NEW ENTRY
(12/31)
(12/31)
(12/31)
(12/02)
(11/09)
[PR]
28 LAST④
4曲ほど演奏し、BURSTの出番は終わった
菱和のバンドを観終わり、ユイと拓真、リサはSCAPEGOATのメンバーたちと一緒に会場から出た
「てか、上田たち他のバンド観なくて良かったの?」
「ああ、うん。俺らも菱和観に来たようなもんだから。それよかこの後なんか食い行かねぇ?」
「行きたい!‥‥けど、拓真とリサは大丈夫?」
「俺は大丈夫だけど」
「私も」
「じゃ、あっちゃんにメール入れとくわ」
拓真はアタルにメールを打ち始めた
「ね、そんなら菱和も誘ってみない?」
「おー、良いねぇ!あとで控え室行ってみっか」
「ゆっちゃん、体調どう?」
「平気だよ!菱和のベースばっか聴いてたから、口ん中すっげぇ甘い!」
「ゆっちゃんて、ほんと面白いね」
「今度、俺の“味”も教えてよ?」
「もっちろん!菱和が入ってライヴやるときは、対バンしよ!」
「おお、それ絶対楽しいよ!」
和気藹々と和む、ユイと拓真、SCAPEGOATのメンバーたち
リサは拓真の袖を軽く引っ張った
「私、ちょっとトイレ」
「あ、うん。わかった。出たとこで待ってるわ」
「お、俺も。リサちゃん、トイレこっち」
ハジはリサと一緒にトイレに向かおうとした
その後ろから、ユウスケが野次を飛ばす
「とかってー、連れションする気じゃねぇだろうなー!?」
「ばっか、流石に無理でしょ!てか今のセクハラだし!」
ケラケラと笑いながら、ハジはリサをトイレの方へと促して行った
トイレへ行く途中、ハジはリサに申し訳なさそうに云った
「ごめんねー、下品な奴らばっかでさ。‥‥って、俺が一番下品か。若いコと一緒に居るの久々でさ、ついはしゃいじゃって‥‥」
「‥‥いえ。私もこういうの久し振りなので、楽しいです」
「‥そ!良かった!多分俺の方が早く終わると思うから、ゆっちゃんたちと一緒に出口で待ってるね」
いそいそとトイレに入っていくハジに、リサは軽く会釈した
***
用足しを終えて、リサは出口を探した
決して広い箱ではないが、初めて来る場所はいまいち慣れない
うろうろしているうちに、出番を終えた菱和とばったり会った
リサは一瞬顔を顰めたが、菱和は特別驚いた様子もなくリサに話し掛けた
「───何だ、来てたんか」
「‥‥‥‥ユイに誘われたから観に来ただけ。私がここにいちゃ悪い?」
「‥‥別に。あいつらは?」
「外出てる。もうみんな帰るから」
「‥‥そ」
リサは菱和を見上げて、大きな瞳で見つめた
「‥‥みんな不思議がってる。何であんたがあのバンドに居るのか」
「‥‥‥‥ふぅん‥」
「まぁまぁ、なんじゃないの。ベース」
「そうかい。そりゃどうも」
菱和は少し口角を上げて、壁に寄りかかった
リサは、いかにもつまらなさそうな顔をしてベースを弾く菱和の姿を思い出した
「‥‥‥‥別に、あんたのこと認めた訳じゃないから。あんたがバイだろうがゲイだろうが、どうだって良い。でも、ユイたちのバンドに入ってから今日みたいな腑抜けた演奏したら、ただじゃおかない」
何度か見た、鳶色の目
その瞳に映る、自分の姿
それは、俺があいつらと演ってる姿なんだろうか
ちゃんと、こいつの目に映し出されるんだろうか
どちらにしても、こいつはそれを歓迎してくれている
少なくとも、『やわな演奏をするな』と云ってくれる程度には───
素直ではない、だがいつもとは少し違う態度に、菱和はふっ、と笑みを零した
「‥‥‥‥取り敢えず、俺はバイでもゲイでもねぇんだけど。いつの間にかめちゃくちゃ誤解されてるみてぇだな」
リサは、笑う菱和をじろりと睨み付けた
「どの辺が誤解だって云うの?」
「云ったろ、あれはただの悪ふざけだって。でもお前にしたら、マジで気に食わなかったんだろうな。っつうか、俺がお前でも相当ムカついたと思う。もうあいつに変な真似はしねぇよ。約束する」
菱和はリサを真っ直ぐ見つめた
その表情と言葉に少し安堵し、リサはふっと顔を逸らす
「‥‥‥‥あっそ」
「‥‥まぁ、あいつらとバンド始めて俺の気が変わるかどうかはまた別の話、だけどな」
「っ!!ちょっ‥‥!」
菱和は笑みを浮かべたまま、憤るリサを残して去っていった
閑散とする箱の隅に、物陰に隠れるようにして2人の会話をこっそり聞いている古賀の姿があった
***
出番が終わったBURSTのメンバーは、控え室に戻っていた
菱和は楽器を置くとすぐさま煙草を喫いに出て行った
脱退についての話は平行線のままで、苛ついてギターを投げ捨てた古賀も、一旦控え室から出て行った
駒井と高野が楽器の片付けをしていると、古賀が戻ってきた
「あー、苛々すんなぁマジで」
そう云うなり、椅子にどかっと座り込む
「もう諦めれば?代わりのベース捜せば良い話じゃん」
「お前ら何とも思わなかったのか?あいつ、俺らと居て『つまんねぇ』とか抜かしやがったんだぞ?マジでムカツクわ」
古賀はその辺にあったペットボトルを壁に投げつけた
「まぁ、菱和みたいな奴にとっては真面目にバンド出来る方が向いてんのかもな」
「ああ、あんだけ上手けりゃな‥‥てかまたサポートって形で誰か引っ張ってくりゃ良いんじゃん?」
駒井と高野は、菱和が脱退することに対して何とも思っていないようだった
古賀だけが納得しておらず、苛立ちを募らせる
「そんなのはどうでも良いんだよ。問題はあいつがムカツクってことだ」
「んなこと云ったって、菱和だって一歩も引く気なかったじゃん?」
確かにそうだった
ただの無口で無愛想な独活の大木みたいな野郎
普段は全く喋らないのに、脱退に対してはえらく頑なだった
仏頂面の裏側は、とんでもない頑固野郎だった
古賀は、天井を仰ぎ、ぼそりと呟いた
「───ひとつ、考えがあんだけどよ」
「何?」
「あいつさっき、女と喋ってたんだよ」
「女?」
「ああ、ちょっと目付き悪いハーフみてぇな女。あの野郎、『興味ねぇ』とか云っときながらその女とはめっちゃ喋ってやがったんだ」
「ふーん‥‥意外だな、菱和が女と喋るなんて」
「だろ?だからよ、そいつ拐おうぜ」
古賀はニヤリと笑った
駒井と高野は、顔を顰める
「──────え、何云ってんの?」
「バンド抜けんのとその女と交換条件出せば、あいつも考え直すだろ?結構親しく喋ってたしよ、まぁまぁ仲良さげな奴だったら、ダメージでけぇじゃん。良い案だと思わねぇ?」
古賀はいやらしい笑みを零す
「どうなんだろ‥‥、わかんねぇけど」
「っつうか犯罪だろそれ」
「とにかく、あいつにゃマジでムカついてんだよ。それくらいやっても良いだろうが。おい、“BLACKER”の奴らに連絡しとけ」
「は!!?“あいつら”まで使う気かよ!?」
「ついでだからボコってやろうかと思ってさ。これであいつは俺の言いなりになるしかないだろ?一石二鳥だ」
古賀は高笑いをした
駒井と高野は顔を見合わせて顔を歪ませる
途端、古賀は2人を睨み付け、怒鳴り散らした
「──────何ボケッとしてんだ早くしろよ!!!お前らも俺をムカつかせんのか!?一緒にやっちまうぞ!!」
駒井も高野も古賀には逆らえないようで、押し黙った後、頷いた
「‥‥わかった」
「ったく‥‥黙って云うこと聞いてりゃ良いんだよ!」
古賀は椅子から立ち上がり、また笑みを浮かべた
「さて、と。あの可愛こチャン、迎えに行くか」
PR
- トラックバックURLはこちら
