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7 屋上にて②
ユイが初めて菱和と会話を交わしてから一週間が過ぎた
結局、ユイは前の週の昼休憩の全てを菱和と一緒に過ごした
拓真も連れて来られ、時には上田も加わった
ユイは相変わらずだが、拓真も少しずつ菱和と会話の回数が増えてきた
そして、教室でも話す機会が増えた
その度にざわつく教室だったが、一週間も経てば他の生徒たちもその光景にすっかり慣れてしまっていた
「菱和!屋上行くんでしょ?俺も行く!」
「‥‥ああ。佐伯は?」
「今日は先約があるんだってさ」
「‥‥ふぅん」
二人は連れだって、昼食をとりに屋上へと向かった
***
「菱和さ、MR.BIGも聴くって云ってたよね?何の曲が好き?」
「‥‥“Take Covor”とか、“Daddy, Brother, Lover, Little Boy”とか 」
「おお!“Take Covor”とかシブいねー!“Daddy,Brother,~”なんか兄ちゃんと弾きまくったなー、サビのユニゾン速過ぎで指攣りそうになってさ!懐かしいー!」
「‥‥‥‥、兄ちゃん?」
「ああ、元々バンドでベース弾いてたの、俺の兄ちゃんなんだ!」
「へぇ‥‥」
先週も、こんな風に音楽の話題が中心だった
ユイがどんなバンドの何の曲が好きかと尋ねれば、菱和はそれに淡々と答える
ユイにとってはとても楽しい時間だったが、菱和にとっては未だにユイが不可解なものだった
わざわざ自分を捜し回ったり、一緒に昼食をとったり、会話をしたり───会話とは云えども、自分は主に質問に答えたり相槌を打っているだけだ
ふと会話が途切れると、菱和は先週からずっと疑問に思っていたことをユイに尋ねた
「───‥‥つーかさ」
「ん、何?」
「‥‥俺と居て、暇じゃない?」
「ん?別に。何で?」
「いや‥‥‥‥俺と喋ってても、あんま楽しくねぇんじゃねぇかなって‥」
「全然そんなこと無いよ?」
「‥‥‥‥そうか‥」
軽く頭を掻く菱和
自分が楽しめているかどうかを気にしていたらしいとわかったユイは、心境をぽつりと打ち明けた
「‥‥俺はね、ただ菱和と仲良くなりたいって思ってるだけだよ。ほんと、それだけ。バンドに入って欲しいから~とか、そういう気持ちも無‥‥くはないけど‥‥‥でもまず、友達として仲良くしたいと思ってるだけだから」
「‥‥、友達‥‥‥」
ユイの言葉は菱和の胸を打った
気付けば、今までずっと耳障りだと感じていた単語を口にするほどだった
「うん!それにさ、仲良くなる為には相手のこと知っといた方が良いじゃん?俺、こうやって喋ってるのほんとに楽しいよ!」
笑顔で話すユイを見て、菱和は今までの自分を回顧した
嘗ては菱和にも、普段から下らない会話をする相手が数人居た
しかしそれははみ出し者たちが集まっていただけに過ぎず、“普通の友人”は未だ皆無に等しい
ましてや、『仲良くなりたい』と云ってくる人間はユイが初めてだった
「‥‥あ、拓真に云われてんだった‥あの、『迷惑だったら遠慮しないで云ってね』?」
「いや、迷惑とかそういうのはねぇけど‥‥」
菱和はユイから顔を逸らし、飲みかけのお茶を一口飲んだ
───そんな単純な理由だったんか
今までの不可解な感情の正体は、未だ嘗て自分には決して向けられることの無かった、無垢な感情ただ一つだった
それにしても
───変な奴だな
そんな感想を抱きつつ、取り敢えず菱和は胸の奥が少しすっきりしたような気がした
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