味ぇ‥‥。お前、マジ何者?」

アタルの一言に安堵し、菱和は少しだけ口角を上げた

「‥‥フツーすよ」

3人は、瞬く間に目の前のペペロンチーノを平らげ、揃って菱和に“お代わり”を要求した

 

「スタジオの後にアズの料理食えるなんて、サイコーだね!」

「ああ、至福のときだなー。良いだけ演った後のこの味は反則だわ、ほんと美味いもん」

「‥‥お粗末様です」

「ねぇ、もしアズが良ければ、これからスタジオ帰り飯食ってっても良い?」

「それヤバいな。俺もその案賛成ー」

「‥‥あぁ。別にスタジオ終わりじゃなくても、飯くらいいつでも」

「ほんと!?じゃあ、今度から材料費払うね!」

「良いよ、要らねぇ」

「それは駄目!!ずぇーっっったい駄目!」

「そうそう、今日からちゃーんと払います」

「‥‥わかった」

「うん!ご馳走様でした!」

そう云って、ユイと拓真は食器を片付け始めた

 

話し合いの後、今回は拓真が後片付けをすることになった
早々に洗い物を済ませ、ユイと拓真は菱和の部屋で雑誌を読みながら談笑に耽っていた

菱和はキッチンの換気扇をつけ、煙草を喫い始めた
アタルもその横に並び、自分の煙草に火をつける

「お前、面倒見良いのな」

アタルは煙草を吹かしてそう云った
菱和がどういう人間なのか、関わるようになってからいちばん日が浅いアタルは未だわかりかねていたが、スタジオで時間を共にしてから現在までに抱いた菱和の印象を本人に伝える

菱和は俯きながら話し出した

「‥‥‥‥何が良いのか、どうすりゃ普通なのか、正直まだわかんなくて。でも自分が“楽しい”とか“これが良い”って思ったら、結局何でも良いのかなって。‥‥それだけす」

 

“コミュ障”と云いつつも自分の話をし出す菱和に、アタルは煙草を咥えたまま面食らった

幼い頃から一緒に過ごしてきたユイたちは既に関係性が構築されており、友達の家で食事をすることは決して特別なことではなかった
“これから”は菱和にとっても普通のことになってゆくのだろうが、“これまで”には考えられなかったこと

無表情で無愛想で無口
自他共に認める菱和の印象は一見冷たく見えるのだが、元々根は真面目で、年上を敬いアタルに敬語を使うことからもそれが窺い知れる
間違ったことを赦さず、硬派なところもある

 

菱和の担当であるベース
周りの音を聴き、決して邪魔をせず、地にしっかりと根を下ろし支える
目立たず地味ながらも重く厚いその音はバンドには必要不可欠であり、絶対に無くてはならないものだ

───“ぶっとくて、芯が強い”

菱和に抱いた印象と、パートである楽器が、アタルの頭の中でぴったりと重なった

「お前って、ベースみてぇな奴だな」

アタルは菱和の顔を覗き込んでそう云った


「‥‥どうせ学校でもあんな感じなんだろ、あいつら。うるせぇガキ共だけど、宜しく頼むぜ」

そして穏やかに笑い、菱和の肩を軽く叩いた

 

誰かに必要とされることなど皆無だと思っていたが、いつの間にか自分を頼ってくれる人間が何人も現れた

“バンド仲間”とは、実に不可解なもの
同じ音楽を奏でるという共通の目的で結ばれている関係性に過ぎない筈なのだが、そこから垣間見える人間性は、バンドを続けていく中で重要なものになっていく

まだお互いをよく知らない2人だが、何とかやっていけそうだと無意識のうちに確信し、喫いかけの煙草をゆっくりと味わった

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