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26 LAST②
土曜の夕方
アタルはユイと拓真を車で迎えに行った
リサ・カナと合流し、5人はファーストフード店で軽く食事をしてから“M Labo”というライヴハウスへ向かった
助手席には拓真が、後部座席にはユイとリサとカナが、アタルの運転するセダンに乗っている
「私、ライヴなんて久々!尊さん居なくなる前に行ったっきりだからすっごい楽しみ!しかも、菱和くんが出るんでしょ?どんな感じなんだろー?」
「絶対カッコ良いよ!次からは俺らと一緒にライヴやるし!」
「それも楽しみ!ね、リサ?」
「‥‥別に」
和気藹々とはしゃぐ車内
学校祭での保健室の一件が思い返され、リサだけは浮かない顔をしていた
***
“M Labo”に到着した5人は、早速中へ入る
既に大音量でBGMが流れるライヴハウス内は、客でごった返していた
「ユイ、出てなくて大丈夫?」
「うん、ちょっと外出てる。菱和の出番になったら教えて」
「ほいほーい」
「じゃあ、少し前の列取っとくか」
「私も行くー!」
「あんま離れんなよ。下手したらダイブ食らうからな」
「え、それちょっと怖い‥‥」
「カナちゃん、あっちゃんの傍に居れば大丈夫だよ。この顔と髪見たら誰もダイブなんてしてこないから。いざとなったら、あっちゃん盾にしちゃって」
アタルは一言で云えば派手な顔をしている
ややつり目気味の目付きは、普通にしていても鋭く睨み付けているように見える
そして、髪は赤く染め、整髪料で逆立てている
また、長身で大柄な体格であり、パッと見“ガラの悪いあんちゃん”にしか見えないのだ
「てめ、勝手に決めんな!とっとと行くぞ」
拓真とアタルとカナは、ごちゃごちゃに混んでいるステージ前へと紛れて行った
「リサは、行かないの?」
「‥‥私も外出てる」
「ふーん。じゃあ、行こっ!」
ユイとリサは、一旦ライヴハウスの外へと出た
ライヴハウスの入り口は、出入りする客で犇めいている
ユイとリサは、入り口前に置かれたテーブルで話をしていた
「便利なんだか不便なんだかわかんないね、共感覚って」
「そうだね、俺もよくわかんない。でも面白いよ、色んな味がしてさ。味でその人の印象も全然違ってくるし」
「ふーん‥‥‥‥あいつは、何味だったの?」
頬杖をつきながら、リサは素っ気なくユイに尋ねた
「ん、菱和?実はねー‥‥」
ニヤニヤと勿体振るユイ
『実は、尊と同じ味』
そう話そうとした矢先
ユイは、後ろから声を掛けられた
「よー、ユイ!」
「───上田!‥‥てか、ハジさんとユウスケさん!ケイさんも!」
ユイが振り返ると、上田と並んで歩いてくる男性が3人
気さくに話し掛けてくる
「ゆっちゃーん、久し振りー!元気だった?」
「あれ、少し背伸びた?」
上田以外の3人は、ユイの肩に腕を回したりハイタッチをしたり、仲の良さそうな雰囲気だった
しかし、その外見は初対面であれば思わずたじろいでしまうようなものだった
ガラの悪いサングラスをしていて、手首に入れ墨のある男
黒と金のツートンヘアに伊達眼鏡、かなりゲージの大きいピアスをしている男
ボロボロのパンクファッションに身を包んだ、一見女の子に見えなくもない男
リサは、目を瞬かせた
固まるリサに、上田が話し掛ける
「コンバンハ、近藤サン」
「‥‥こんばんは」
上田以外の面々に度肝を抜かれたリサは、上田に返事をしたものの、何となく気まずさを拭えなかった
上田以外の3人は、すかさず顔を覗かせる
「なになに、ゆっちゃんのカノジョ!?」
「ううん、幼馴染みのリサ!」
ユイは、リサの心情などお構いなしにリサを紹介する
「へぇー!めちゃくちゃ美人さんだね!」
「ゆっちゃん、こんな可愛い娘とお友達なの?超うらやま!」
「リサちゃんってぇの?俺、ハジです!こんな成りだけど、俺ら全然アヤシイもんじゃないから!」
「いや、“俺ら”って。お前と一緒にすんなよ。てかお前がいちばんヤバいから」
「はー!?何処がだよ!」
「墨入ってる時点で色々ヤバいじゃん」
「そりゃ心外だな。この中でいちばんの常識人よ?俺は」
「いちばんあり得ねぇべ!!!」
ゲラゲラと笑う上田たち
その様子と雰囲気に、通行人ですら注目する
「上田のバンドの人たち。楽しいでしょ?」
「‥‥そうだね、楽しそうだね」
リサは、まだ目を丸くしたままだった
「な、アタルくん居る?」
「居るよ、もう中に入ってる」
「マジか!行ってこよー!」
「あ、俺も俺も!」
上田と入れ墨をした男は、バタバタとライヴハウスに入っていった
***
「‥申し遅れました。俺、ユウスケっていいます。“SCAPEGOAT”っていうバンド組んでて、たまにゆっちゃんたちと対バンさせて貰ってます。さっきのうるせぇ入れ墨ヤローがハジ。あの女みたいなのがケイ。宜しくね、リサちゃん」
ツートンヘアーのユウスケが自販機でジュースを買っているケイを指差しながら、礼儀正しく挨拶をした
「‥‥宜しく」
リサは、見た目と相反するユウスケの礼儀正しさに少し感心してしまった
ケイが飲み物を持って、ユイとリサに手渡した
「どうぞ」
「‥‥有難う御座います」
「ありがとケイさん!幾ら?」
「ああ、要らないよ。俺の奢り」
「‥ラッキー!」
人は見掛けに寄らない
上田は見た目も中身もチャラいのだが、“SCAPEGOAT”の面々、特にユウスケとケイは見事にそれを体現しているように見えた
「さっきの、入れ墨してる人がヴォーカルのハジさん。ユウスケさんがベースで、ケイさんがドラム。めっちゃカッコイイんだよ!」
「いやいや、それほどでもー」
「リサちゃん、ユイユイと幼馴染みなんだっけ?ユイユイの“子守り”もタイヘンだね」
「‥‥もう慣れました」
「んっ‥‥ちょっと、ケイさん、“子守り”って何すか!?」
ユイはケイの言葉を聞き、飲んでいたジュースに少し噎せる
「‥‥え?俺そんなこと云った?」
「云った云った!云いましたー!‥‥てか、SCAPEGOATはライヴやらないの?」
「んー、なかなか時間合わなくてね。練習も2週間に1回とかしか出来なくて」
「まぁ、俺ら社会人だからねー。ゆっちゃんとかいっちーみたいにガクセイだったら、もっと時間持てるんだけどなー」
「おいおい、一応俺もまだガクセイよ?」
「あ、そうだっけ」
話を聞く限り、“SCAPEGOAT”の年齢層はバラバラのようだ
ユウスケとケイは、ユイとリサに背を向けて煙草を喫い始めた
ユウスケはハイライト、ケイはブラックストーンを喫っている
ケイの喫うブラックストーンの香りが、ふんわりと漂った
「あー、甘い匂いがする」
ユイはすうっと息を吸った後、少し咳き込んだ
「あ、ごめんね!すぐ喫い終わるから」
ケイは軽く手を仰いで煙を払った
ユウスケもケイと一緒に手を払う
「よくそんな甘い煙草喫えるよなー」
「美味いよ、ブラスト。やっぱこれがいちばんだね」
「それ、ほんとに甘い味するの?」
「するよ。喫ってみる?」
「止めろって。ゆっちゃん、煙草なんて喫わない方が良いよー」
「ってか、俺らがそんなこと云っても全然説得力無いね」
「ふはは、ほんと!」
「確かに。それでも、ブラストなんて喫ったら倒れちゃうよ」
「そうなの?」
「うん。良い匂いするけど実はめちゃめちゃキツいからね」
「ふーん‥‥」
ユイは唇を尖らせた
煙草を吸う、年の近い友人たちは、自分よりも遥かに大人びて見えた
「あ」
ポケットに入っていた携帯が震えているのに気付き取り出すと、拓真からメールが来ていた
『そろそろ中入った方がいいかも』
「もうそろそろだって。中入ろ!」
「うん」
ユイとリサは揃ってライヴハウスの中へと向かい、ユウスケとケイも煙草を灰皿に押し付け、2人の後に続いて入って行った
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