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ガレキ

BL・ML小説と漫画を載せているブログです.18歳未満、及びBLに免疫のない方、嫌悪感を抱いている方、意味がわからない方は閲覧をご遠慮くださいますようお願い致します.初めての方及びお品書きは[EXTRA]をご覧ください.

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  • 02/05/01:10

15 沖融たる喧騒

風は夏の香りがし始めている
木々の緑は揺れ、ざわざわと音を立てる
それ以上にざわめき、賑やかな生徒たちの声
ユイたちの高校では、夏休み前に学校祭が行われる
生徒たちは普段とは違う時間割りや雰囲気に浮かれ、校内は学校祭ムード一色になっていた
ユイたちも、御多分に洩れずはしゃいでいた
 
学校祭では有志による発表の場が設けられており、ユイと拓真はバンド枠でステージに上がることに決め、「暇だから」と一緒についてきた上田も加え、屋上で曲目の相談をしていた
勿論、菱和もその輪の中に居る
 
いつも一人だった屋上に、騒がしいクラスメイトが来ることが最早日常化してしまった
菱和はユイや拓真が自分と一緒に居ることにもう違和感や不可解さを覚えることはなく、寧ろ、まるでコントのように繰り広げられる下らないやり取りを静観しては、何となく居心地の良さを感じていた
 
 
 
ユイと拓真と上田は輪になって話を進めている
菱和は柵に寄り掛かり、すっかり見慣れた屋上からの景色をぼんやりと眺めていた
 
「曲はどんなんやんのよ?」
 
「無難なやつが良いかなーなんて。誰でも知ってそうなの」
 
「はぁーん‥‥Beatlesとか?」
 
「Beatlesねー。『Let It Be』とか?‥‥ベタ過ぎるか」
 
「問題はパートだよ。ギタードラムヴォーカルは何とかなるっしょ、でもベースがな‥」
 
「そなんだよね、ベースがね‥‥」
 
3人は、ちらりと菱和を見上げた
 
「菱和も、出ない?ステージ」
 
「‥‥出ない」
 
「え、菱和出ねぇの?てっきりこいつらと出るんだとばっかり‥‥」
 
上田はパックジュースを口にしており、ストローを啜った
 
「‥‥そういうの苦手」
 
「苦手って‥‥結構ライヴやってんじゃんよ?ステージに上がるの慣れてっしょ?」
 
「ガッコと箱じゃあ、話が違ってくるし」
 
「まぁ、それもわからなくもないけど‥‥でも勿体ねぇの。折角上手いのに」
 
口を尖らせながらストローを啜る上田が、つまらなさそうな顔をした
 
「上田、菱和のベース聴いたことあんの?」
 
「あるよ、何回かね。ってか、お前らセッションしたんだろ?正直、ちょっと羨ましい」
 
「まぁねー。ふっふっふ」
 
ユイは腰に手をやり、胸を張ってドヤ顔をした
 
「んじゃま、取り敢えずベース弾ける奴捜すか」
 
「そんなら俺が弾いてやろうか?」
 
「え、マジ?」
 
「うん。どうせ暇だしな。でも簡単な曲にして。俺の本職ギターだし」
 
「つか、上田ベース持ってないじゃん?」
 
「あ?持ってるし!しかもThunderbirdだし!」
 
「サンダーバード!!?すげぇ!!」
 
「‥それ、ユウスケさんの持ってる偽物のベースっしょ?」
 
「そうそう、紛いモンのThunderbird!ちゃーんと『Thunder』じゃなくて『Tender』って書いてっかんな!」
 
「あはは!何それー?」
 
「テンダーバードって、マジでダサ過ぎだな」
 
「ほーんとな!よくあんなの見付けてきたと思うよ、逆にすげぇわ」
 
ゲラゲラと笑うユイと拓真、そして上田
菱和は、いつものように気怠そうな顔をして3人の話を聞いていた
白羽の矢が立ったことも、まるで無かったかのように変わらない表情
ガヤガヤと耳に入ってくる声を聴いているだけで、充分満足だった
そんな菱和をちらりと見て、ユイはもう一度声を掛けた
 
「‥ね、やっぱり出ない?」
 
「出ない」
 
「そっ‥‥かー‥」
 
最初から前向きな返答は期待していなかったのだが、それでもユイは少しがっかりした
 
 
 
***
 
 
 
学校祭なんて、ただのうざったい行事の一つに過ぎなかった
一学年時、菱和は準備の段階で早々にサボることに決め、当日は登校すらしなかった
クラスの誰もが自分を恐れて気にも留めず、この時ばかりは自分の見た目や雰囲気に感謝していた
しかし、今年はそういうわけにもいかない
 
ユイが居るからだ
 
『学校祭は、当日も楽しいが準備の時間はもっと楽しい』
笑顔でそう話すユイに半ば強引に連れられ、若干面倒臭さを感じつつも、菱和は学校祭の準備をする生徒たちに紛れて放課後を過ごした
 
 
 
教室の奥へと片付けられ、雑然と置かれた机や椅子
カナは抱えていた段ボールをドサリと机に置いた
模造紙や画用紙、ポスターカラーなどの絵の具が入っており、にこにこしながら今日の作業内容を伝える
 
「今日はこれでーす!」
 
「何作るの?」
 
「劇の背景に使う‥‥屋根?壁だっけ?」
 
「‥‥模造紙一面茶色に塗って」
 
カナの後ろから、リサが端的に伝えた
 
「ほーい」
 
教室に絵の具の臭いが漂う
クラスメイトたちが各々の作業を進める中、ユイたちも作業に取り掛かる
床一面に敷き詰められた新聞紙の上に、真っ新な模造紙が滑り乗る
学校祭が終わってしまえばただのゴミと化してしまう模造紙の運命など誰も憂いはせず、次々と最初の一筆を入れる
 
「───え」
 
斑なく塗られた絵の具
早く、そして丁寧に、刷毛で手際よく模造紙に絵の具を乗せる菱和に、ユイは驚いた
 
「‥‥何」
 
「‥塗んのめっちゃ早くない?しかも超綺麗だし」
 
「そうか‥?こんなもんだろ」
 
菱和は少し首を傾げた
拓真が筆をくるくると回しながら笑む
 
「またまた菱和の意外な一面はっけーん。“実はかなり器用”。料理も上手いし、手先器用なんだなー」
 
「ほんとだね!工作とかも上手いんじゃない?」
 
「‥‥こんなもんだろ」
 
少しだけ苦笑いすると、菱和は模造紙に視線を落とし引き続き色塗りを始めた

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