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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/04/20:04

4 1st contact ②

人のいないところ──旧校舎を目指して歩くユイ
ユイのあとをついて歩く菱和
 
二人の身長差に
絆創膏だらけの菱和の顔に
はたまた、そんな菱和の前を意気揚々と歩くユイに
 
すれ違う生徒たちは唖然とし、二人が歩いたあとにはひそひそと話し声が谺する
 
 
 
腫れ物に触るような、周囲の扱い
慣れてはいるが、決して良いものとは云い難い
 
菱和は自分の目に強いコンプレックスを抱いていた
威嚇するつもりもないのに恐れられるくらいなら、と、対人関係に必要性を見出ださず、面倒臭さを感じており、目を隠すように敢えて前髪を伸ばしている
 
 
 
理由もなく誰かを殴ったりする気も、窓ガラスを割る気も更々ねぇ
髪にメッシュ入れてピアスして顔中絆創膏だらけの奴はみんなそう思われるのか?
人のこと大してよくわかりもしねぇのに、見た目だけで妙な憶測立ててんじゃねぇよ
 
───見世物じゃねぇっつんだよ
 
自然と伝わってくる心無い声と視線が、ただただ鬱陶しかった
 
 
 
***
 
 
 
「ここでいっか。えっと‥」
 
「───お前、怖くないの?」
 
向き合い、本題に入ろうとしたユイを遮るように、菱和は疑問をぶつけた
菱和の問いに、ユイは目を丸くして首を傾げた
 
「‥‥?何が?」
 
「‥‥‥‥、俺が学校でどんな噂されてるかくらい、知ってんだろ」
 
「? 何それ?‥あー、不良だから~みたいな?全っ然気にしてないよ、そんなの。仮に不良だとしても、関係ないっしょ!怖くないよ、全然!」
 
ユイはにこにこしながら答えた
その言葉や表情には、微塵も偽りを感じられなかった
菱和にとっては、自分に一切物怖じせず接してくる同級生は不可解でしかない
 
「あ、てか俺の名前知ってる?」
 
良く云えば人懐っこく、悪く云えば
 
───天然‥‥ってか、空気が読めないのか?
 
普通は、“不良”と目されている人間ににこにこと話しかけてきたりはしないだろう
教員に目をつけられる可能性もあり、必要以上に接触することは避ける筈だ
しかし、
 
───本人が「気にしない」ってんだから、いっか
 
そう思い、菱和は質問に答えた
 
「‥石川だろ」
 
クラスメイトだから当たり前のことなのだろうが、菱和が自分の名前を知っていることを嬉しく思ったユイは、より一層にこにこした
 
「うん、そう!石川 唯!みんな“ユイ”って呼ぶから、良かったら菱和も“ユイ”って呼んで!」
 
「‥‥‥“ただし”?」
 
「うん、『唯一』の『唯』で“タダシ”って読むんだ!」
 
「‥‥‥‥、てっきりそのまま“ユイ”って読むんだと思ってた」
 
「実は違うんだー、へへ」
 
ユイはよくわからないドヤ顔をした
 
クラスメイトの殆どが“ユイ”と呼んでいることもあり、「イシカワ ユイ」が本名なのだと確信していた菱和は妙に納得し、腕を組んで壁に寄りかかった
 
「‥‥で、話ってなに」
 
「あー、うん。そうだった。あのさ、菱和ってベース弾けるんだって?」
 
 
 
その事実を知っている人間はごく僅かだ
一緒のクラスになったばかりの奴が何故自分がベースを弾くことを知っているのか───
皆目検討もつかず、菱和は一瞬たじろいだ
 
「‥ああ、一応」
 
「やっぱそうなんだね!もしか、バンドとかやってんの?」
 
 
 
“バンド”
 
実は今一番耳にしたくない単語であり、「バンドやってる」は特に触れられたくない内容だった
 
───でもそんなことこいつには関係ないな
 
そう思い、菱和は答えた
 
「‥‥ああ、一応」
 
「‥そっ‥かー‥‥」
 
心底残念がるユイ
一気にテンションが下がる
 
 
 
───こいつ、何でこんなに表情がコロコロ変わるんだろ
 
感情表現に頗る乏しい菱和は、ユイの喜怒哀楽の激しさに関心した
 
「‥それがどうかした?」
 
「うん‥‥実は俺もバンドやってんだけど、ベースが抜けちゃったんだよね‥‥で、菱和がベースやってるって友達から聞いてさ、もし良かったらうちのバンドでベース弾いて貰いたいなー‥‥と思って」
 
 
 
菱和は目が点になった
ユイの言葉の内容をすぐに飲み込めず、面食らってしまう
ベースがどうのバンドがどうのと、てっきりまだ音楽の話でもしたいのかと思っていたのだが、すっかり意表をつかれ、返答に詰まる
 
「───‥‥‥‥、俺が?」
 
「うん」
 
「‥‥お前のバンドで、ベース?」
 
「うん!‥でも、バンドやってるなら無理だよね‥‥‥‥ごめんね、こんなとこまで連れてきて変な話しちゃって」
 
僅かな時間とはいえ、好きな音楽を共有できたことがとても嬉しかった
菱和と会話を交わしたことで、「一緒にバンドやりたい」「やれたら良いな」と思い始めていた
しかし、それは望み薄だと悟り、ユイは小さく笑い、菱和に詫びる
 
 
 
自分がバンドに誘われるなんて、思ってもみないことだった
菱和にはまだその実感が沸かなかったが、いつもより早く心臓が動き、掌がじんわりと熱くなったのを感じた
 
「‥話聞いてくれてアリガト!教室、戻ろっか!」
 
ユイは教室へと菱和を促し、歩き出そうとした
 
刹那、大きな手が踵を返すユイの肩を捕らえ、その動きを制止する
ユイは振り返り、掴まれた肩と菱和を真ん丸の目で見た
 
何故そんなことをしたのか、自分でもわからなかった
“掴まえておかなければならない”と、反射的に身体が動いていた
無意識にとってしまったその行動に違和感を感じつつも、気分は高揚している
 
手にぐ、と力が入り、ユイは一瞬顔を歪ませる
菱和は咄嗟に手を離した
 
「───‥、悪い」
 
「だ、いじょぶ‥‥。えっ‥‥と‥‥‥」
 
───あれ‥‥ひょっとして俺、ぶたれちゃうかな
 
軽く肩を摩るユイは、昨日拓真が話していた“殴られる可能性”をほんの少し懸念したが、見上げた菱和の顔に戦闘的な感情は無かった
 
菱和自身にとっても予想外だった行動は、ユイにとっては益々予想外
互いにどうしていいのか分からず、二人は固まってしまった
 
暫しの沈黙を終わらせたのは、菱和の低い声だった
 
「───‥‥‥‥少し、時間くれるか」
 
「──────え?」
 
「バンドでベース云々、って話」
 
「それって、どういう‥」
 
「今やってるバンド、抜ける予定でいて。でもすぐには抜けれねぇから‥‥少し時間くれるか」
 
 
 
退屈な居場所や環境から逃れたいという思いは常に抱いていた
周囲の扱いは、自分にとってはただうざったいだけ
更生して学校へ通ってみてもそれは変わらなかった
新しい学年になっても、きっと同じだと諦めていた
しかし、今、自分に臆することなく接する、自分を必要としている人間が目の前に存在している
何もかもが新鮮で、菱和にはそんな人間に対する興味がふつふつと沸き始めていた
 
 
 
「───っマジで!?」
 
感動のあまり前のめりになるユイに、菱和は圧倒された
 
「あ、ああ」
 
「マジかよやったー!!超嬉しい!!有り難う菱和!わかった、返事待ってる!」
 
「‥‥、ん‥」
 
ユイは目を輝かせ、全身で喜びを表した
“哀”から“喜”への猛烈な振り幅に完全に圧倒され、菱和は気の抜けた返事しか出来なかった
 
「じゃあ、戻ろう!」
 
屈託無く菱和に笑い掛けるユイ
そんな顔もまた、菱和にとっては新鮮だった
 
 
 
───随分忙しい奴だな
 
無表情で無口な菱和から見て、ユイの第一印象は“天然で空気の読めない、喜怒哀楽の激しい忙しい奴”で定着したのだった
 
 
 
───やっぱここらが潮時、かな
 
これから片付けなければならない問題への対峙を憂いて溜息を吐くと、菱和は教室へと向かうユイの後を歩き出した

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