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32 LAST⑧※
◆◆◆喧嘩のシーンがあります 暴力的な描写が苦手な方は閲覧にご注意下さい◆◆◆
***
わけもわからぬうちに車に乗せられて来たところは、長らく無人だったであろう廃ビル
窓ガラスは割れ、至るところに空き缶や煙草の吸い殻が散乱しており、壁一面にスプレーで落書きがされてあった
嘗ての活気あるオフィスか何かの残骸はいつしか不良の溜まり場と化してしまったのだろうと、容易に想像がつく
リサは地下に通され、後ろ手に縛られていた
天井から吊るされた電球が薄暗く灯る地下の一室で、古賀は駒井や高野と共に菱和が来るのを待っていた
“BLACKER”の面々に菱和をぶつけ、ボロボロになったところで自分に跪かせ菱和の全てを掌握し、今後二度と逆らえないようにするつもりでいる
人質として拐われたリサは助けが来る可能性を微塵も感じられなかったのだが、真に身の危険を感じ、古賀たちに歯向かうようなことは一切しなかった
高野は一度地下室を出て、外の様子を見に行った
古賀は錆びれたパイプ椅子に座り、ニヤつきながらリサに話し掛けた
「意外と大人しいのな、お前。あいつと関わったばっかりに‥‥可哀想になぁ」
「‥‥どうするつもり」
「さて、どうすっかなぁ。お前をマワすのは簡単だけど、それだけじゃつまんねぇんだよなぁ。まぁ、菱和ボコってから考えるわ」
“マワす”という言葉が、耳障りに感じる
リサはきつく古賀を睨んだ
来るな
外にも変な奴等が沢山居た
来たら駄目だ、やられちゃう
折角あいつの本気が見られると思ってたのに
今日みたいなつまらないあいつじゃなくて、ほんとに楽しくベースを弾く姿を
こんなこと、面と向かってあいつに云える話じゃないけど
お願いだから、来ないで───
リサはこれから自分がどうなるかということよりも、菱和の身を案じていた
高野が急ぎ足で部屋に戻ってきた
「古賀、外の奴等全員やられたっぽいぞ!」
「ふーん‥‥じゃあ、もっとあいつら呼んどけ」
古賀は高野に携帯を放った
高野はそれを受け取り、“BLACKER”のメンバーに応援を寄越すようにと連絡をした
程なくして、重たい扉が開く音がした
軋む扉のドアノブを握り締め、菱和が静かに室内へと足を踏み入れた
薄暗い灯りに灯された菱和は、顔に幾つかの傷を作っていた
だらりと垂れた左腕は、赤く染まっている
部屋の奥には古賀と駒井と高野
そして、その脇にリサが座り込んでいた
菱和───
傷だらけの菱和の姿を見てリサは驚愕し、目を見開いた
古賀はニヤリと笑う
「‥お前、やっぱり喧嘩強かったんだな。普段は大人しい振りしてたのか?」
「‥‥何もしてねぇだろうな」
「無傷だよ、“まだ”な。でもお前の態度次第じゃ、お前もこの女もただじゃ返さねぇ」
古賀は椅子から立ち上がり、床を指差した
「脱退の話は無しだ。お前の居場所は、俺らのとこだよ。そこで土下座でもすりゃあ、今ならまだ許すぜ」
「‥嫌だと云ったら?」
「傷物になっちゃうかもなぁ、この女?」
「‥っ、離してっ!!」
リサが襟元を掴まれる
自由が利かないながらも抵抗しようとしていた
「良いねぇ、威勢が良くて。ヤり甲斐があるぜ、なぁ?」
下品に笑う古賀
菱和は無表情の中に怒りを滲ませ、語気を強めて云った
「そいつは関係ねぇ。離せ」
「だから云ってんだろ、お前次第だよ」
古賀はポケットからナイフを取り出し、リサの胸元を裂いた
「やっ‥‥何すっ‥‥!」
キャミソールと下着が、顕になる
「───胸糞悪りぃ」
菱和は低く呟いた
「‥それ以上そいつに何かしたら、外にいた奴等程度じゃ済まさねぇ」
古賀はナイフをポケットに納めながらニヤついた
「あ?やれるもんならやってみろよ。お前一人で勝てると思ってんの?」
───もう喧嘩はしねぇって、決めたんだけどな
「‥‥‥‥穏便に済まそうとしたのが間違いだったな」
菱和は拳を握り締めた
「良い子ぶってんじゃねぇよ。お前は不良だろ?」
「‥‥昔ちょっと、“悪かった”だけだ」
「どっちだって良いさ。おい、お前ら。“交渉決裂”だってよ」
古賀に指示され、駒井と高野は喧嘩の姿勢に入った
一緒にバンドをやっていたことなどもう関係無い、古賀に荷担した時点で手加減する気も沸かない
いやいや古賀に付き合わされていたことは、ずっと前から知っていた
でも、そんなことはどうでも良い
こいつらも、完膚なきまでに叩きのめす
「‥容赦しねぇぞ」
全ての感情を怒りに変え、菱和は二人を睨み付けた
暫しの睨み合いの後、駒井が踏み込んだ
菱和は、向かってきた駒井に回し蹴りを食らわす
重い蹴りが腹に直撃し、駒井は倒れた
嗚咽を出しながら腹を抱える駒井に近付くと、菱和は更に顔面と腹に蹴りを入れた
動きが鈍くなった駒井に一瞥くれると、今度は高野に視線を向けた
高野は駒井が蹴られたのを見て躊躇っていたが、程なくして殴りかかってきた
その攻撃をするりと躱し、菱和は背中に肘を入れる
その場に倒れ込む高野
菱和はその体を仰向けにし馬乗りになり、無表情のまま高野の顔面を何度も殴り付けた
高野の顔が、あっという間に血だらけになった
───凄い
リサは初めて本物の喧嘩を目の当たりにし、普段の無表情からは想像もつかない菱和の喧嘩の強さを実感した
古賀はその様子を傍観し、感心していた
「ふぅーん‥やっぱ強えぇんだなぁ‥‥」
「───あっ!!?」
菱和はリサの声に反応し、殴るのをやめて振り返った
古賀がリサの髪を掴み、頬にナイフを当てている
「‥‥でも、そろそろ大人しくした方が良いんじゃねぇか」
リサ───
「触んじゃねぇっっ!!!」
「───菱和!後ろっ!!」
リサが叫んだ刹那、菱和は背中に鈍い痛みを感じた
明らかに背中を殴り付けたものが人の感触ではないと思った菱和は、声にならない呻き声を上げる
菱和の身体を殴打したのは、駒井が手にしている冷たく錆びた鉄パイプだった
駒井は口を拭いながら鉄パイプを放った
乾いた金属音が響く
高野は震えながらゆっくりと立ち上がり、ふらふらと菱和から離れた
古賀は駒井と高野に、菱和の身体を起こすよう指示した
二人は菱和の腕を掴んで拘束し、膝で立たせた状態にした
「さぁて‥‥どうすっかな?‥ま、取り敢えず殴るわ」
古賀は菱和の顎を掴み、その顔面を殴った
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