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33 LAST⑨※
◆◆◆喧嘩のシーンがあります 暴力的な描写が苦手な方はご注意下さい◆◆◆
***
『あ、あっちゃん?取り敢えず知り合いに“BLACKER”って奴等のこと聞いてみたんだけど、やっぱギャング崩れのクソみたいな集まりだわ。頭の奴はメンバー放逐気味で、あんまり顔出さないって話』
「ふーん。無秩序なわけね」
『でさ、よくよく聞いてみたら、“WINDSWEPT”の“高橋”が“BLACKER”の頭とマブダチみたい』
「‥‥“タカハシ”?」
『うん。これがほんとの話なら、もしかしたら何とか出来るかも知れないかなって思ったんだけど‥‥』
「今そいつと連絡取れっか?」
『ああ、今ハジが連絡してる』
「そっか。‥‥悪りぃな、マジで」
『全然!寧ろこんなことしか出来なくてごめんなんだけど』
「いや十分だよ。またなんか動きあったら教えてくれ」
『りょ!』
***
菱和とリサがいる廃ビルの向かい側に、一台のセダンが停っていた
運転席にはアタルが、後ろの席にはユイと拓真が乗っている
アタルは煙草を咥えながら廃ビルを指さした
「あれだ」
「あの中に、いるんだね?」
「恐らくな」
「よしっ、行こう!」
「───ちょぃ待ち!‥なんか人倒れてる」
車のドアを開けようとするユイを、拓真が慌てて制止する
よく見ると、廃ビルの入口付近に7、8人転がっていた
その全員が、項を垂れたり腹や頭を抱えたりしている
「ひょっとして、菱和がやったんじゃ‥‥」
「かもな。ひと暴れしたんじゃねぇの?」
「でも菱和は、『暫く喧嘩はしてない』って云ってたよね?」
「‥確かめてみようぜ」
アタルは煙草を消し、車を降りた
ユイと拓真もアタルに続いて車から降りた
「コンバンハ」
転がっている何人かはアタルの顔と赤髪にビビった
特に凄んでいる訳でもないのだが、アタルはその見た目だけで強烈なインパクトを放っている
「なぁ。お前ら誰にやられた?」
「な、なんだよあんた‥‥あいつの知り合いか‥?」
アタルは冷たく見下ろしながら、心底不機嫌そうに話した
「何タメ口きいてんだよ、このタコ助。つーかこっちが聞いてんだよ、質問に答えろや。誰だよ“あいつ”って。背が高くてブアイソで髪の長い奴のことか?」
菱和の容姿を簡単に云っただけなのだが、アタルが話し掛けた人物はすっかりビビってしまっている様子だった
「───ひっ‥‥そ、そう、です‥」
「‥ビンゴ」
アタルはニヤリとした
それを聞いたユイは、直ぐ様走り出そうとした
「よし、行こっ!」
「ちょっと待てよ!まだ中にいるって決まった訳じゃ‥」
またしても、拓真が制止する
「地下にいるとよ」
振り返ると、先程質問をした人物の顎を掴んでいるアタルがいた
「あ‥そう」
「拓真、行くよ!!」
「行くよって、こいつらみたいなのがまだ中にいるかも知んないだろ!?」
拓真はユイを冷静にさせるつもりでいたが、ユイは拓真の意に反しにこりと笑った
「ダイジョブ!俺、剣道初段だから!‥‥中学からやってないけど!」
ユイはその辺に転がっていた角材を持って軽く素振りをし、廃ビルに入っていった
「自慢にならねっつの。‥ああもう!」
拓真は半ば自棄っぱちになりつつ、走り出すユイの後を追った
「‥‥随分威勢のいいこって、クソ度胸が」
アタルは立ち上がって煙草に火を点けながら、軽くほくそ笑んで二人を見送った
一息煙を吸うと、すっかり怯えた様子の男をちらりと見た
「さて、と」
「ひっ‥す、すいませんでした‥‥!」
「───ひとつ聞きてぇんだけどよ」
アタルは煙草を咥え、いやらしい笑顔を見せながら云った
「お前らのリーダーって、誰?」
***
廃ビルの地下では、古賀が菱和にリンチを繰り返していた
菱和の顳かみや顔から鮮血が流れ、床に滴り落ちている
古賀は殴るだけでは飽き足らなくなってきたのか、菱和の腹に蹴りを入れた
一瞬息が止まりそうになった菱和は声にならない声を捻り出し、力なく頭を垂れている
「───っこの卑怯者!!最低野郎!!!」
リサはリンチをされる菱和をただ黙って見ているしか出来ない自分に苛立ち、古賀たちにその苛立ちをぶつけた
古賀は菱和に手を出すのを一旦やめ、リサに近付いた
「‥‥うるせぇな、先にヤっちまうぞ」
リサの頬に平手が打ち下ろされた
リサの口元が、若干血で滲んだ
ビリビリとした痛みを感じつつも、リサは古賀に向き直り、ギラリと睨み付けた
「‥気に入らねぇな、その目」
古賀は再びリサに手を上げようとした
「───やめろ」
咳き込みながら、菱和が制止する
「そいつに、手ぇ出すな」
菱和の息が、荒く乱れている
擡げた首を漸く上げ、古賀を睨んだ
「そんなに大事か、この女が」
「‥‥、大事なダチだ」
菱和の長く伸びた前髪の隙間から、鋭い眼光が光る
古賀はそれを嘲るようにし、リサに拳を向けた
「そうかよっ!!」
菱和は振りかぶる古賀を見て、目を見開いた
後方にいる駒井に頭突きを食らわし、その拍子に怯んだ高野に肘鉄を入れて拘束を逃れると全力で古賀にタックルし、リサの頭を抱えた
「‥菱和、あんた───」
「お前だけは絶対護る」
体当たりを食らった古賀は床に倒れたが直ぐに立ち上がり、菱和がリサを庇う姿を嘲笑った
「‥っは、男前だなぁほんと。‥‥やれ」
先程まで菱和を拘束していた駒井と高野は不意打ちに多少のダメージを食らったものの、古賀の指示を聞いて菱和に迫った
容赦なく菱和に襲いかかる駒井と高野
菱和が攻撃を食らう度に、振動が伝わる
庇護を受けるリサは、堪らず叫ぶ
「菱和‥菱和!!もういいからっ!離れてっっ!!」
「‥黙ってろ」
菱和はリサをきつく抱き締め、低く呟いた
「お前はあいつの大事な幼馴染みだろ。絶対護る」
リサは居たたまれなくなり、涙が出そうになるのを堪えてぎゅっと目を閉じた
「‥‥顔だけじゃなく中身も男前かよ。マジ気に入らねぇ」
古賀は鉄パイプを持ち、菱和が先程ナイフで切り裂かれた左腕を力任せに殴りつけた
続け様に三度ほど、同じところを目掛けて振り下ろされる鉄パイプ
骨と金属がぶつかる鈍い音がする度に左腕に痛みが走り、菱和が奥歯を鳴らす音が聴こえた
「痛てぇか?菱和」
古賀は笑いながら鉄パイプを放った
冷たい金属音が乾いた音を立てる
菱和は左腕を押さえながら、リサの膝に崩れ落ちた
「菱和‥菱和!」
リサは涙ぐみながら必死に声を掛けた
菱和が痛みで顔を歪ませ、震えているのがわかる
「バカじゃないの、あんた‥‥」
「‥‥‥あいつにとって大事なもんは、俺にとっても大事だ」
菱和は左腕を庇いつつ、立ち上がろうとした
何故ここまで自分を護ろうとするのか───
「───ほんと、バカじゃないの」
リサの心に、尋常ではない怒りと苛立ちが募る
「あんた、こいつらじゃなくてユイたちとバンドやりたいんでしょ!?もうとっくに腹ん中決まってんでしょ!?だったらこんな奴らさっさとぶっ飛ばしなさいよ!!!」
「うるせぇ女だな、黙ってろ!!」
「あんたらなんかちっとも怖くない!!一人じゃ何も出来ないくせに意気がってんじゃないよ!!!」
リサは古賀の怒鳴り声に臆することなく、自由の利かない身体で菱和を庇いながら激昂した
「───生意気云ってんじゃねぇぞ!!」
逆上した古賀は再び鉄パイプを持ち、振り翳した
リサはぎゅ、と硬く目を閉じた
菱和は左腕で咄嗟に古賀の攻撃を防いだ
菱和の手首に、鉄パイプが直撃する
───やべ、外れたかも
骨が砕けたような鈍い音にリサは目を見開き、硬直した
「‥菱和‥‥!!」
「ああもう、うぜぇんだよっ!!!」
菱和がまだリサを庇おうとしていることに怒りが込み上げてきた古賀は力任せに鉄パイプを振り、菱和を殴りつけた
顳かみに鉄パイプが炸裂し、菱和は吹っ飛んだ
「菱和っ!!‥‥お願い、もうやめて‥!」
リサは涙ぐみながら古賀に訴える
俯せで床に転がる菱和
頭の中がぐらぐら揺れている
床には血溜まりが出来ていた
「‥‥そろそろ終わりにしようぜ、菱和」
古賀は菱和の髪を鷲掴みにし、無理矢理上を向かせた
菱和の身体はだらりと脱力している
食い縛った歯の隙間から荒い息が漏れ、顎から血が滴り落ちた
「これが最後だ。バンド抜けるの考え直したか?」
「───‥‥」
菱和は暫く虚ろな目で古賀を睨み付け、口に溜まった血液をその顔に吐き飛ばした
古賀の頬に、菱和の血液が垂れる
「‥‥死んでも、ごめんだ」
その言葉と共に、ふ、と笑った
刹那、古賀は菱和の顔を床に叩き付ける
「───じゃあ望み通り殺してやるよ」
古賀は菱和の手の甲を踏み躙った
リサは、怯えた目で古賀の行為を見つめた
「な‥何するつもり‥‥!?」
「一本一本、綺麗に刻んでやるよ」
古賀は菱和の手を踏みつけたまま床に固定して指を広げ、そのすぐ横にナイフを突き立てた
「おい、古賀!それはやり過ぎだろ!」
駒井と高野は急に焦り出した
「知るか。コイツが悪いんだ」
「だめっ!やめて!楽器、ベースが、弾けなくなる!!」
「そのつもりだよ。全部綺麗にバラしてやる」
「菱和っ!菱和ぁっ!!起きなさいよ!!菱和っ!!!」
リサが無我夢中で叫ぶ
───は‥‥情けねぇな‥‥‥畜生、身体が動かねぇ
菱和は指先すら動かすことも出来ず
徐々に意識が遠のいていった
「じゃあな、菱和」
「───やめてええええぇぇっっ!!!」
リサの叫び声が、虚しく響く
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